ダンナ様はエスパー?

daisysacky

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第10章  捨てる神あれば拾う神あり

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 いつもは、1人1人の患者さんに、気さくに声をかけてくれる
ベテランの看護師さんだ。
「あら、そうなんですか?」
思わず顔を見合わせる。
「似ていても、おかしくはないですよね」
ふふっと笑って、
「いっそのこと、…養女にしちゃおうかしら」
陶子さんは冗談まじりにそう言った。

「陶子さん…子供…は?」
たしか、いない…と聞いたような?
おそらくは、聞いてはいけないことが、山盛りありそうだ。
 だがすぐに…余計なことを、聞いたかなぁ…と思い直し
「ごめんなさい」と謝る。 
 陶子さんは、へっ?という顔をして、
「なんで?全然平気よ!」と言うと、
「いないわ」
さしてあわてる風もなく、淡々とそう答える。
「変でしょ?
 世の中に…これだけ母親がいる、というのに…
 私は母親にも、なれなかったのよ」
静かにそう告げる。
「ごめんなさい」
再び頭を下げる。
「いいの、いいの!
 私はちっとも、不幸ではないし、気にしてはいないのよ。
 それよりも、なんで…そんなに謝るの?」
ケロッとした顔で、陶子さんが言う。



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