ダンナ様はエスパー？

第4章 まさかの奇跡…

３１

「そんなに心配しなくても、いいのになぁ～」
　灯里はため息をつく。
「大丈夫よぉ。そんなに心配しなくても」
そうつぶやくと…お腹をそぉっと撫でて、ソロソロと動く。
（もしかしたら、久志さん…
　おかあさんから、何か聞いたのかもしれないわ…）
そう思う。

　今日はとてもよく晴れていて、せめて青空の下、洗濯物くらいは
干してもいいよね？
そう考えると、呪文のように
「洗濯は、洗濯機がしてくれるから、いいよね？
　こんなに、いい天気なんだもの」
言い訳を言いながら、えっちらおっちら洗濯物をかき集めて、
洗濯機に放り込む。
だけど…さすがに昨日の今日だ。
しっかりと寝たとはいえ、自分でも少し怖い…

　それでも空を見上げると、とてもすがすがしい気持ちになる。
「ホント、洗濯日和だわ！」
何だかウキウキした気分になり、トコトコと歩き回っていると
ピンポーン
インターフォンが鳴り響く。
「誰かしら？」
まさか、お義母さん？
そう思いながらも、
「はぁい」と応答すると
「ヤッホー、灯里！」
インターフォンの小さな画面一杯に、親友のアリサの顔が映っていた。


「アカリ…大丈夫？」
　オートロックを解除すると、開口一番おそるおそるアリサが、
灯里の顔をのぞき見た。
「アリサ、なんで？
　仕事じゃあないの？」
昨日倒れたことは、まだ家族以外には、話していない…
だから知らないはずなのに、その心配そうな顔は、
どう見ても、知っているとしか思えなかった。
それに…タイミングが良すぎる！
だれ？
まさか、久志さん？
そう疑っていると、灯里の脇をすり抜けて、ズカズカと入って来る。
勝手知ったる、他人の家…
アリサは手早く、灯里がぶら下げているエプロンを身に着けると
「いいから、座ってて！
　あなた…また、無理したんでしょ！」
そう言うと、灯里から洗濯カゴを奪った。