ダンナ様はエスパー?

daisysacky

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第10章  捨てる神あれば拾う神あり

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 初めこそは、お客さんのような感じだったけれど、じきに灯里も
ここの暮らしに慣れて来た。
陶子さんの家は…町中から少し離れた郊外で、田んぼが周りにあるような
のどかな場所だった。
そこでゆっくりと散歩をしたり、時に陶子さんと車で買い物に行くような、
そんな田舎の暮らしを満喫していた。

「あら、娘さん?」
 時に近所の人に、話掛けられる。
「いえ、親戚のお嬢さんよ」
ニコニコしながら、決まって彼女が答えるのだ。
「そう?ずいぶんよく似ているけどねぇ」
そう言われるたびに、灯里は洗面所の鏡で、自分の顔を穴があくほど見つめる。
これがもし、本当だったら、どんなにいいか…
そう思うのだ。
母さんの妹だから、似ていてもおかしくはないのか…
何だか、不思議な気がするのだ。

 予定日が近付くと、あらためてこちらの産婦人科に変わって来た。
陶子さんが、その方がいい、と言うからだ。
母さんからは、怖いくらいに…何も言ってはこない。
きっと怒っているんだ…
灯里はそう思うけれど、
「大丈夫、私が誘ったのだから、責任は持つわ」
そう言い切ってくれた。
「いえ、それは…ボクが」
久志がそう言わなかったら、灯里は家に帰っていたかもしれない。
「お姑さんの方は、どう?」
やはり気になるのか、陶子さんが聞くけれど
「喜んでいました」
久志がそう言うので…一体何と言ったのだろう…
灯里は少し気になっていた。

「あなたのダンナさんって…何だか不思議な人ね」
時折陶子さんが、まるで内緒話を打ち明けるように、灯里に
こそっと言う。
「何でですか?」
奇妙に思ってそう言うと
「何だかね…説得力がある、と言うか…
 久志さんの言われると、まかせて大丈夫、と言うような
 安心感があるのよね」
そう言われたら、そうかも…
灯里も思わずうなづいた。
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