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24 町でオーパーツを売るぞ!
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ガロガロガロン。
木製の荷車が、舗装されていない土の道を行く。
今日は月に一度、村長が町までオーパーツを卸ろしに行く日だ。
いつもなら村長と数人の男とだけで行くのだが、今日は特別に、オレとミミも同行している。
オーパーツの中に、地球のものがあったから、どういう使い方をするのか現地で説明するのだ。ミミはオレの保護者で専属通訳。
荷車に乗っかって、過ぎ行く景色を堪能する。
「すげーな、ミミ! 村がどんどん遠ざかっているぞ」
「うむ。すげーな。ひつじ、はやい」
牛に引かれて善光寺参りってのは聞いたことがあるが、今荷台を引いているのは2頭の羊だ。
海ひつじという、水陸両用(?)で、泳いで川を渡れるニクいやつ。
羊に引かれて異世界旅行をするユーチューバーはオレが初だろう。
あー、この目に映る光景を録画したい。
車ほど早くないし、道は舗装されていないから地面のくぼみがあるたびに荷台がガツンと揺れる。決して乗り心地は良くないけど、これは旅のダイゴミってやつだろ。
荷車を引く羊に並んで歩いている村長が、オレに言う。
「ミミは軽いからいいが、キムラン。お前はそろそろ自分の足で歩けヨ。荷物が重いと羊が疲れヤスイ」
「はーい」
名残惜しいけど、荷車から降りて歩きはじめる。
2時間ほど歩いて、ようやく開けた場所に出る。麦畑の向こうに町が見えてきた。
「おおおおおお! まさしくファンタジー! オレたちの村よりも大きいな!」
「ヴェヌスは商店が豊富だからナ。欲しいものが大半ここで揃うって言われてイル」
「へ~」
見渡す町並みには、エルフやリザードマン、ネコミミな獣人さん、角のある人などありとあらゆる種族の人が行き交っている。
耳に入って来る人々の会話もわからない言葉だらけ。
これでこそ異世界。ワクワクするぜ。
「キムラン、商会に行くゾ。商品の説明を頼む」
「おう! 任せてくれよ! ミミも翻訳頼むぜ」
「まかせろ。わたしは、キムランのほごしゃだからな」
「お、おぅ……」
ミミかあさんは今日もやる気。オレ、心の汗が止まらないよ。
商会の一室に案内されて今回の収穫を販売する。
村長が定番商品を売ったあとはオレの出番だ。
今回流れ着いていたオーパーツ、蒸し器のアピールをする。
下段が鍋、上段のそこが穴開きになっている一般的なアレ。
鍋を見せると皆さん眉をひそめて、「穴開き鍋なんか役に立つのか……?」という反応をする。(ミミがそんなセリフひとつひとつも全部訳してくれた)
「疑るのも無理はないですが、これはこうして使うのです!」
魔法のコンロを設置してその上に水をはった下段の鍋、その上に穴開き鍋をセットする。
よく洗って半分に切ったマルイモを並べ、蓋をする。
10分もすると、蓋の蒸気穴と鍋のフチからシュシュシュと湯気がもれてくる。だんだんただよってくる芋のいい香り。
隣で鍋を見ていたミミの顔が、期待で輝いている。
10分、弱火でじっくり蒸しあげた。
「おまたせしました! これでできあがり!」
ふかしたマルイモを盛り付け、断面に海ひつじのミルクのバターを塗り塗り。さらに薄切りにしたチーザを乗せる。
キムラン特製マルイモバターチーズだ!
商会の皆さんは胡散臭いものを見たような顔をしている。
「ミミ。はい、あーん。熱いから気をつけろよ」
「ふー、ふー! はむ、むぐむぐむぐむぐゴクン」
食べる担当のミミ、ひたすらマルイモをほおばる。
自分のとりぶんを食べ終え、感想を言ってくれるかと思いきや。
商会の人の試食用に出したものまで食べようとする。
「ミミ~。まって、帰ったらまた作るから、いったん食べるのやめようか~。鍋のアピールをしないと」
「おお、そうだった。いいか、イモはふかすとうまい。これはいいナベ」
「というわけで、蒸し器を金物職人さんに量産してもらえば、食卓はより一層料理の種類が増えて楽しくなるでしょう」
ミミが本来の仕事を思い出してくれた。オレの言ったことも翻訳して商会の皆さんに伝えてくれる。
試食をして、最初の疑りの目から一転。
ヒゲのおじさんが「これは良い! ぜひウチのおかかえの工房で作らせてくれ!」と言ってくれた。
専属契約、ヤッタゼ!
こうしてオレの異世界初、デモンストレーションは大成功で幕を閉じたのであった。
木製の荷車が、舗装されていない土の道を行く。
今日は月に一度、村長が町までオーパーツを卸ろしに行く日だ。
いつもなら村長と数人の男とだけで行くのだが、今日は特別に、オレとミミも同行している。
オーパーツの中に、地球のものがあったから、どういう使い方をするのか現地で説明するのだ。ミミはオレの保護者で専属通訳。
荷車に乗っかって、過ぎ行く景色を堪能する。
「すげーな、ミミ! 村がどんどん遠ざかっているぞ」
「うむ。すげーな。ひつじ、はやい」
牛に引かれて善光寺参りってのは聞いたことがあるが、今荷台を引いているのは2頭の羊だ。
海ひつじという、水陸両用(?)で、泳いで川を渡れるニクいやつ。
羊に引かれて異世界旅行をするユーチューバーはオレが初だろう。
あー、この目に映る光景を録画したい。
車ほど早くないし、道は舗装されていないから地面のくぼみがあるたびに荷台がガツンと揺れる。決して乗り心地は良くないけど、これは旅のダイゴミってやつだろ。
荷車を引く羊に並んで歩いている村長が、オレに言う。
「ミミは軽いからいいが、キムラン。お前はそろそろ自分の足で歩けヨ。荷物が重いと羊が疲れヤスイ」
「はーい」
名残惜しいけど、荷車から降りて歩きはじめる。
2時間ほど歩いて、ようやく開けた場所に出る。麦畑の向こうに町が見えてきた。
「おおおおおお! まさしくファンタジー! オレたちの村よりも大きいな!」
「ヴェヌスは商店が豊富だからナ。欲しいものが大半ここで揃うって言われてイル」
「へ~」
見渡す町並みには、エルフやリザードマン、ネコミミな獣人さん、角のある人などありとあらゆる種族の人が行き交っている。
耳に入って来る人々の会話もわからない言葉だらけ。
これでこそ異世界。ワクワクするぜ。
「キムラン、商会に行くゾ。商品の説明を頼む」
「おう! 任せてくれよ! ミミも翻訳頼むぜ」
「まかせろ。わたしは、キムランのほごしゃだからな」
「お、おぅ……」
ミミかあさんは今日もやる気。オレ、心の汗が止まらないよ。
商会の一室に案内されて今回の収穫を販売する。
村長が定番商品を売ったあとはオレの出番だ。
今回流れ着いていたオーパーツ、蒸し器のアピールをする。
下段が鍋、上段のそこが穴開きになっている一般的なアレ。
鍋を見せると皆さん眉をひそめて、「穴開き鍋なんか役に立つのか……?」という反応をする。(ミミがそんなセリフひとつひとつも全部訳してくれた)
「疑るのも無理はないですが、これはこうして使うのです!」
魔法のコンロを設置してその上に水をはった下段の鍋、その上に穴開き鍋をセットする。
よく洗って半分に切ったマルイモを並べ、蓋をする。
10分もすると、蓋の蒸気穴と鍋のフチからシュシュシュと湯気がもれてくる。だんだんただよってくる芋のいい香り。
隣で鍋を見ていたミミの顔が、期待で輝いている。
10分、弱火でじっくり蒸しあげた。
「おまたせしました! これでできあがり!」
ふかしたマルイモを盛り付け、断面に海ひつじのミルクのバターを塗り塗り。さらに薄切りにしたチーザを乗せる。
キムラン特製マルイモバターチーズだ!
商会の皆さんは胡散臭いものを見たような顔をしている。
「ミミ。はい、あーん。熱いから気をつけろよ」
「ふー、ふー! はむ、むぐむぐむぐむぐゴクン」
食べる担当のミミ、ひたすらマルイモをほおばる。
自分のとりぶんを食べ終え、感想を言ってくれるかと思いきや。
商会の人の試食用に出したものまで食べようとする。
「ミミ~。まって、帰ったらまた作るから、いったん食べるのやめようか~。鍋のアピールをしないと」
「おお、そうだった。いいか、イモはふかすとうまい。これはいいナベ」
「というわけで、蒸し器を金物職人さんに量産してもらえば、食卓はより一層料理の種類が増えて楽しくなるでしょう」
ミミが本来の仕事を思い出してくれた。オレの言ったことも翻訳して商会の皆さんに伝えてくれる。
試食をして、最初の疑りの目から一転。
ヒゲのおじさんが「これは良い! ぜひウチのおかかえの工房で作らせてくれ!」と言ってくれた。
専属契約、ヤッタゼ!
こうしてオレの異世界初、デモンストレーションは大成功で幕を閉じたのであった。
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