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26話 する必要のない言い訳
しおりを挟む30日、中田秘書の誕生日当日。
この日仕事が休みだったシュンは家でゆっくり過ごしていた。
仕事を終えたテルが帰宅する頃にプレゼントを持って行こうと考えていた。
スミと秘書は仕事が終わると、そのまま買い物をして秘書の家に行った。
「どうぞ」
「うっ…うん。お邪魔します」
「汚なくてすみません」
「ううん。キレイにしてるよ」
「そうですか?」
「うん」
若い男の子の一人暮らしにしてはキレイに片付いていた。
「キッチンそこですから適当に使って下さい」
「わかった」
「作ってる間…僕居た方がいいですか?」
「あまり作ってるとこ見られたくないな」
「じゃ、ジムに行って来ていいですか?」
「ジム通ってるんだね。いいよ」
「じゃあ20時までには帰って来ますね」
「わかった。たくさん作っておくからお腹空かせて帰っておいで」
「はいっ。楽しみにしてますっ」
秘書は家にスミを残してジムに行った。
スミは持参したエプロンを付け野菜を切り始めた。
一口コンロか…
これじゃあ時間かかるな…
ジムに行ってもらってちょうどよかった…
19時過ぎた頃、シュンはサプライズしようと思い連絡をせずにテルの家に向かった。
その頃スミはまだ料理を作っていた。
19時40分、シュンはテルのアパートの下に着くと車を停め石段を上がって行った。
確かこの前送った時…
1階の1番左端の部屋に入って行ってたな…
玄関のドアの前に立つと『中田』と表札があった。
部屋の中に灯りが点いているのを確認したシュンはチャイムを鳴らした。
秘書が帰って来たと思ったスミは玄関のドアを開けた。
「おかえり…」
「え…」
えっ…シ…シュン…⁈
2人とも驚きを隠せず一瞬時が止まった。
スミは慌ててエプロンを外した。
「どっ…どうしてっ…」
「ごっ…ごめん」
「あのっ…これは違うのっ」
「え?」
やだ…何で言い訳してるの…
「、、、、」
「テルは…居る?」
「テル?」
「あっ…中田君…」
「今…居ないけど…」
「そっ…そう…」
「えっ?知り合いなの⁈」
「…うん。ちょっと」
そんな…知り合いだったなんて…
「あのっ…私の秘書で…今日は秘書の誕生日で…それで…」
また私…言い訳してる…
「これ…テルに渡しといて」
シュンは時計が入った箱をスミに渡した。
「もう帰って来ると思う…」
「お邪魔のようだから」
そう言ってシュンは帰ろうとした。
「あのっ…」
「え?」
「この前のパーティーの時…助けてくれてありがとう…」
「…うん」
シュンは行ってしまった。
20時10分、秘書が帰って来た。
「すみません、遅くなりましたっ」
「う…うん」
「うわーっ!すげー!これ全部作ったんですかっ」
「、、、、」
「社長っ?」
「えっ…」
「どうしたんですかっ?変ですよっ」
「あっ…ううん。食べましょ」
「はいっ。本当に腹ペコですっ。いただきまーす」
「どうぞ…」
スミの頭の中はシュンのことでいっぱいだった。
秘書はあっという間に平らげた。
「めちゃくちゃ美味しかったですっ‼︎ごちそうさまでしたっ‼︎」
「いいえ」
「社長…何か元気ないけど…もしかして」
「え?」
「こんなにたくさん料理作ったから疲れたんでしょ。コンロも一つしかないから大変だったんじゃないですかっ?」
「う…うん」
その時、秘書は棚の上に置いてある箱を見つけた。
もしかして…社長からのプレゼント⁈
秘書は箱を手に取った。
「あっ…それは」
「社長からですかっ?」
「それは…シュン…あっ、いや…地曽田社長から」
「兄貴からっ⁈」
「兄…貴…?」
「兄貴が来たんですかっ⁈」
「えっ…ええ」
「そうだったんですか…」
「それより、兄貴って呼んでるの?どういう関係?」
「あっ…それは…1度専務と兄貴と一緒に飲んだ事があって。僕がついて行ったんですけど…」
「そうだったの…」
「それから2人で飲みに行って…社長は兄貴とは顔見知りなんですか?」
秘書はわざと聞いた。
「う…うん…ちょっとね…」
「そうですか…兄貴わざわざ誕生日プレゼント持って来てくれたんだ…」
秘書はプレゼントを開けた。
「時計だっ…僕が時計持ってないから…」
シュンらしい…
秘書は早速、時計をはめた。
「カッコいいな~。社長…似合ってます?」
「…うん。よかったね」
秘書はシュンがスミのことをまだ引きずっていると言っていた専務の言葉を思い出していた。
兄貴…僕の家から社長が出て来てどう思ったかな…
ショックだったろうな…
兄貴と社長…何か話したのかな…
「あのっ…そろそろ私…帰るね」
「じゃ、送りますっ」
2人は車に乗りスミの家に向かった。
「ありがとう」
「…はい」
「あっ、言ってなかったね。誕生日おめでとう」
「社長…」
「何?」
「僕、まだもらってませんけど」
「何を?」
「プレゼント」
「あっ…そうだったね。ごめん。何も用意してない。何が欲しいか考えたの?」
「はいっ」
「何?」
「何でもいいんですよね」
「何でもいいよ。明日にでも買いに行くから」
「今欲しいです」
「今は無理でしょ」
「社長…」
「どうしたの?」
秘書は今日、告白すると決めていたのだ。
「社長が欲しいです」
「…え」
「社長のことが好きなんです。僕と付き合って下さい」
「ちょっ…ちょっと待って‼︎何言い出すの⁈私の秘書でしょっ。それに年だって10個も上よ‼︎」
「そんなの関係ありません‼︎」
「もう…冗談はやめてっ」
「本気ですっ‼︎」
「もういい。明日は迎えに来なくていいから」
スミはそう言うと車を降り、家の中へ入って行った。
社長…本気なのに…
必ず男として見てもらえるように頑張ります…
秘書は落ち込んだが気持ちを切り替えて帰って行った。
その頃シュンは家に帰らず、路上に車を停めると橋から川を眺めながら思い返していた。
あの2人…本当に…そうだったんだ…
そっか…
テルはいい子だし…テルだったら…
シュンな複雑な気持ちを抑えられず何度も自分に言い聞かせた。
こうなった以上、さすがに俺も…
スミのこと…忘れないとな…
忘れないと…
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