桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第15章  いのち短し 恋せよ乙女?

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「えっ?」
 いきなりの杏子の提案に、待子はついていけない。
それでも杏子は、待子の様子などおかまいなしに、
「今度、彼氏に セッティングしてもらうわ!
 待子、可愛いから…すぐに彼氏が出来るわよ」
 心から、いい思い付きだと思っているように、杏子は無邪気な顔をして、
ニコニコしながら言う。
その笑顔は、悔しいほどに、女の自分から見ても、とても可愛い。

「でも…それは無理だと思うよ!
 だって、ワタシ…ちっともモテたこと、ないんだもん!」
そんなことを言いながら、今までのことを思い出す。
学生時代、いつも2人は一緒にいたけれど…
声をかけられるのは、いつも杏子ばかりだった。
何しろ杏子の側にいると、どんなに可愛い子でも、かすんでしまうのだ。
圧倒的な存在感で、誰であっても、まず吸い寄せられるようにして、
彼女の方を見てしまうのだ…

「そんなこと、ないよ!
 私はね、よく聞かれるよ?
 あの子、可愛いね、どこの子って!」
「えっ、うそぉ」
「ホント!」
 笑いながら言う杏子。
杏子は優しい。
普通、それなりに容姿端麗であったら、自分中心な人が多い中で、
この子は違う。
女の自分から見ても、きれいで、優しくて、しかもとても魅力的な人なのだ…
自分はいつも、彼女の引き立て役だ…と、待子は思っていたので、
なんでこうして、杏子はいつも、自分と一緒にいるのだろう…と思うのだ。

「ね、彼氏って、いい人?」
今度こそ、聞いてやろうと思う。
杏子はさして言いよどむことなく、頭を少しかしげると、
「うーん、そうだなぁ~
 顔はイマイチだけど、優しい人かなぁ」
人差し指を顎にあてて、言いながら…うっすらと顔を赤らめる。
あら、と待子はそんな杏子に気付く。
「ちっともかっこよくないし、
 ちっともオシャレでもないし、
 気が利かないし、
 素敵なトコにも、連れてってくれるわけでもないけど…」
照れたような顔の杏子が、いつもよりも輝いて見えた。
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