シンデレラの娘たち

daisysacky

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第5章 すべては夢になりにけり

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「ふぅーん」
 やっぱり、よくわからないなぁ~
柚はしきりと、頭をひねっている。
「ママには、返さなくてもいいの?
 だって、あの靴…ママの大切な物なのに?」
 そもそも柚が家を飛び出したキッカケは、あの靴を壊したからだ。
(あれ?あの時は、カカトしか持っていなかったのに?)
どういうことなんだろう?
あらためて、柚は頭をさらにひねる。
「靴を直して、ママに返さないといけないのに…」
途方に暮れて、ジュンヤを見上げる。

 ジュンヤには、柚の事情はよくわからない。
けれど、今、柚が困っている、ということはわかる。
魔法使いの顏をじぃっと見ると、
「ねぇ、ユウちゃんに、返してあげてよ」
ぎゅぅっと、柚の手を握りしめて、そう迫る。
「あら、それは困ったわねぇ」
そういう割りには、さほど困っているようには、見受けられない。
 魔法使いは、クスクス笑いながら、他人事のように言う。
「あの靴はねぇ~たぶん、さっきの家にあるはずだわ」
ジュンヤの目を見詰めながら、そう言う。
「さぁ、どうする?」
本当ならば、すぐにでも元の世界に戻らないといけないのだが…
(ここは、どこだ?
 それなら、さっきの場所に、戻してよ!)
ジュンヤは、まなざしに力を込める。
「それはわかるよ!でも!」
そんなこと言われたって、どうしたらいいのか、ボクにもよく
わからないよぉ…
魔法使いは、じぃっとジュンヤを見つめる。

(試されているんだ)
 ふいに、その考えが、ジュンヤの頭にポワンと浮かぶ。
(一体、なんだ?)
自分たちに、何をさせよう…としているんだ?
そもそもここへ…自分たちは、何をしに、来たのだろう?
それはまだ、謎のままだ。
 魔法使いは、柚とジュンヤを見ると
「靴がないと、帰るのが難しくなるわねぇ」
唄うように、そう言った。
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