ビリーと私のオーストラリアDiary

Kaede

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失望と支え

ご褒美

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ビリーは疲れたのかそのあと一時間くらいウトウトと寝ていて、起きたのは6時半ごろにアダムが来た時だった。
「ごめん、遅くなってーーあ、寝てたか。」って最初アダムは言って、その声にビクッとして目を開けた。
「そんなにビクつかなくてもいいのに。」ってアダムは笑った。
「ああ、ごめん。ちょっと寝てた。」そう言って顔をしかめて「麻酔が切れて痛くなってきた。」って言った。
「手術中にテッドが呼ばれて行ったから何かあったかと思ってビックリして。すぐ来ようと思ってたけどバタバタしてたしテッドも「大丈夫そうだ」っていうから。大丈夫?」アダムは心配そうに聞いた。
「うんーー麻酔のせいかな、気分がすごい悪くて、何回か吐いちゃって。迷惑かけた。だいぶ良くなったけど。」
ビリーは言った。
「何か食べられる?ジュースとゼリー買ってきたよ。カエも、何食べてた?柔らかいものなら食べやすいかと思ってそこのウールワースでポテトサラダとサンドイッチ買ってきたから一緒に食べよう。」アダムはそう言って袋から出してくれた。
「俺はいらない。全然食欲ないからカエに食べてもらっていいよ、ゼリーも。」ビリーは言った。
「車運転して帰れる?もしキツイなら俺がーー」アダムがサンドイッチを食べながら言った。
「大丈夫だよ、そのくらいは出来るから。」ビリーはアダムに微笑んだ。
「カエはどうなの?少しは痛くなくなった?」アダムが聞いた。
「うん、昨日が一番痛かったかな。少しずつ楽になってる。」私はポテトサラダをゆっくり食べながら言った。
「それなら、良かった。」アダムは頷いた。
「今日語学学校に行ったら昨日引越しにアダムが着ていったトレーナーが「最悪にダサい」って評判だったよ。」私は笑った。
「ああ、あれね。俺もよく見ないで持っていって、着いてからTシャツの上に着たんだよ。そして、車の窓に映った自分を見て、失敗したって思ったけど半袖でいるのも寒いし仕方がなかったっていうか。ビリーのせいだよ、俺を笑いものにして。あのミッキーマウスが。」アダムは言った。
ビリーはぶどうジュースを飲みながら「俺は悪くない。ミッキーマウスが書いてあるってちゃんと言ったのに、確認もしないで持って行く方が悪いよ。ノエルが、確か大学生の時に買ったやつで。ほら、センスないから。」って笑った。
「ジェイミー達にもすごい笑われたし、俺、リンとほとんど話したことがなかったけど、リンにも大笑いされたしーー笑われるために行ったような感じで。しかも今日すごい筋肉痛だし。」
「俺、ライル達の引っ越しに手伝いに行くって言ったんだよ。どうしようかな、何もできないし迷惑かな。」ビリーが言った。
「いつなの?」アダムが聞いた。
「次の週末じゃない?」ビリーが言った。
「そうなんだ?俺も手伝ってもいいよ。こうなったらあのトレーナー捨てる前にビリー達の引っ越しまで着るかな。ノエルにを見せつけてやらないと。」アダムは笑った。
「本当?ライルが喜ぶよ。後で日程連絡するように言っておくから。」私は言った。
「何気に人の家を見るのって楽しいよね?その人の生活の様子が想像できるっていうか。ジェイミー達の家も2階から海が見えていい所だったよ。なんかーー開放的な感じ?ジェイミー達もそういう雰囲気だよね?ヒッピーっぽいっていうか、なんていうか。」アダムが言った。
「ああ、分かる気がする。なんかね、私とビリーがもう少し回復したらリンが手料理を作って引っ越しパーティーをするとか今日スティーブンが言ってた。手伝った人たちはもちろん、私達も呼んでくれるってよ、ビリー。」
「マジで?何も手伝ってないのに悪いな。何か買って行かないと。」ビリーが言った。
リアムはその少し後に来て「ああ、少し顔色が良くなったかな?」ってビリーを見て、「帰れる?」って聞いた。
ビリーは頷いて帰る支度をしてーーリアムは持ってきた袋をビリーに渡して「薬とゼリーが入ってるから。」って言った。
「ありがとう、リアム。」ビリーは言った。
「リアムもビリー達の引っ越しの話聞いてる?」アダムは聞いた。
「さっき聞いたよ。自分は見てるから俺に手伝えってーー本当に使。だいたい自分が荷物運べないのに引っ越しするのが間違ってる。まあ、でも、掃除でも何でも手伝うから言って。安静にしてないと。」リアムは笑った。

帰ってからゼリーを一口だけ食べて薬を飲んではいたけど、ビリーは夜中に痛がっているのが分かってーー深呼吸を何回もしたり小さく呻いたりーーかわいそうで、朝起きてくると目の下にはクマが出来ていた。それでも「何食べる?」って私が聞くと「トーストとベジマイトでいい。自分で焼くよ。カエは?痛くない?」って気遣ってくれて。
この日の朝にはライルからメールが来ていて、「ビリーは大丈夫?気になってメールしてみた。何か必要な事があったらいつでも言ってね。」って言ってくれた。
私は返事を書いた。「痛がってるけど頑張ってるよ。大丈夫。いつもありがとう。」って。
ビリーはこの日から帰ってくると痛みを紛らわすかのように引越しの手配とかちょっとした部屋の片付けとかをし始めて、私も木曜日に語学学校のみんなにもついに引越しの話をした。
「8月の最終週の土曜日に引っ越しをするの。」って。
スティーブンはアダムから聞いて知っていたみたいだけど、ケビン達は驚いていてーー
「どこに引っ越すの?」ってターニャが聞いた。
「すぐ近くだよ。ホークスバーンの駅の近くなんだけど。」私は言った。
「だって、ビリーはそんな状態じゃ引越し作業大変なんじゃない?」ジェイミーが言った。
だから。どう?手伝ってくれる人?」私が言ったら、みんなが笑って「仕方がないな。」って手を上げてくれた。
「わー!嬉しい。ありがとう。デヴィンは?まだイギリスに帰っちゃう前だよね?」私は言った。
「うん、次の週に帰るんだけど、俺も手伝いに行くよ。いい思い出になりそうだし、カエにもとてもお世話になったから。」デヴィンは言った。
「オリーにも声をかけるから。」ってターニャは言ってくれた。
「ありがとう。本当に助かる。」
私はそれから翻訳のレビューのためにライルに会いに言った。
をしてから初めての再会で、待ち合わせたカフェでライルは私を見て「ああ、元気そうで良かった。」って言ってくれた。「翻訳は問題なしだったけど、聞かせてよ。あの後何があったか。」ライルは言った。
「あの後ね、ビリーにはなかなか言い出せなくて、結局は相談したもう一人がーー語学学校の方の友達なんだけどーーアダムにチクって、そこからビリーが知ってーー怒られて、次の日には歯医者に引っ張って連れて行かれて。さらに違う病院に紹介されて、結局埋まってた親知らずを抜かれたの。」私は言った。
「ーー大変だったね。どうなったか心配してて。」ライルは言った。
「うん。大泣きしちゃった。で、ビリーに診察室までついてきてもらってーー」
ライルはここで笑い始めた。「マジか。」って。
「うん、それで、私は歯を抜かれながらビリーの手を握ってて。それで何を握ってるかも意識しないで痛みを紛らわそうととにかく握り潰して、それでーー痛がったビリーが無理やり手を引き抜こうとして上手くいかなくて関節がーー人差し指の第二関節なんだけど折れちゃって。クラリッサにお世話になったんでしょ?もうね、ビリーも大騒ぎしたし、私も顔ドロドロになって泣いたし、明後日抜糸してこの件が済んだらもうしばらくあの病院には恥ずかしくて行けないねって話してた。」
ライルは大笑いして「いや、笑っちゃ悪いけど本当カエ達は面白いね。」って言った。
「だからライル達の引越しも行っても逆に迷惑かなって言ってて。まあ、それでも行っていい?それで、代わりでもないけどアダムが手伝いに行くって言ってたから連絡してみて。いつ引越しするの?」
「来週の土曜日だよ。来てくれたら嬉しい。クラリッサもあの日、「ビリーが夕方に救急に来て指の骨が折れてるって整形外科の先生に診てもらってて、たまたま担当になって手当してあげたんだけどーー」ってすごく心配してて。そうか、そういう事だったんだね。とんだ災難だったな。引越しは予定通りやるの?」ライルは聞いた。
「うん、その予定。8月の最終週の土曜日ね。気をつけて、ビリーは他の人をこき使う気満々だから。」私は笑った。
「ああ、やばいな。」ライルも笑った。
「ビリーが、クラリッサがとても優しかったって言ってたよ。聞いた?この前私もクラリッサとランチしたんだけど、なんかすごくいい友達になれそうな気がした。」
「クラリッサも喜んでたよ。クラリッサも俺と同じで、なんていうかーーちょっとシャイっていうかそういうところあるから病院以外での知り合いが出来て嬉しいんじゃないかな。ビリー達との出会いは最近起きた中で一番いい出来事だよねって話してる。」
「本当?嬉しいな。最初のからは予想できなかったよね?本当に思うけど人生は予想外の出来事の連続で、それがいい事か悪い事かは実際に起きてみるまで分からないっていうかーーだけど、そういう出来事に今までは私は一人で対処しようとしてた。ビリーに心配かけたくなかったから。でもね、今回の出来事があってーーこれからは、もうちょっとビリーを頼ろうかなって思ってる。結局ビリーに知られてすごい怒られたけど、でもーービリーはちゃんと落ち着いて対処してくれて、傍で支えていてくれたし、ちょっと私は自分勝手だったかなって反省した。もっと甘えてもいいんじゃないかと思って。ライルの言ったことは正しかったんだよ。ありがとう、本当に。」私は言った。
ライルは頷いて「どういたしまして。」って言った。
その後私はライルと別れてトラムに乗ってスマホを見た。
ノエルから「遅くなったけどチョコレートありがとう。美味しかったよ!」っていうSMSと、あとーー銀行からの「入金のお知らせ」が来ていてーー私は速攻でアプリを開いた。そして、その額を見て心臓がドキドキした。桁を数え間違ったかと思って、何回も数えた。そしてーーそれを理解すると同時に、ビリーがどういう反応をするのかなって少し不安になった。まだ痛みのせいであまり体調も良くなさそうで、鎮痛剤を飲んでやっと仕事に行っているような感じだったから。
その日ビリーが帰ってくるとまず夕食をーーこの日はスープパスタにしたーー食べて、それから話をした。
「ビリー、ちょっといい?」って。
「何?」
「今日、父から入金があって、ほら、。」
「ああ、うん。いくら入ってた?」
私は金額を見せた。ビリーは眉間に皺を寄せてしばらく画面を見た後「ーーマジか。」って言った。
「マジで。」私も言って、ビリーは私を見て笑った。
「いや、ジュンに悪いなーーこんな金額、ちょっとーーだって、俺の持ってる分と合わせると3分の2くらいは払えちゃうし。」ビリーは信じられない、っていう感じに首を振った。
「私が思うに、これは母のお金だと思う。父はほら、公務員だしマンションのローン払うだけで精一杯だろうから。私もビックリしちゃったけど、でもーー黙って有難く受け取ろうよ?明日の夜にスカイプでお礼しようと思って。」
「ーー分かった。ここ一週間で一番嬉しい出来事かな。なんかーー多分、カエの結婚祝いみたいな感じなんじゃない?その気持ちを踏み躙りたくないから、プライドは捨てて受け取るよ。明日は予定通り家具を見に行こうよ。」
「大丈夫?無理してない?」私は聞いた。
「大丈夫だよ。ちょっとピークは超えた感じかな?キツかった。薬の効きを超えた痛みっていうか。でも、今日足のリハビリに行ったら、少しずつ痛みが無くなってる実感があって嬉しくて。ちょっと前向きになったせいか、手の痛みも少しだけマシになったような気がしてる。」ビリーはちょっと嬉しそうに言った。
私はビリーの肩を抱いて「良かった。明日、楽しみだね。」って言ってシャワーを浴びに行った。
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