シンデレラの娘たち

daisysacky

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第1章 ママの秘密

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「どうして、そんなことをしたの?
 これは、ママの…大切な物なのに」
 怒るというよりは、悲しそうな目で、母親は柚に向かって言う。
(ママ…何でそんな目で、ユウを見るの?)
柚は何だか、悲しくなる。
「だって…あんな汚い雑巾が入っていたから…」
柚は何とか、母親にわかってもらおうと、一生懸命言葉を探す。
だけども母親は…今はそんなことに気づかない様子で、
「これはね…ママのたった1つの、宝物なのよ」
真っ赤な瞳を向けて、さらにそう言う。
(なんで、そんな風に言うの?)
父親も、さすがに母親の様子がおかしい、と気付いたのか
「一体、どうしたんだ?」
心配そうに、妻を見詰めた。

 母親はこの時初めて、彼が自分の側にいることに気づいたのか、
「だって、ユウが…壊したのよ」
初めて見たこともないような、激しい口調で、夫に訴える。
「えっ?」
 何を言っているの、ママ?
柚は、小さな悲鳴のような声を上げる。
 壊したなんて、そんな…
 ただ、履いただけなのに?
言葉を失い、うなだれる柚に向かって、母親は靴のカカトの部分を
指し示す。
「これはね、オモチャじゃないの。
 ガラスなの。
 ほら、ここ!
 ポッキリ折れてるでしょ」
ガラスの靴のカカトの部分を、指でさわってみせた。
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