桜ハウスへいらっしゃい！

第１５章 いのち短し 恋せよ乙女？

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「うちのアパートに、引っ越して来たらいいのにぃ。
　ちょっと広めな部屋を、2人でシェアしない？」
　思わず「うん」と言いたくなるような、魅力的な提案を、
杏子がするのだが…
待子はうなづきかける自分を律して、
「でも！男子禁制にしてくれなきゃ、困るわ」と即座に言う。
「だって、なし崩し的に、私が部屋にいられなくなって、
　追い出されるのだけは、ゴメンだわ！」
誘惑にめげず、アッサリと却下するのだ。

　もっとも杏子も…一応母親に、待子をお目付け役にする、という条件で
ひとり暮らしを許されたのだ。
杏子が羽目を外さないよう、しっかりと見ていてね、と言われている。
律儀に守っているわけではないので、
ちっともこの約束…あってもないような物だが。

「ね、オバサン…
　杏子の彼氏のこと、知ってるの？」
　答えは想像がつくけれど、一応聞いてみると
「あ、知ってる、知ってる～
　前に会わせたら、意気投合しちゃって～
　案外ママと馬が合うみたい」
嬉しそうに言う。
相変わらずマイペースな杏子は、あくまでものん気に、
楽しく暮らしているようだ。
それを見ると、ちょっぴりいいなぁ～と、待子は羨ましく
思うのだけれど…
でも、そうはいかない。

「ね、待子もさぁ～彼氏を作って、私とダブルデートしようよぉ」
甘えた口調で、杏子が言うけれど。
「彼氏？ムリ！そんな余裕、ない！」
キッパリと否定する待子だ。
　現在のところ…恋愛には　とんとご無沙汰な待子だ。
今はただ…それどころではないのだ。
大家さんのことも、気を配らないといけないし、
学校のことも。
一番はバイトを、シッカリとしないと…
生活もままならないのだ。
ちょっと寂しい青春だ…と、ふと思うのだった。