ダンナ様はエスパー？

第1章 甘い生活？

１７

「それで、その人とどうなったの？」
　前のめりになって、ニヤニャしながら、アリサは聞く。
（そんなに人の恋愛話…聞いていて、楽しいの？）
彼女の好奇心でパンパンな顔を見て、複雑な気持になる。
自分だったら…人の話なんて、話半分でしか聞かないのに。
「もちろん、気になるわ」
アリサはニンマリと笑った。
「それが…私の旦那様よ」と言うと、
「えぇ、そうなの？」
大げさなくらい、驚いてみせた。

（そういえば…あの時から、あの人って、一風変わっていたのよね）
　ふいに灯里は思い出す。
確かに久志さんって、昔から不思議な人だった、そう思うのだ。
（あっ、そういえば…今朝、何と言ってたっけ？）
灯里は懸命に、思い出そうとする。
「確か…アリサに運命的な出会いか、仕事のチャンスがあるって」
　わざとポンと軽い口調で言うと
「えっ、なに？」
言われた本人は、至極真面目な顔つきで聞いてみる。
「なに、それって…占いか何か？」
　アリサは興奮している。
だけど灯里は、複雑な心境だ。
彼のスゴイところは、声を大にして言いたいけれど、
こんな風に騒がれるのは、違う…と思うのだ。
　彼の素敵なところは、そんなことだけに、使っていては、
いけないのだ。
本当言うと、彼の素晴らしいところは、自分で楽しみを見つけたい、
と思っているところだ。
さすがに灯里には、まだ見つからないのだけれど。
全く記憶に残っていないけれど、他にも何か、ありそうだ。

「ふぅーん」
そんな灯里の顔を見て、アリサはニヤリと笑う。
「確かにあなたのダンナさんは…
　普通のオジサンではなさそうね」
キラリと目を光らせた。