真実【完結】

真凛 桃

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5話 チスンからの誘い

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仕事が終わると、久美子は店長を居酒屋に誘い、全てを打ち明けた。

「ちょっと!それすごくない⁈そんな出会い方って…羨まし過ぎるー!」

「店長のこと、信用してるから話したんですからね。絶対誰にも言わないで下さいね」

「もちろん言わないよ!でも、あのスジンと2度も飲みに行ったって…しかもホンユとも行ったんでしょ?2人ともクミちゃんに気があるんじゃない⁈」

「えー、それはないでしょ、私なんか…」

「わからないよ~。いやーでも、凄すぎ‼︎ねぇ…今度、私もご一緒したい‼︎」

「そ、そうですね…」

2時間ほど飲み、2人は店を出た。

何故か、チスンと会ったことは話さなかった。



それから3日後の夜。久美子が自宅でくつろいでいると携帯が鳴った。
知らない番号からだった。

(誰からだろ…?)

「もしもし?」

「あ、もしもし…あの…チスンです」

(え…チスンから…なの⁈)

非通知ではなく、番号を通知して電話をかけてきている。

「もしもし?」

「あ、すみません…」

「今、大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です!」

「ロケ地に行く約束のことなんですけど」

「はっ、はい!」

「あの場所、1ヶ月ほど遅い時間までイベントをやってるらしくて…人が多いはずだから、それまでは行けそうにありません」

「…1ヶ月…ですか…わかりました」

「もし…もしよかったら、来週だったら休みを合わせられそうなので、食事でも行きませんか?」

「え⁈いいんですか⁈」

「久美子さんさえよければ」

「行きます‼︎」

「よかった。来週はいつが休みですか?」

「美容室なので、月曜が休みです」

「美容師さんなんですね!わかりました。では月曜日に行きましょう」

「はい!!」

「どうせなら、昼間からはどうですか?」

「え?私は構いませんけど、明るい時間帯でもチスンさんは大丈夫なんですか?」

「街中じゃなければ…ちょっと田舎の外れたとこでもいいですか?」

「はい!私はどこでもいいです‼︎」

(チスンと一緒にいられるなら…♡)

「じゃあ迎えに行きますので、住所…あ、いや、近くまで行きますから。番地までは教えなくていいのでメール送っておいて下さい」

「わかりました」

チスンが気を遣って、番地まで聞かないのは分かったけど、その日のうちに番地まで入れた住所をメールで送った。


この日は嬉しくて、久美子はなかなか寝つけなかった。


そしていよいよ月曜日。
午前10時過ぎ頃、車が停まる音がしたので外に出ると、チスンが迎えに来ていた。

チスンは車から降りると、助手席のドアを開けてくれた。

「あっ、後ろに乗らなくていいんですか?」

「え?隣にどうぞ」

「あっ、はい」

車に乗るといい匂いがした。
チスンの車に乗れて、幸せいっぱいの久美子だった。

1時間くらい車で走った辺りで車を降り、街を歩いた。

「ソウルにも、こういう場所があるんですね」

「こういうとこ、嫌いですか?」

「いいえ、好きです!」

「…よかった」

「あの…マスクもしないで、こんな堂々と歩いてて大丈夫なんですか?」

「ここの地区なら大丈夫。前にも来たことあるんですけど、全然バレなかった」

「えー、そうなんですか…」

「この先にその時行った店があるんですけど、すごく美味しかったから…そこに行きましょう」

「はい♡」

店に着き、注文した料理が運ばれた。

「美味しそーっ!お肉食べたかったんです!」

「よかった!お酒…頼んでいいですよ」

「え、飲んじゃっていいんですか?」

「どうぞ。頼みますね」

ワインを注いでくれ、お肉を切ってお皿に盛り付けてくれた。

(チスンって優しいし、何といっても癒される…)

「久美子さんって美容師さんですよね?」

「はい。日本にいる時からずっと同じ仕事です」

「すごいですね。こっちに来てもちゃんと仕事見つけて。なんだか尊敬します」

「そんな、尊敬だなんて。私、こう見えて行動派だから、あと先考えず先に行動したりして…よく失敗したりしますよ」

「ハハ…そうなんですね。俺も行動派だけど、しっかり考えて行動する方かな…」

「普通、そうですよね…アハハ…」

(か、可愛い…)

久美子の笑う顔を見て可愛いと思った。

「あ、ロケ地に行く約束ですけど…来月の2週目の日曜に行きませんか?約1ヶ月先ですが」

「はい!日曜だったら次の日休みだし、夜遅くからでも大丈夫です」

「では23時頃には戻れるようにしますね」

「楽しみです‼︎」

「はい、食べて下さいね」
 
「はーい!美味しぃ~」

美味しそうに食べる久美子に、チスンは見惚れていた。

「久美子さんの好きな食べ物はなんですか?」

「えー、お肉も好きだし、魚も好きだし…何でも好きです‼︎チスンさんは?」

「俺も…何でも好き」

「じゃあ、好きな色は?」

「白!」

「えっ⁈私も白です!」

「本当に?じゃ好きな季節は?せーのでいこう」

「せーの、冬!!」
 
お互い顔を見合わせて笑う。

「じゃ…これは同じじゃないはず。恋人同士で大事なことは?」

「それは…隠し事をしないこと。感謝の気持ち。想い合う心です」

(……え…)

チスンは自分と同じ考えと一緒で、言葉が出なかった。

「チスンさん?チスンさんは?」

(俺…どうしちゃったんだ…何だこのドキドキは…)

あまりの心臓の動きの速さに、チスンは混乱していた。

長い時間、食事をしていた2人は店を出て車に乗った。

































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