ダンナ様はエスパー?

daisysacky

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第5章  誰のものでもない私…

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「ヒサシ…さん、だっけ?
 あの人がご丁寧に、わざわざ電話してきてくれたのよ!
 灯里さんに、子供が出来ました、って!」
 まさかいきなり、あの人から電話がくるなんて、思ってもみなかったわよ。
母親が笑う。
その割には、とても嬉しそうだ。
(この人も…孫の顔が、見たかったのか!)
 自分の時は厳しくて、習い事だ、塾だって、預けっぱなしで、
放っていたくせに…
こんな風に、普通の母親みたいなこと、今さら言うんだ…
意外な気持で、彼女のその口元をまじまじ見ている。

「でも…いいの?」
思わず灯里が聞く。
「何よ」
何が言いたいのか、訳が分からない、という顔をして、
母親はこちらを見る。
「私が…あの人の子供を産んでも?」
灯里はまだ、引っ掛かっていた。
(だって、一回り上の彼と結婚する、と言った時…反対したくせに!)
何だか複雑な気分だ。
あんなに反対した相手なのに、孫はいいんだ…と。
(それに)と思う。
(私の事、ずーっと放ったらかしだったくせに、孫が出来たら
 すぐに飛んでくるんだ!)

「いいも、何もないでしょ?
 だって、灯里の子供なんだもの」
おかしな子ねぇ~と母親は、今までのことなどすっかり
忘れたような顔をして、そう言った。
「昔っから、変わったことを言う子だったもんねぇ~
 しかも神経質だったし、ホント、手がかかったわ!」
信じられない…と、灯里の肩に手を触れる。
よく見ると、しわしわの、しみだらけの手だ。
(変わったなぁ~)
今日は、驚かされてばかりだ。
こんな母親であっても、子供の頃は、大好きだった。
いつもこの人に振り向いて欲しかった、認めて欲しかったのだ…
何だかそれも、信じられない。
 あの頃は、共働きで、いつも忙しくしていた母親。
完璧主義で、理想を持っていて、人に虚像を見つけられるのを、
何よりも嫌っていた。
おそらく祖父母が、そういうタイプの人だったのだろうか。
その理想から外れるのを、彼女はとても恐れていたようだ…
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