桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第13章  桜ハウスを守れ!

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  実は荷物が少ないから…と佐伯さんは言い訳のように言うと、
「宅急便で、送ってもらったの」と嬉しそうに言う。
そういえば…身内の人は、誰も来ていないようだ。
「黙って、家を出てきちゃった」
楽しそうに言う佐伯さんに、
大丈夫なの、と心配になる待子だ。
(これって、まさか…家出じゃないよねぇ)
隣でニコニコとする佐伯さんを見て思う。
てっきりオットリとしたお嬢さんだ、と思っていたけれど。
「結構、思い切りがいいのね」
思わずぽそっと言うと、褒められたと思ったのか、
「そうかなぁ」
はにかむように、佐伯さんは笑った。
そうして照れ隠しに、
「どうせまた…引っ越すから、出来るだけ少なめにね」
その言葉を聞いて、そういえば待子の母 淑子も、おんなじことを
言っていたなぁと、待子は思い出す。
もっともそれは…現地調達、という意味だったのだけれど。

 宅配便のお兄さんが運んでくれたのは、よく見るミカン箱2個だった。
たった2個で、あれもこれもは無理だろう…待子はふと思う。
もっともそれは…現地調達という意味なら、そうかもしれないけれど。
服と下着と、わずかばかりの物しか入っていないのでは、と思う。
「でも…荷物がそれだけって…足りる?」
我がことのように、待子は気になる。
なぜならば、同じようにミカン箱2個しかなくて、
しばらく生活用品をそろえるのに、かなり奔走したからだ。
だから佐伯さんは、どうするつもりなんだろう…と気になったのだ。

 すると当の本人は、あっけらかんとしていて、
「いざという時には、取りに行けばいいんだもん」と
ニッコリとする。
いつも通学で愛用している、かなり使い古しの自分のママチャリの
胴体を、軽くなでるようにさわった。
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