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Scene11  シンデレラは時を越えて

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「ちょっと、あなた何してるの?」
 悲鳴のような声が、メグミさんの口から発せられると、警備員さんが
あわててシューヘイの側に、駆け寄りました。
シューヘイは男に馬乗りになったまま、身動きできないように、
その手を後ろに回して、ねじるようにして、ガチッと抑え込んでいます。
シューヘイはあわてて、
「この男が、子供たちに近付いて来たから‥」
決まり悪そうに説明すると、
「それは本当なんですか?」
警備員さんが、急いで男をあらためて取り押さえました。

「大丈夫?」
様子を見ていたメグミさん。
少し離れたところで、怯えたように突っ立ている信子に
声をかけます。
すると、黙ってうなづきました。
「あいつ、また…姉さんに、近付こうとしたんだ!」
弟のジュンヤが、メグミさんの顔を見上げて、この人なら…
と訴えるように言うと、メグミさんはようやく、彼のことに気が付いて、
「あら、可愛い!信子ちゃんの弟さん?」
ニコニコしながら、聞きました。
その様子を見守りながら…
エラはやはり、自分の計画を、実行すべき日がきたのだろうか…と、
ひそかに感じていました。

 信子の父親は、ほどなく警備員さんの手によって、警察へと
連行されて行きました。
突然の父親の出現で、信子には少なからずショックだったようで…
「なんで?」とつぶやくと、呆然と立ち尽くしました。
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