桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第 16章  転がる石のように…

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  久しぶりに、優しい時間を過ごした…と思う。
そこそこお客さんが、出たり入ったりしたけれど…
サラさんが、珍しくエプロンをつけて、動き回っているのを見て、常連さんは
「おっ」と思わず、サラさんに目を止める。
「マスター、よかったねぇ!
 最愛の奥さんが、戻って来てくれて…」とからかう。
「奥さん…って誰よぉ」
 髪をキュッと結ぶと、エプロンを身に着けたサラさんは、
軽く常連さんをにらむ。
「言っておきますけどね、私にも…選ぶ権利があるからね」とすごんで見せる。
「おー、マスター!振られちゃったねぇ」
おいうちをかけるように、常連さんがケラケラ笑いながら、叫ぶと…
その場にいた、お客さんも、ドォっと笑う。
「おっ、若い愛人もいるんじゃないかぁ」とヤジが飛ぶ。

「愛人?」
ピンとこない待子はサラさんの方を向く。
「誰が愛人だってぇ?」
素っ頓狂な声を上げ、すぐにハッと気づく。
「ね、もしかして…ワタシのこと?」
あわてて聞き返すと、
「セクハラオヤジの相手はしなくてもいい」と、サラさんが待子をかばった。
「セクハラだってさぁ」
「そうなのかぁ?」
ゲラゲラと、常連さんは笑う。
「そうですよ!」
負けじと、サラさんが言い返すと、
「やっぱいいねぇ^
 サラちゃん!戻って来なよぉ」
シナシナとした仕草で、常連さんが、立ち上がる。
「悪いけど…私も本職があるからね!」
申し訳なさそうに、サラさんが、ダスターで机を拭いた。







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