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scene 9 もう1つののシンデレラ物語

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「それは、分かってるつもりです」
 王子は、大きくうなづきます。
魔法使いはそれをじっと見つめると、
「あの靴は…きっと、姫を探す大事な手がかりになってくるはず…
 大切にしなさいね」
そう言うと、魔法使いは眼を大きく見張って、
「いい?」と、少しきつめの声で言います。
「壊したり…決してなくしたり、しないように!」
 腕組みをして、幾分強めに言ったので…
王子は少し驚いた様な顔をして、急いでうなづきます。
それを、魔法使いは確認するようにして見つめ…
あらためたように、口調を変えて、

「いずれ再び、あなたの前に、シンデレラは現れることでしょう。
 その時に…きっとあの靴は、あなたを導く、道しるべと
 なることでしょう…」
一語一句、丁寧にハッキリと言うので、王子は黙ってうなづきました。
「わかりました。
 今度からは、きちんと保管します」
そう言うと、魔法使いは満足そうにうなづきました。
「必ず、その日はやってきます」
妙にはっきりと言い切るので…本当かなぁと思いながらも、
王子はうなづいて
「それはいつになりますか?」
それを聞いた時には、もうすでに、魔法使いの姿は、
影も形もなくなっています…
「やっぱりあれは、ホンモノの魔法使いだったのか…」
王子は妙に感心して、
「とにかく、あの靴を返してもらわねば」とつぶやくと、
城の方へと、戻って行きました。

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