ダンナ様はエスパー？

第12章 3人のばぁば！

１４

「無理をしないでよ、もう」
「陶子さん…」
　肩に陶子さんの手のぬくもりを感じて、灯里は素直に
「ごめんなさい…」
彼女に頭を下げた。
「いいの、いいのよ。
　あの人も、大人げないからねぇ」
　自分の娘相手に…と、陶子さんが、ため息をつくように言うと…
「部屋に戻る？
　それとも少し、ブラブラする？」
灯里の顔をのぞき込む。
「母さん…は？」
まさか、部屋に置いてきたのか？
灯里はおそるおそる聞く。
「あぁ、あの人は、灯里ちゃんが出て行ったあと、すぐに
　忙しいからって、帰ったわよ」
陶子さんの言葉に…心底ホッとすると共に、
（あぁ、やっぱりそうか）
落胆している自分がいる。
ガクガクと膝が笑うのに気が付くと、陶子さんは灯里の背に手を添えて
「あそこに座りましょ」
ラウンジのイスを指差した。

　平日のせいか、面会客はあまり多くはない。
おかげで、人目を気にすることなく、ほとんど貸し切り状態で、
話が出来る。
「私…陶子さんの所に、行きたいな」
子供のようにつぶやく、
「あらあら～
　それは光栄だわ」
本気にしてくれたのかどうかは、怪しいけれど…
それでも陶子さんは、嬉しそうに微笑む。
「とりあえず、ジュースでも飲む？」
目の前にある、自動販売機に歩み寄った。


「ありがとうございます」
　陶子さんにうながされ、自動販売機の側のベンチに、腰かける。
「何がいい？」
　カチャンカチャン
コインの落ちる音がして、陶子さんがこちらを向いているのに、
気が付いた。