90日間の恋人【完結】

真凛 桃

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最終章

26話 記憶

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テグはその日の打ち上げに行かず、家で来月の仕事のスケジュールを見ながら、河辺で会った女性の事を考えていた。


俺…何であの時、とっさにあの子の所に行ったんだろ…
初めて会う感じじゃなかったのは何で…?
それにあの時俺、心臓がバクバクしてた…
どうしてだ?
あ~、頭が混乱してきた…


テグは外の空気を吸おうと車に乗り、公園に向かった。


マリとの思い出の公園だ。


何でこんなに遠くの公園まで来てしまったんだ?


テグはしばらく公園を歩き、無意識に大きなベンチに座った。


寒っ…
コート着てくればよかったな…


うわ、星がきれいだな…


テグはネックレスに通している指輪を触りながら、しばらく星を眺めていた。
次第にテグの表情が険しくなっている。
色んな事が途切れ途切れに甦ってきたのだ。

また頭が痛くなったテグは、頭を抱えながら家へ帰った。


部屋で横になっていると、ウクが来た。


「お前、打ち上げに来ないで家に居たのかよ」

「ごめん…楽しかった?」

「まぁな。ただ主演のお前が来てないから、監督ご立腹だったぞ」

「だよな。監督に謝っておくよ」

「テグ…体調悪いのか?」

「…ちょっと頭痛がするんだ」

「大丈夫かよ。ずっと外に居たから風邪ひいたんじゃないか?」

「風邪じゃないと思う…何か引っかかって、考えてたら頭が痛くなって…」

「…何かって?」

「ウク…俺、何かおかしいんだ。何か大事なものを忘れているような…」

「え…」


もしかして、マリさんのこと思い出そうとしてるのか…
ま、まさか…そんな事あるはずない…


「今日だって撮影終わって、気づいたら知らない女性に声かけてた。しかも日本人に」

「…嘘だろ」


もしかして、マリさん来てたのか⁈


「で…?何か話したのかよ?」

「少しだけ。何か懐かしい感じがしたな。結局知り合いでも何でもなかったみたいだけど」

「テ、テグ…」

「ん?」

「いいや。何でもない」

「何だよ」


テグはネックレスの指輪をずっと触っていた。


「そ、それ…大事そうにいつも付けてるけど…」

「これでしょ?よく分からないけど…何かこれ付けてると安心するんだ」

「多分、その指輪はお前の大事な物だよ」

「うん…」

「テグ…」

「何?」

「有り得ない事だけど、もしかしたらお前…記憶と戦ってるかも知れない」

「え?どういう事?」

「実は…1年前、お前に彼女いたんだ…」

「え?1年前?彼女なんていなかったけど?」

「いたんだよ!」

「だから、いないって」

「テグは彼女のこと忘れてるんだよ!」

「忘れてる?どういう事だよ」

「お前の記憶がないから…」

「…え?じ、冗談だろ」

「詳しくは言えないけど。お前、思い出すかも知れない。その指輪も多分マリさんのだろう…今日会った人もマリさんのはず」

「マ、マリさん?」

「そう。お前が本気で愛していたマリさん」










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