桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第13章  桜ハウスを守れ!

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  いつでも元気に動き回っているから、てっきり大家さんは
まだまだ健在なんだろう…と待子は思い込んでいたけれど、
「大丈夫なんですか?」
大家さんを見る目が、若干アヤフヤなものに感じた。
佐伯さんも、疑う目付きで大家さんをじぃっと見るので、
「大したことはないのよ」
初めて困ったように、大家さんは眉をしかめた。
「ここが、ちょっとね」と、胸のあたりを抑える。
 いつもパワフルな大家さんの体が、なぜだか急に小さくて
弱弱しい老人の姿に見えてきた。
思わず息をのむ待子を見て、
「ホント、大丈夫よぉ。
 心配しなくても、大丈夫」
ニコニコしながら、しまいには安心させようと、大家さんはふざけて
その場で、ジャンプしようとしたので、
「いいから、いいから!じっとしていて!」
あわてて待子が駆け寄って、その肩を抑えようとする。
 その時に初めて…いつか本当に、この下宿屋がなくなってしまうかも…
と、急に不安になってきた。

 よっぽど情けない顔をしていたのか…大家さんはじぃっと
待子の顔を見た後に、
「そんなに心配しなくても、大丈夫よ、大丈夫!
 何とか私からも、説得するし」
いつもの笑顔を見せる。
「よいしょ」
再びほうきを握りしめると、
「ホント、お騒がせして、ごめんなさいねぇ。
 そんなにあわてなくてもいいから!
 それに、フジヨシさんにも、よく言っておくからね」
とニコリとした。
だけど…と、待子はすぐさま異変に気付く。
大家さんの目の下が、かなり落ちくぼんでいたことを。
「でも…占いの方は、どうするんですか?」
ふいに佐伯さんが聞くと
「そうねぇ~どうしようかしらねぇ~」
幾分のんびりとした口調で、大家さんは言った。
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