ダンナ様はエスパー？

第3章 彼は無敵なダンナ様！

９

　　こうなったら、うさん臭い隣人であろうと、助言がもらえるのであれば、
それでもいい…と灯里はヤケクソ気味にそう思う。
こんな時でなければ…他人の言うことを、うのみにしたりはしない…
だが、藁にもすがりたい気持ちの彼女は、つい信じてしまいそうになる。
　灯里の様子に、気をよくしたのか、隣の女はチラチラとこちらを
うかがっている。
だけどさすがに、これ以上自分の家のことを、詮索されるのはかなわない…
と、彼女はペコリと頭を下げると、エレベーターの方へと向かう。
　その姿を見て取ると
「あなた…」
またもお隣さんが、灯里に向かって、声をかける。
なに？と思い、振り返ると
「これだけは、言っておくわ！
　絶対に、家の鍵を渡したらダメよ！
　ねだると思うけど、スペアキーはない、と答えなさいね！」
やけに強い口調でそう言う。

（それにしても、この人って何者？
　ただの親切な人じゃあないわね？）
だけどそれは…何となく彼女には、わかっているような気がする…
これからも、何かと首を突っ込んできそうだけれど…
でも、ハッキリとわかることはある。
それは、お姑さんとこの人は、おそらく相性があまりよくなさそうだ…
ということだ。
（ということは）
灯里は顔をしかめる。
（この2人は、極力顔を突き合わせないように、気をつけないと
　いけないな）
彼女は覚えておこう、と思った。

　
　そんなギコチない関係が、数日続き、いい加減お互いの性格に
慣れてきた頃…ついに、その日がやって来た。
　相変わらず、灯里のすることの１つ１つが、気にかかるようで、
イチイチ注意の声が、かかってきたけれど、
適当に聞き流し、もうどうしようもない、と
彼女自身も腹をくくって、おとなしく聞くフリをするのも、
上手になってきた。
前の久志との暮らしに、早く戻れないのか？
そう残念に思っていた頃…
いきなりインターフォンが、お姑さんの言葉を奪った。