ダンナ様はエスパー？

第1章 甘い生活？

２１

「ね、あなたたちのなれそめって…そもそもなんなの？」
　いきなりアリサが聞く。
ぼぅっと考え事をしていた灯里は
「なに？」と聞き返す。
「だから…どこで知り合ったの？
　そもそも一回りも歳が違うのなら…
　共通点って、なさそうじゃない！」
気が向いたらしく、ニコニコしながら聞く。
人のコイバナって、やはり盛り上がるものなのだろうか？
「だから…傘よ！」
「かさ？」
「そう、傘！」
あの日、いきなり強引に押し付けてきた、あの傘が…
そもそものなれそめなのだ。
「だけど…いきなり見知らぬオジサンが、カサを持っていけ、なんて
　言うのかしら？」
疑い深いまなざしを向けて、アリサが言う。
　そう言われても…そもそも期待されるような、ロマンチックな出来事とか、
　エピソードが落ちている…などないはず。
困ったなぁ～と灯里は、大きくため息をついた。
「ない！そんな
期待されるようなものは、何1つ…」

　だけど、何をそんなに、期待しているの？
自分の性格を…よく知っているくせにぃ～
と灯里は、アリサの様子をうかがう。
　思えば自分たちは…若い頃からずっと、こんな会話をしていたような、
気がする…
「え～っ、あっという間に結婚したから、何かものすごい恋愛ネタが
　あるもんじゃあないの？」
え～っ、と不満そうに、口をとがらせる。
「期待されても、無理なものはムリ！
　特に何も約束もしていない。
　映画を見たり、ご飯を食べたり…
　これといって、すごいことは、何にもないわよ」
そう言われると、とても残念な気がした。