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42話 時間の速さ
しおりを挟む18時過ぎにシュンが戻って来た。
「…ずっとここに?」
「うん…」
「ねぇー!シュンも遊ぼー!」
「もうすぐ夕食だから中に入りなさい。お兄ちゃんはちょっと出かけるから」
「えー、お姉ちゃんも?」
「ごめんね。また遊ぼうね」
「はーい!バイバーイ」
シュンとスミは施設を離れて歩き出した。
シュンはさりげなく、スミが抱えている荷物を持ってあげた。
「あっ…ありがとう」
2人は静かなカフェに入り、黙ったままコーヒーを飲んでいた。
「待ちくたびれたでしょ?ごめん…」
「ううん全然。勝手に来た私が悪いんだし…」
「…それで父さん、何だって?」
「落ち着いたら帰ってあげて」
「…父さんから説得するように言われたんだね」
「…うん」
「どうして断らないの?父さんもどうかしてるよ。スミに頼むなんて」
「シュン…そのうち戻るよね?」
「……ここ、いい所でしょ?」
「質問に答えて…」
「…戻るつもりはないよ」
「え…」
「この仕事にやり甲斐を感じてる。毎日海を見れるし、嫌なこともこの環境が忘れさせてくれるから」
「嫌なことって?スタッフも揃ってたし、社長であるシュンがずっと居なくてもいいんじゃない?それに本社はどうするの?ずっと専務に任せるの?」
「……スミ、お腹空かない?こっちに来てお酒も全く飲んでないし、飲みたくなった」
「シュン…」
「近くに気になってた店があるんだけど今から行かない?」
「…うん」
2人はカフェを出て、少し歩いた所にある海が見えるレストランに行った。
「久しぶりだね…一緒に飲むの」
「焼肉屋さんの時以来だね」
「あっ…そっか。あの時は本当にごめん」
「今日はほどほどにしないと…博多まで帰るんでしょ?」
「…うん」
「テルは元気に頑張ってる?」
「あっ…うん…中田秘書は今月いっぱいで辞めるよ…」
「えっ…どうして」
「それは…私の秘書を続ける自信がなくなったって…」
「…そ…そっか」
「シュンは中田秘書から色々と聞いたでしょ?私のこと…」
「…うん」
「私が悪いのよ」
「テルには…明日にでも電話してみるよ…」
「…うん。シュンも居ないし寂しいはずだから…そうしてあげて」
「そうだね」
「あっ…そう言えば、シュンの実家の近くのコンビニによく居た女の子…連れて来たんだね。少し遊んだけどすごく雰囲気が変わってた」
「そうでしょ。ここに来る前はろくに食事もしてなかったせいか痩せてたけど、今はちゃんと食べてるからね。子供らしくなったよ」
「シュンも…雰囲気変わった…」
「え…俺も?」
「うん」
「あー、髪も服も気にしてないからね。変でしょ?」
「ううん。いいと思う…」
「髪もそろそろ切らないとな…」
「この辺に美容室あるの?」
「うーん、ないと思う」
「そう言えば私…シュンの髪の毛カットした事あったね」
「あったねー」
2人はいつの間にか自然に会話をしていた。
「ワインなくなったよ。どうする?」
「スミは時間は大丈夫なの?」
「うん、大丈夫」
「じゃ、もう1本飲もうか」
「うんっ」
飲みながら話が盛り上がり、2人は時間を忘れていた。
「お客様…すみません。もうそろそろ閉店の時間になります」
「あっ、わかりました」
会計を済ませて店を出ると、周辺の店はほとんど閉まっていて真っ暗だった。
「とりあえずタクシー呼ぼう。ここから博多まで1時間くらいかかるな…」
「、、、、」
「スミ大丈夫?ごめん。こんな時間になるとは…」
「うん…」
シュンはタクシー会社に電話をするが空きがなく時間がかかるとの事だった。
「この辺タクシー通らないしなぁ。岸田秘書に送ってもらうしかないな…」
「えっ…悪いよ。私なら大丈夫だから、シュンは帰っていいよ」
「大丈夫って…それにこんな所にスミ置いて帰れないよ」
「でも…シュンって施設に住んでるの?」
「うん…2階に」
「そっか…」
「もしあれだったら…俺の部屋で寝る?」
「えっ…」
「時間も時間だし…スミがよければだけど」
「いいの?」
「…うん」
2人は施設に戻った。
シュンの部屋はベッドとテーブルだけを置いている狭い部屋だった。
「狭いでしょ。ただ寝るだけの部屋だからね」
「シュンがベッドで寝てね」
「スミがベッド使って」
「えっ…シュンは?」
「俺は床でいい」
「えっ、ダメよ」
「いいから。シャワー浴びて来るけどスミはどうする?」
「シュンの後に私も借りていいかな?」
「うん」
シュンは浴室へ行き、スミはスーツケースを開けて着替えを出した。
まさかシュンの部屋に泊まる事になるなんて…
思ってもいなかった…
いいよね…何かある訳でもないし…
気持ちさえしっかりしておけば…
シュンと入れ替わりにスミはシャワーを浴びに行った。
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