ダンナ様はエスパー？

第8章 私を探さないで…

５４

「大丈夫だよ」
　久志は妙に、余裕の表情を浮かべる。
（どうして　そんなに、平気な顔をしているの？）
　アリサは何となく、不満に感じる。
「大丈夫、心配はいりません」
なぜか確信を持った目で、久志はキッパリと言う。
「なんで…ですか？」
不思議に思って、そう聞くと、久志は穏やかな顔で微笑むと
「あの人は…あぁ見えて、強運の持ち主なんですよ」
なぜだか、答えにならないことを言う。

「はっ？」
　灯里が、強運の持ち主？
　何よ、それ…
　何か根拠でも、あるんじゃないの？
アリサはいささか、落胆した。
けれども久志は、とても大真面目な顔をして、こちらを見ている。
「だって…あなたというお友達もいるし、
　灯里は、人を引き付ける力があるんです」
あなたも、知ってるでしょ？
同意を求めるように、キッパリと言うと、久志はアリサにまっすぐな瞳を向けた。
「えっ？」
　キョトンとした顔で、アリサは彼を見ると、すぐにクシャリと表情を崩し、
「なんだぁ～おのろけですかぁ？」
プッと吹き出した。
「何かすごい情報でも、あるのかと思った！」
からかうように、彼を見る。
それだけ、彼女のことを真剣に思っている、ということなのか？
（たとえば…勘が鋭かったり、予想が的中したり…
　占いとか予言めいたものとか、得意なんじゃないの？）
ふと…アリサがそう思う。
だから時々、ビックリするようなことを、言い当ててしまうのだろうか…
（そう言えば…私、この人のことを、何も知らない…）
あらためて、アリサはそう感じた。