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入学編
第19話 会敵
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◇ ◇ ◇
ジルヴェスターたち七人は、カフェテラスへとやってくると各々飲み物や軽食を注文した。
カフェテラスなので当然、歩道や庭に張り出して客席を設けている。だが、現在は一月だ。外はまだまだ寒い。なので、七人は室内のテーブルに固まって椅子に腰掛けた。
イザベラはホットコーヒーを一口啜ると、みなに問い掛ける。
「みんなは選択科目、何を専攻するのかな?」
少しだけ首を傾げて問い掛けるイザベラは、まるでとある国の王子様かと見まがう雰囲気を醸し出している。
「そうね。わたしは考古学研究よ。他はまだ決めていないけれど」
既に一つは決めていたオリヴィアが真っ先に答えた。
共通科目の授業には歴史学もあるが、考古学研究はより専門的な科目である。歴史学の記録や文献に基づく研究を行うのはもちろん、考古学として人類が残した物質文化の痕跡――例えば、遺跡から出土した遺構などの資料――の研究を通し、人類の活動とその変化を研究する学問だ。歴史学としての一面もあるが、どちらかと言えば考古学の方に注力している選択科目である。
選択科目の単位は一科目だけではない。なので、複数専攻して勉学に励む必要がある。
「オリヴィアは歴史好きだもんね」
「ええ」
「いつも何か研究してる」
「時間がある時だけよ」
オリヴィアと共に生活してきたステラにはオリヴィアの私生活は筒抜けだ。――もっとも、オリヴィアは自分の趣味を隠していたわけではないので、筒抜けでも何も問題はないのだが。
オリヴィアの実家の自室には研究に必要な書物や、研究内容をまとめた資料などが整然としまわれている。
学園の寮にも最低限必要な物を持って来ているので、いつでも研究を続けられる万全な態勢だ。
「その点、ジルくんとは話が合うわね」
「良く二人で難しい話してる」
ジルヴェスターも歴史や考古学には関心がある。故にオリヴィアとは良く考察を繰り広げている。その光景をステラは良く見掛けていた。
「ジルくんの知識や考察力には到底及ばないわよ。わたしが一方的にお世話になっているもの」
オリヴィアは苦笑を浮かべながら肩を竦める。
「俺は実際に現場を見に行ったり、実物を持ち帰ったりしているからな。その違いがあるだけだ」
ジルヴェスターは度々壁外へ赴いて遺跡の調査を行ったり、研究材料として遺物を持ち帰ったりしている。彼はそこが自分とオリヴィアの差だと告げるが、イザベラとリリアナには他に意識を持っていかれる内容があった。
「え、壁外に赴いておられるのですか?」
リリアナが口元に手を当てて驚く。
彼女の視線がジルヴェスターに突き刺さるが――
「ああ」
全く動じずに首肯した。
「へえ。ならライセンス取得済なんだね」
魔法技能師ライセンスを有していないと、壁外へ出ることは法律で認められていない。ライセンスを有していないのに壁の外へ出るのは違法行為だ。
故に、イザベラはジルヴェスターがライセンスを有していると判断したのである。
隠す事でもないので、イザベラの言葉にもジルヴェスターは頷く。
「階級は――」
「もっとも、ライセンスを有しているからと言って、学生の身分で壁外へ赴く奇特な人はあまりいないと思うわよ」
ジルヴェスターの魔法師としての階級が気になったイザベラが質問しようとしたが、遮るようにオリヴィアが話を逸らした。
「確かに学生でもライセンス取得済の人はいるけど、実際に壁外へ赴く人は中々いないよね」
質問を遮られたことを気にしていないイザベラは、オリヴィアの言葉に納得して顎に手を当てながら頷く。
イザベラの仕草がいちいち凛々しくて周りの女性の視線を釘付けにしているが、一同は完全にスルーする。
ジルヴェスターはオリヴィアに視線を向けてアイコンタクトで感謝の気持ちを伝えると、オリヴィアはイザベラとリリアナに気付かれないように小さく微笑みを返した。
ジルヴェスターはなるべく平穏な学生生活を送りたいと思っており、そのことをオリヴィアとステラは把握している。なので、オリヴィアは気を利かせてイザベラの質問を遮って話を逸らしたのだ。
一学生として学生生活を送りたいので特別扱いをされたり、変に壁を作られたりするようなことを自ら行う愚行はできる限りしないように心掛けている。自分に対する扱いや距離感が変わるくらいならいいが、何かトラブルなどが起こりでもしたら、さすがのジルヴェスターも多少は申し訳ない気持ちになる。故に、彼としては特別隠している事柄ではないが、わざわざ言う必要もないと思っている。必要に駆られない限り自分から階級を伝えるつもりはなかった。
イザベラが言ったように例え学生の身分でライセンスを有していたとしても、壁外へ赴く者は中々いない。本人にその気があっても、そもそも両親が認めない。壁の外に出るのは当然危険が伴う。生きて帰って来られないのも日常茶飯事だ。
身体的にも精神的にも実力的にも未熟で経験値も低い者が壁外に出るのはとても危険な行為であり、周囲の者が反対する理由は容易に理解できるだろう。
ライセンスは試験を受けて合格すれば年齢関係なく取得できる。
例外を除いて初めは等しく初級五等魔法師のライセンスになるが、魔法的資質さえあれば誰でも試験を受けることは可能だ。
国立魔法教育高等学校を卒業したら自動的に初級五等魔法師のライセンスを取得できるので、卒業までの間にライセンスを取得する者の絶対数は圧倒的に少ない。
ライセンス取得後は功績や実力次第で昇級できる。昇級試験を受けて合格することで昇級する方法もある。
ジルヴェスターたち七人は、カフェテラスへとやってくると各々飲み物や軽食を注文した。
カフェテラスなので当然、歩道や庭に張り出して客席を設けている。だが、現在は一月だ。外はまだまだ寒い。なので、七人は室内のテーブルに固まって椅子に腰掛けた。
イザベラはホットコーヒーを一口啜ると、みなに問い掛ける。
「みんなは選択科目、何を専攻するのかな?」
少しだけ首を傾げて問い掛けるイザベラは、まるでとある国の王子様かと見まがう雰囲気を醸し出している。
「そうね。わたしは考古学研究よ。他はまだ決めていないけれど」
既に一つは決めていたオリヴィアが真っ先に答えた。
共通科目の授業には歴史学もあるが、考古学研究はより専門的な科目である。歴史学の記録や文献に基づく研究を行うのはもちろん、考古学として人類が残した物質文化の痕跡――例えば、遺跡から出土した遺構などの資料――の研究を通し、人類の活動とその変化を研究する学問だ。歴史学としての一面もあるが、どちらかと言えば考古学の方に注力している選択科目である。
選択科目の単位は一科目だけではない。なので、複数専攻して勉学に励む必要がある。
「オリヴィアは歴史好きだもんね」
「ええ」
「いつも何か研究してる」
「時間がある時だけよ」
オリヴィアと共に生活してきたステラにはオリヴィアの私生活は筒抜けだ。――もっとも、オリヴィアは自分の趣味を隠していたわけではないので、筒抜けでも何も問題はないのだが。
オリヴィアの実家の自室には研究に必要な書物や、研究内容をまとめた資料などが整然としまわれている。
学園の寮にも最低限必要な物を持って来ているので、いつでも研究を続けられる万全な態勢だ。
「その点、ジルくんとは話が合うわね」
「良く二人で難しい話してる」
ジルヴェスターも歴史や考古学には関心がある。故にオリヴィアとは良く考察を繰り広げている。その光景をステラは良く見掛けていた。
「ジルくんの知識や考察力には到底及ばないわよ。わたしが一方的にお世話になっているもの」
オリヴィアは苦笑を浮かべながら肩を竦める。
「俺は実際に現場を見に行ったり、実物を持ち帰ったりしているからな。その違いがあるだけだ」
ジルヴェスターは度々壁外へ赴いて遺跡の調査を行ったり、研究材料として遺物を持ち帰ったりしている。彼はそこが自分とオリヴィアの差だと告げるが、イザベラとリリアナには他に意識を持っていかれる内容があった。
「え、壁外に赴いておられるのですか?」
リリアナが口元に手を当てて驚く。
彼女の視線がジルヴェスターに突き刺さるが――
「ああ」
全く動じずに首肯した。
「へえ。ならライセンス取得済なんだね」
魔法技能師ライセンスを有していないと、壁外へ出ることは法律で認められていない。ライセンスを有していないのに壁の外へ出るのは違法行為だ。
故に、イザベラはジルヴェスターがライセンスを有していると判断したのである。
隠す事でもないので、イザベラの言葉にもジルヴェスターは頷く。
「階級は――」
「もっとも、ライセンスを有しているからと言って、学生の身分で壁外へ赴く奇特な人はあまりいないと思うわよ」
ジルヴェスターの魔法師としての階級が気になったイザベラが質問しようとしたが、遮るようにオリヴィアが話を逸らした。
「確かに学生でもライセンス取得済の人はいるけど、実際に壁外へ赴く人は中々いないよね」
質問を遮られたことを気にしていないイザベラは、オリヴィアの言葉に納得して顎に手を当てながら頷く。
イザベラの仕草がいちいち凛々しくて周りの女性の視線を釘付けにしているが、一同は完全にスルーする。
ジルヴェスターはオリヴィアに視線を向けてアイコンタクトで感謝の気持ちを伝えると、オリヴィアはイザベラとリリアナに気付かれないように小さく微笑みを返した。
ジルヴェスターはなるべく平穏な学生生活を送りたいと思っており、そのことをオリヴィアとステラは把握している。なので、オリヴィアは気を利かせてイザベラの質問を遮って話を逸らしたのだ。
一学生として学生生活を送りたいので特別扱いをされたり、変に壁を作られたりするようなことを自ら行う愚行はできる限りしないように心掛けている。自分に対する扱いや距離感が変わるくらいならいいが、何かトラブルなどが起こりでもしたら、さすがのジルヴェスターも多少は申し訳ない気持ちになる。故に、彼としては特別隠している事柄ではないが、わざわざ言う必要もないと思っている。必要に駆られない限り自分から階級を伝えるつもりはなかった。
イザベラが言ったように例え学生の身分でライセンスを有していたとしても、壁外へ赴く者は中々いない。本人にその気があっても、そもそも両親が認めない。壁の外に出るのは当然危険が伴う。生きて帰って来られないのも日常茶飯事だ。
身体的にも精神的にも実力的にも未熟で経験値も低い者が壁外に出るのはとても危険な行為であり、周囲の者が反対する理由は容易に理解できるだろう。
ライセンスは試験を受けて合格すれば年齢関係なく取得できる。
例外を除いて初めは等しく初級五等魔法師のライセンスになるが、魔法的資質さえあれば誰でも試験を受けることは可能だ。
国立魔法教育高等学校を卒業したら自動的に初級五等魔法師のライセンスを取得できるので、卒業までの間にライセンスを取得する者の絶対数は圧倒的に少ない。
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