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第1章
17話 必死の頼み
しおりを挟む福岡に着くとテグは早速お婆さんの家に行った。
チャイムを鳴らすと部屋の中からお婆さんが出てきた。
「あ、あなたは⁈」
「ど…どうも、初めまして」
「どうしてここに⁈」
「ちょっと聞きたい事があって。ここの住所はウクさんに聞きました」
お婆さんはテグを家の中に通してお茶を出した。
「ありがとうございます」
「まさか、テグさんが家に来るなんて驚きましたよ」
「急にすみません」
「いいえ。いつもウクがお世話になっています」
「こちらこそ」
「聞きたい事って、マリさんの事?」
「あっ、はい」
「マリさんから本当の事を聞いたの?」
「聞きました」
「テグさんはそれを聞いて受け入れたの?」
「…いいえ」
「そうかい」
「あの…マリとはどういう関係なんですか?」
「どういうって…赤の他人だよ」
「じゃあ、どうしてマリの願いを?」
「あの子の行動に心を打たれたんですよ」
「え?」
「あれはクリスマスイブの日だったよ。買い物袋を持った私のとこへマリさんが来て、荷物を抱えてくれて…一緒にバスに乗って家まで運んでくれたんだよ。マリさんの家とは逆方向なのに」
「そうだったんですか…」
「あんなに心優しい子はなかなか居ないですよ」
「…あの、明日で本当に俺の記憶からマリは消えるんですか?」
「消えますよ」
「今から受け入れても…ですか?」
「一度受け入れなかったら、もうダメですよ」
「え…何とかなりませんか?」
「受け入れなかった事、後悔したんですか?」
「後から気付いたんです。マリとずっと一緒に居たいし、忘れたくない…」
「…もう遅いですよ。それにマリさんが今どこに居るかも知らないのに。テグさんはマリさんの住所知ってるんですか?」
「…知らないです」
「マリさんは、今こっちに居るんでしょ?」
「はい」
「最後に会えたらいいけど、もう日にちがねぇ…明日の夕方には忘れてしまうから諦めなさい」
「…お婆さん、お願いします‼︎何とかして下さい‼︎お願いします!」
テグは必死で頼んだ。
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