桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第5章  いざ!出陣!

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「あら」
 淑子は大家さんと、待子を見比べた。
「そんなに迷惑をかけるわけには、いかないわ…」
 正直、この時点では、待子も一旦、家に帰ってから出直しか
ないのかなぁと、思っていた。
まだガラン…とした室内は、まだよそよそしくて、自分の家には
見えなかった。
ろくに物がそろわなかったら、不便であろう…と、申し出てくれた
大家さんの優しさが、心にしみた。
もしも近くに、杏子がいればいいのだろうが…杏子は杏子で、
引っ越し準備で忙しいのだ。
甘えるわけにはいかない…と思った。

 すると突然、何を思ったのか、淑子はクルリと大家さんの方を振り向いて、
「つかぬことを伺いますが」と言う。
母が一体何をかんがえているのか…
待子には全く、予想がつかなかった。
大家さんは、とても人のよさそうな顔をして、
「はい、なんでしょうか?」と聞くと、
「宿泊料って、おいくらでしょう?」
真剣な顔で、淑子が聞く。
「はっ?」
全く予想もしてないことを聞かれて、とても驚いた顔で、
淑子の方を見つめ返した。
すると大家さんは、しばらく考え込んでいたけれど、ニッコリと淑子を見て、
「ご心配でしたら、お布団をお貸ししますけど?」
そう言うと、おもむろに立ち上がり、
「悪いけど…手伝ってもらえるかしら?」と、待子を振り返った。
「あっ」
反射的に、待子は立ち上がると、淑子はまたふいに…
「あの」とまた言うので、大家さんはクスクス笑い、
「そんなことぐらいで、お金を取ったりしませんよ!」
と言うので、まったく見当違いのことを言ってるな、と待子は直感で
わかった。
案の定トシコは「いいえ」と頭を振ると、
「この家…出ますか?」
とても真面目な顔で、聞いた。


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