改訂版 草凪ときつねの思い出ごはん。

ちはやれいめい

文字の大きさ
18 / 30
ねこまたの章

17 平安時代にできて、現代にはできないこと

しおりを挟む
 お店の片付けが終わってから、私は父さんと母さんにほうこくした。

「そうか。小町の食べたいものはかき氷なのか。たしかに、凍らせたものって昔の人にとってすごくぜいたくな食べものなんだよな。冷ぞう庫があるのが当たり前になりすぎて、考えたこともなかった」
「わたしもよ。かき氷っていうのはいがいだったわ」

 まさか今の時代でも、夏のおやつとして食べているかき氷だなんて。

 かき氷だとわかったのはいいれど――問題は、だった。

「あまづらってなんなのーーー? 料理の本にのってないんないんだけど」
「調べましょう。手分けすれば早いわ」

 母さんがスッとノートパソコンを立ち上げる。

「俺は植物の本を探してみるかな」
「私はスマホで探すー」

 家族みんなで手分けしてしらべていく。

 私はスマホでキーワードを入れて、ヒットするサイトをかたっぱしから開く。

奈良なら時代から室町むろまち時代に使われていた甘味料。
 さとうが手に入らない時代では、水あめと並んで使われていた。】

【ブドウ科のしょくぶつのツルを煮つめて作ったとされている。】

【江戸時代に海外からさとうをゆにゅうするようになってからは、すたれていった】

【どのようにして作ったのか、文けんはのこされていない】


 三人でいろんなじょうほうをかき集めて、一ついえることは『小町が食べたあまづらと同じものにはならない』ということだった。


 平安時代の人がどのツルからどうやってあまづらを取り出し作っていたのか、こんなに科学がはったつした現代の日本でもわかっていない。
 それってふしぎ。
 昔よりもできることがたくさんあるはずなのに、昔の人でないとできないこともある。

 世の中には毒をふくむしょくぶつもあるから、シロウトが下手に「そこらの木を切ってシロップを作ってみよう!」なんてすると命にかかわる。しょくぶつのプロでもむずかしいことだから、ぜったいためすなとすら書かれている。

 パソコンを見ていた母さんが声を上げた。

「あ! 見てほまれさん、マコト。奈良の大学で研究して、あまづらとにたような成分のシロップを作ったっていう報告がのっているわ。おとりよせもできるみたい」
「それためそうよ!」
「決まりね。問い合わせてみる」


 パソコンのまわりにあつまっていた雪路と小町は、じっと私たちを見上げている。

「草凪。つくれるのか?」
「うん。きっとできるよ。ただ、ちょっととどくまで何日かかかるから待っててくれる?」
「あいわかった!」

 思い出の味が楽しみなようで、小町のつぶらなひとみがキラキラかがやいた。
 小町が求めていた白くて冷たくて甘いもの、食べられるまであと少しだ。


 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

ふしぎなあな

こぐまじゅんこ
児童書・童話
みちのまんなかに、おおきなあながあいていました。 だいちゃんは、……。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

思い出ぼくろ

kanjii
児童書・童話
夢中で遊んだ夏休み・・・子供の頃の懐かしい思い出がふたたびよみがえって・・・・・

処理中です...