107 / 462
第4章 まさかの奇跡…
26
しおりを挟む
もう、がんばらなくていい…
その言葉は、灯里の心に深くしみた。
「いいの?」
まるで幼い子供のような目をして、久志を下から見上げる。
「いいよ」
優しくうなづく。
彼女の髪をすくように、優しく撫でると
「だから…君のお母さんに、連絡するからね」
続けて言うと、
「えっ」
急に灯里は、ガバリと身体を起こし、
「母さんには言わないで」
悲鳴のような声でさえぎる。
「そういうわけには、いかないだろう」
なんでだ、と久志は戸惑う。
「お願い!」
なぜだか、妙にこだわっているようだ。
「でも…現に倒れたわけだし…」
そう言いかけて、自分の同僚の話を思い出す。
やはり…気がねなのだろうか…
「ところで、母さんは?」
そういえば…姿をまだ、見かけない。
黙っていなくなったのだろうか?
だが、灯里は口をつぐんだまま、何も言わない。
おかしい…
久志は家の中を探した。
そんなに大きな家ではない。
探すと言っても、トイレと寝室とお風呂場くらいだ。
まさか、お隣さんと話し込んでいるのか?
それは、考えにくい…
そもそも救急車を呼んだのは、母親だった。
当の本人が、病人を置いて、いなくなるだろうか?
「ね、どうしたの?」
灯里を責めないように、気をつけて、聞いてみる。
すると彼女は頭を振るだけで、何も語ろうとはしない。
やっぱり、何かあったのだろうか?
だが本人に、ムリヤリ聞き出すのも、酷というものだ。
しかたない。
気になるけれど、これ以上負担になることは言えない…
「とにかく、電話」
まだスーツのままだったことに気付き、ポケットから携帯を取り出す。
「もしもし」と言いながら、さり気なくその場を離れた。
その言葉は、灯里の心に深くしみた。
「いいの?」
まるで幼い子供のような目をして、久志を下から見上げる。
「いいよ」
優しくうなづく。
彼女の髪をすくように、優しく撫でると
「だから…君のお母さんに、連絡するからね」
続けて言うと、
「えっ」
急に灯里は、ガバリと身体を起こし、
「母さんには言わないで」
悲鳴のような声でさえぎる。
「そういうわけには、いかないだろう」
なんでだ、と久志は戸惑う。
「お願い!」
なぜだか、妙にこだわっているようだ。
「でも…現に倒れたわけだし…」
そう言いかけて、自分の同僚の話を思い出す。
やはり…気がねなのだろうか…
「ところで、母さんは?」
そういえば…姿をまだ、見かけない。
黙っていなくなったのだろうか?
だが、灯里は口をつぐんだまま、何も言わない。
おかしい…
久志は家の中を探した。
そんなに大きな家ではない。
探すと言っても、トイレと寝室とお風呂場くらいだ。
まさか、お隣さんと話し込んでいるのか?
それは、考えにくい…
そもそも救急車を呼んだのは、母親だった。
当の本人が、病人を置いて、いなくなるだろうか?
「ね、どうしたの?」
灯里を責めないように、気をつけて、聞いてみる。
すると彼女は頭を振るだけで、何も語ろうとはしない。
やっぱり、何かあったのだろうか?
だが本人に、ムリヤリ聞き出すのも、酷というものだ。
しかたない。
気になるけれど、これ以上負担になることは言えない…
「とにかく、電話」
まだスーツのままだったことに気付き、ポケットから携帯を取り出す。
「もしもし」と言いながら、さり気なくその場を離れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい
葉方萌生
ライト文芸
淡路島で暮らす28歳の城島朝香は、友人からの情報で元恋人で俳優の天ヶ瀬翔が島に戻ってきたことを知る。
絶妙にすれ違いながら、再び近づいていく二人だったが、翔はとある秘密を抱えていた。
過去の後悔を拭いたい。
誰しもが抱える悩みにそっと寄り添える恋愛ファンタジーです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる