ダンナ様はエスパー?

daisysacky

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第8章  私を探さないで…

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「あっ、もしもし」
 出来れば、電話に出ないで…
半分そう思っていたけれど、案外アッサリと、相手は電話に出た。
 アリサは当てが外れて、すっかり慌てる。
かけたのは、久志の前で、デモンストレーションみたいなものだったからだ。
まさか『電話に出なくても、よかったのに』などとは、口が裂けても言えるわけがなく…
せめて留守番電話に切り替わってくれるだろう…と思っていたのに、
まさかスンナリと、目指す相手にさほど鳴らさぬうちに繋がった。

「はい、どちらさま?」
 電話の相手が、ワントーン高い声で出たので、本人なのか、と面食らう。
「あの…ちょっとお尋ねしたいのですけど…」と、言葉をさがしつつ、
灯里がそちらに来ていないか…と、いきなりそのままズバリを口にした。
電話の主も「えっ?」とけげんな声になる。
「あの…失礼ですが、どちら様?」
戸惑いの隠せない声が、耳に響いて来た。
「あっ、あの…」
いつもは強気なアリサも、何も考えずにかけたので、すっかり舞い上がってしまう。
「あの、同じ中学だった、山野灯里の友達の…」と言いかけたところで、
電話の相手が、はっと息をのむ音がかすかに聞こえた。
「アカリ?
 アカリって、あのアカリ?」
相手の声が、さらに上ずって聞こえた。

 もしかして…彼女は何も知らないの?
 これは…先走ったかな?
 まいったなぁ~
どうしようかと、アリサはあわてた。
もっとも…口裏合わせて、知らないフリをしている可能性もあるのだが…
灯里は、ここに来ていないかもしれない…
そう感じていた。
 
 電話の相手は、アリサもよく知っている人だ。
同じクラスになったことはないけれど、たびたび会話もかわしたことのある
相手だ。
まさか男の子のところには、行っていないだろう…
そう思っていたのだが。
だがどうやら、この彼女はまだ、アリサの声には気が付いていないようだ。
 すみません、勘違いでした、と切るべきか…
 それとも、自分のことを明かすか、と迷う。
(どうしよう…私の事、忘れているかなぁ?)
無言で考えていると、いきなり「あっ」と声がして
「あなたって、もしかして…アリサ?
 アリサなんでしょ?」
迷っている間に、いきなり気付かれてしまった。
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