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囚われの親子編
第43話 侵入
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◇ ◇ ◇
四月四日――レアルは前日から母と一緒にシズカの実家でお世話になっていた。
シノノメ家の朝は早い。
敷地内にある道場では複数の木刀が打ち合う音が響いていた。
男女問わず住み込みの門下生が早朝から鍛錬に励んでいるからだ。
レアルはせっかくの機会なので鍛錬に参加させてもらっていた。
そして現在はシズカの兄であるマサハルに稽古をつけてもらっている。
「踏み込みが甘いぞ」
「はい!」
レアルは対面するマサハルに木刀を打ち込む度に改善点を指摘されてしまう。
シズカは七人兄弟であり、現在二十三歳のマサハルは長兄だ。
誤解のないように説明すると、マサハルは兄弟の中で上から二番目だ。
順に、長女、長男、次男、次女、三女、三男、四女となっている。
マサハルはシノノメ流剣術の師範を務めており、腕前は家門でもトップクラスだ。
師範として多くの弟子を抱えており、指導力には定評がある。
東方人の末裔らしい黒髪を靡かせているマサハルは好青年といった印象だ。
身長は百七十センチ後半で、そこまで大きくはないが、引き締まった身体と熟練者特有の存在感が実際の身長よりも大柄に錯覚させられる。
「力任せに振るな」
「はい!」
気合を込めた一撃をマサハル目掛けて振り下ろしたが、余計な力が入っていたのか注意されてしまう。
レアルは武装一体型MACである剣を愛用しているが、剣術を習ったことはない。全て独学で基礎がなっておらず、マサハルにとっては指導し甲斐があった。
マサハルがレアルに指導しているのはあくまでも基礎の段階だ。
何もシノノメ流剣術が剣術の正解でも完成形でもない。
独学が悪いわけではなく、自分に合ってさえいればそれが正しい技術だ。
レアルが正式にシノノメ家の門下生になるのならば、シノノメ流剣術の専門的な技術を指導するが、客人である以上は基礎を教えるに止める。
未熟な者には危険な技術もあり、客人に危険の伴う鍛錬を課す無責任なことはできないからだ。
「よし、少し休憩にしよう」
「は、はい」
肩で息をしているレアルの様子を見た上での判断だ。
「俺はみなの様子を見て回るが、気にせず休んでいなさい」
「わかりました」
マサハルには師範としての役目がある。レアル一人に構っていはいられない。
もちろん師範はマサハルだけではないので、決して門下生を疎かにしているわけではない。
現に、シノノメ家の当主で総師範を務めるシズカの父――シゲヨシと、兄弟で上から三番目の次男――タケフミが指導を行っている。タケフミは師範代だ。
(マサハルさんは凄いな……)
レアルは邪魔にならないように壁際に移動して腰を下ろすと、鍛錬に励む門下生の様子を見て回るマサハルの姿を目線で追い掛ける。
マサハルは鍛錬が始まってからずっとレアルと打ち合っていた。だが、マサハルは呼吸一つ乱れていない。レアルは自分との格の違いを実感した。
(いい経験だ)
マサハルに改善点を指導してもらう度に自分が成長していっているのがわかり、充足感に満ちて清々しい気分だった。
近頃は気の沈む毎日を送っていたが、シノノメ家にお世話になって良かったと心の底から思った。
四月四日――レアルは前日から母と一緒にシズカの実家でお世話になっていた。
シノノメ家の朝は早い。
敷地内にある道場では複数の木刀が打ち合う音が響いていた。
男女問わず住み込みの門下生が早朝から鍛錬に励んでいるからだ。
レアルはせっかくの機会なので鍛錬に参加させてもらっていた。
そして現在はシズカの兄であるマサハルに稽古をつけてもらっている。
「踏み込みが甘いぞ」
「はい!」
レアルは対面するマサハルに木刀を打ち込む度に改善点を指摘されてしまう。
シズカは七人兄弟であり、現在二十三歳のマサハルは長兄だ。
誤解のないように説明すると、マサハルは兄弟の中で上から二番目だ。
順に、長女、長男、次男、次女、三女、三男、四女となっている。
マサハルはシノノメ流剣術の師範を務めており、腕前は家門でもトップクラスだ。
師範として多くの弟子を抱えており、指導力には定評がある。
東方人の末裔らしい黒髪を靡かせているマサハルは好青年といった印象だ。
身長は百七十センチ後半で、そこまで大きくはないが、引き締まった身体と熟練者特有の存在感が実際の身長よりも大柄に錯覚させられる。
「力任せに振るな」
「はい!」
気合を込めた一撃をマサハル目掛けて振り下ろしたが、余計な力が入っていたのか注意されてしまう。
レアルは武装一体型MACである剣を愛用しているが、剣術を習ったことはない。全て独学で基礎がなっておらず、マサハルにとっては指導し甲斐があった。
マサハルがレアルに指導しているのはあくまでも基礎の段階だ。
何もシノノメ流剣術が剣術の正解でも完成形でもない。
独学が悪いわけではなく、自分に合ってさえいればそれが正しい技術だ。
レアルが正式にシノノメ家の門下生になるのならば、シノノメ流剣術の専門的な技術を指導するが、客人である以上は基礎を教えるに止める。
未熟な者には危険な技術もあり、客人に危険の伴う鍛錬を課す無責任なことはできないからだ。
「よし、少し休憩にしよう」
「は、はい」
肩で息をしているレアルの様子を見た上での判断だ。
「俺はみなの様子を見て回るが、気にせず休んでいなさい」
「わかりました」
マサハルには師範としての役目がある。レアル一人に構っていはいられない。
もちろん師範はマサハルだけではないので、決して門下生を疎かにしているわけではない。
現に、シノノメ家の当主で総師範を務めるシズカの父――シゲヨシと、兄弟で上から三番目の次男――タケフミが指導を行っている。タケフミは師範代だ。
(マサハルさんは凄いな……)
レアルは邪魔にならないように壁際に移動して腰を下ろすと、鍛錬に励む門下生の様子を見て回るマサハルの姿を目線で追い掛ける。
マサハルは鍛錬が始まってからずっとレアルと打ち合っていた。だが、マサハルは呼吸一つ乱れていない。レアルは自分との格の違いを実感した。
(いい経験だ)
マサハルに改善点を指導してもらう度に自分が成長していっているのがわかり、充足感に満ちて清々しい気分だった。
近頃は気の沈む毎日を送っていたが、シノノメ家にお世話になって良かったと心の底から思った。
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