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プレイン共和国、絶えた希望の妄執編
12.もう逆に心配になってくる
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「まったく……あいつらめ、こっちが下手に出てれば調子にのりやがって……」
水を貰いに行くと無理矢理に部屋から脱出して、俺は溜息を吐く。
どうしてこうアイツらは調子に乗った途端に俺の服を剥いだりセクハラし倒そうとして来るのか。どう考えてもおかしい。おかしいじゃないか。
大人ってこんなに性欲に素直だったっけ。今更過ぎるけど、あのオッサン達は何故「わあ凄い!」って尊敬した時の気持ちのままで居させてくれないんだろうか。
お、俺だって、ブラックやクロウに対しては他の大人に思うみたいな事を思うし、凄いって素直に認めたり、尊敬するなあって感じる事もなくはないのに。
なのに、どうしてアイツらは尽く俺の良い感情をぶち壊してくれるのか。
つーかセクハラし過ぎじゃないのかおい。
俺が迂闊な事をするからと言う理由があるにしても、その前にあの二人が性欲過多なのが問題なような気もして来た。
だって普通、変な声出したくらいで、こんな発情したりしないよな。
いくら恋人だからって、ノリ気じゃないときにえっちな声だしても「恥ずかしい奴だなあ」って思われたりするかも知れないし……いや、普通の恋人がどうなのかは俺には解らんけど。悔しい。女子と初体験してみたい。いやそれはともかく。
まあドンビキされないだけありがたいけど、でもやっぱり、一々発情されるってのは変なのではと思わずにはいられない訳で……。
「…………普通、こんなに興奮するモンなのかな……?」
そういえば、以前ブラックが「ほんとは一晩中犯したい」とか恐ろしい事を言っていたが……もしそれが本当だとすれば、今の俺が耐えられるえっちの回数じゃ物足りないって事だよな……。
だとしたら、俺が悪い部分は有るのかも知れないが……そもそも、あの二人の性欲がこの世界でもおかしいレベルだって可能性もあるよな。もし俺の考えが正しいのだとすれば、むしろ問題が有るのはブラック達の方なんじゃないのか……?
そうなると、何か逆に心配になってくるんだけども。
「…………性欲過多って、あんまり良くない……んだよな……? ブラック達が変な病気になったりとかしたらどうしよう……。玉袋が爆発したりとかしないよな……」
異世界なんだし、袋が精子を作り過ぎて爆発する病気とか充分あり得るよな。想像するだけで股間が痛くなるからあんまり考えたくないけど。
しかし、そうなると今更ながらに怖くなってきたぞ。
もし二人のあの性欲が異常なら、尚更抑えてあげる術を考えなければ。
性欲のせいで二人が病気になるとか嫌だぞ。凄く心配だし、元気で居てくれないのは嫌だ。弱った二人なんて俺は見たくないぞ。恋人とかの前に二人は大事な仲間なんだから、出来る事ならバカな事をやれるくらい元気でいて欲しい。
やっぱちゃんと考えなきゃ駄目だ。病気だったらえらい事だし。
もし、俺へのセクハラが欲求不満から来る発作だとしたら、二人の玉袋が危ない。いや玉袋は無事かもしれんが、こんな状態じゃブラック達の体にも悪いだろう。二人とも中年だし若くないんだから、マジで病気になってもおかしくない。
この世界の人のえっちの回数が解らない以上、何でも疑ってかからねば。
「……でも、ソレが解ったからって、俺にはどうにも出来ないしなあ……」
仮に病気になる心配がないとしても、ブラックの凄まじい性欲を満足させてやれてない俺では、我慢をさせるばかりだ。
ただでさえ今の俺はブラックが望む回数のえっちは出来ないんだし、不満を募らせてしまうくらいなら……いっそ娼姫とか抱いて貰った方が良いのでは……。
……そりゃ、まあ、俺としてはモヤモヤするけど……ブラック達の体が不調になるくらいなら、女の人と楽しくヤッて貰った方が良いし……俺だって、いつも美女とかにデレデレしてんだから、そのくらいは……。
…………べ、別に、嫉妬とかしないし。羨ましいけど……モヤモヤするだけだし。
俺が相手の性欲を受け止め切れないのも悪いんだから、ブラックとクロウが病気になるくらいなら、エキスパートに任せて貰うのも一つの手だよな。
欲求不満は良くないんだから、そっちの方が、ブラックには…………。
「だーっ、もう、やめやめ! とにかくアレだ、どうにかしなきゃ……。でも、本当に爆発するかどうかは解らないし……とにかく病気かどうか判断できる何か必要だ。図書館とかに行けば、家庭の医学事典みたいな本とかあるかな……」
こんな悩み人には話せないし、自分で調べるしかないよな。
はあ、俺にも何でも教えてくれる「大賢者」スキルとか、調べたい事を何でも検索できる「知識の泉」スキルが有ればなあ。
……オッサンの股間の病気のために、凄いスキルを欲しがるっていうのもどうかと思うけども……。
「ま、まあ、とにかく今は水だな。水」
早く戻らないとブラックが拗ねるし、俺も水を飲んで落ち着かねば。
「……しかし、本当俺もどうしちまったんだか……。あいつらのせいで、俺まで何か変な感じになってるし……」
あんまり考えないようにしてたんだけど、実は俺も下半身が変な感じなんだよな。ブラックに気を与えてからと言うもの、臍の下と言うか、足の付け根とかそこらへん一帯がジンジンしてて、何かずっとえっちな気分になるって言うか……。
耐え切れない程じゃないけど、ぶっちゃけエロ画像みて興奮した時以上に下半身がおかしいんだよな……。まあ、き、気のせいだとは思うけどな。
でも、最近ずっと、えっちな事された後はこんな風になるし、もしや俺も変な病気とかになってたりって事はあるまいな。
「じゃなかったら、俺まで欲求ふ……いや、ない。それは絶対ないな!」
あのオッサン達はありえるけど、俺はそんな事ないはず!
だって定期的に絞り取られてるし、第一俺はそんなに性欲強くないし!!
だ、だから、この下半身のモヤモヤしたのだって、気のせいだ。
変な事された余韻でこんな事になってるだけのはず!
ケツまで変な感じなのも気のせい! 気のせいだってば!
ええいもう一人でいるから変な事ばっかり考えるんだ、さっさと水を貰って部屋に戻ろう。俺は笛の練習もしなくちゃいけないんだし。
早くあのリコーダーを完璧に吹けるようになって、ロクを呼び出さねば。そして俺はロクとキャッキャウフフタイムを繰り広げるんだ。
おかしな気持ちを振り払いつつナザルさんの居るロビーの受付へと向かい、水の入った水差しとコップを貰う。今日の夕食は何が良いかと適当な話をしてから、さあ部屋に戻ろうかと廊下へ足を向けようとすると……向こう側から、フードを目深に被った二人組がロビーへと歩いてきた。
あれは……ラトテップさんと用心棒の人か。
――商人であるラトテップさんに話を聞いた時に教えて貰ったのだが、プレインの商人は、個人で商いをする場合は必ず一人は用心棒を連れて行くらしい。
その理由は、行商や商談の為に旅をする時に危険を退けるためと言われているが、実際は商売敵からの襲撃や、顔を隠しているが故に侮られるのを防ぐための方が多いらしい。
プレイン共和国では位の高い人間は「差別を避けるため」に、こうして姿を隠して行動するのが普通らしいが、そのために襲われて「取って代わられる」なども多く、個人商人は常にその危機に曝されているのだと言う。
だから、ラトテップさんのように位の高い個人商人は、必ず専任の用心棒を後ろに従えて行商を行っているんだとか。
あと、この国では獣人も人族と同様の権利を有しているらしいが、それでもやはり「外様」という経歴が足を引っ張る事もあるらしく、顔を見せるような場面では侮られる事もあるんだそうな。こればっかりは仕方のない事だとラトテップさんは笑っていたけど、どんな世界でも余所者には厳しいもんなんだな。
でもまあ、地位とかがあまり関係ない村落では好意的に受け入れて貰えるって事だったから、そこは良かったよ。
どうもこの国は獣人だけじゃなく外国人の俺達にも厳しいみたいだから、やっぱ裏街道を選んで正解だったって事だな。改めてありがとう、我が友マグナ君。
「やあ、ツカサさん。もう夕食はお済みで?」
色々と考えている内にラトテップさん達は目の前まで来ていたようで、朗らかに挨拶をして来た。背後の用心棒さんは相変わらず無口だが、これもなんか理由が有るんだろう。用心棒は喋っちゃいけないとかさ。
気にしないようにして、俺はラトテップさんに挨拶を返した。
「夕飯はこれから運んで貰おうかなって。ラトテップさん達も今からですか?」
「いえ、私達は先程済ませたんですよ。今からなら楽しみですねえ~。ナザルさんの木の実料理はとても美味ですよ。今日も完璧でした」
「ヘヘ、ありがてえお言葉です」
ラトテップさんの感謝の言葉に、ナザルさんは照れて頭を掻く。
粗野っぽいおじさんが照れて笑うのって和むなあ。
「ところでツカサさん、貴方がたは冒険者との事でしたが……何か御入用の物は有りませんか? 良ければ、私の商品を少し見て頂きたいのですが」
フードを取って、人の良さそうな笑みを見せるラトテップさんに、俺は今更相手が旅の商人だった事を思い出す。
そっか、マントで姿を隠している高ランクの商人でも、立派な行商人なんだよな。
プレインの行商人が何を売ってるのか気になるし……ちょっと見せて貰うくらいは良いか。もしかしたら珍しいアイテムとか有るかも知れないしね。
と言う事で、商売道具を持って来て貰ってロビーで広げて貰ったのだが……。
これがまあ驚く事に、ラトテップさんの持ち歩いていた商品は膨大な量だった。
なんでも、ラトテップさんが持つ行商用の箱型のバッグは、「縮小術」を応用した原理で中の物を圧縮できる物で、かなりの物品が収納できるとか。
どうやら、俺の持つ【スクナビ・ナッツ】より更に進化した物らしい。
チート小説で言う所のマジックバッグみたいなもんかな。
この世界で一番価値のある白金貨が数枚消えるほどの凄いお値段とのことで、俺達にはとてもじゃないが購入出来ない物だったが、やっぱプレインの行商人は持ってるバッグもハイテク技術で作られてるんだなあ。さすが技術大国。
「何か気に入って下さるものがあると良いのですが」
言いながら、ラトテップさんは小瓶を最後に並べ、全ての商品を見せる。
目の前でずらりと並べられた数々の品を見て、俺は思わず感嘆の溜息を吐いてしまった。だって、本当に凄い品揃えなんだもんよ。
日用雑貨や食料は当たり前で、金物や調理器具、簡単な武器だって数種類は揃っている。それに子供用の玩具や訳の分からん小さなメカまであるし、本当になんなんだこの品揃えの豊富さは。
「めっちゃ品物ありますね……」
「ふふっ、ありがとうございます。行商人は巡回する村落の人達の要望を聞いたり、その要望を満たすために、様々な商品を用意しなければならないのです。ですので、有るのが当たり前だと思われるより、こんなに沢山あるのは予想外だと驚いて頂けた方がとても嬉しいのですよ」
「そ、そんなもんなんですか……」
行商の人的には驚いて貰える方が嬉しいのか。
でも確かに「こんだけ有るのが当然だるぉ!? あぁん!?」って思われるよりは、素直に喜んで貰える方が良いわな。
商売人の人は大変だなあと思いつつ、俺も何か無いかとじっくり見て見る。
「あ、聖水がありますね! おおっ、こっちは乾燥したモギと……これ、もしかしてロエルですか……?」
半透明の干しイモみたいなのを指さすと、ラトテップさんは笑顔で頷く。
「さすがは冒険者さんですねえ。これは、とある木の曜術師が秘伝の方法で乾燥濃縮させた干しロエルなんです。水に戻して他の材料と混ぜて回復薬を作る事も出来ますが、これはそのまま齧ると口寂しい時にとてもいいお菓子になります。砂糖漬けにする方もいらっしゃいますね」
「へ~……! 乾燥させられるとは知らなかったなぁ……」
ちょっと面白そう。クロウに蜂蜜を分けて貰って漬けてみようかな。
乾燥濃縮ってことは、モニュモニュした食感になってそうだし、グミっぽく食べられるかも知れない。俺は果汁グミも好きなんだ。
と言う訳で、俺は回復薬の材料と他の薬を作る材料も購入する事にした。
備えあれば憂いなしって言うもんな。
まあぶっちゃけ植物は自力で生やせるんだけど、そんな暇がないかも知れないし、今の内に回復薬を作れるだけ作った方が良いだろう。
気付け薬とか湿布も欲しかったし、ポイズンバットがいるなら毒消しも必要だ。
買える時に買っとかないとね。
と言うわけで一通り必要な物を購入して、ありがとうございました……と言おうとした所に……ふと、角にひっそりと並べられているモノ達が目に入った。
――――なにやら特徴的な形をした棒に、妖しげな小瓶。
中でも一際強く俺を惹きつけたのは…………とある一冊の本だった。
「ああ、それ面白い本でしょう? 好事家の方に結構人気なんですよ。よかったら、一冊どうですか。娼姫達に豆知識として話すとウケがいいですよ」
……あっ、そ、そっか。ラトテップさんには、俺が普通の男に見えてるんだな。
俺が、女の人を抱く奴だって、思ってるんだ。
ま、まあそうだよな! 普通そうだよな!?
じゃあ、だ、だったら…………。
「物は、た、試しって奴ですね! 野営の時とかすっごくヒマだし、たまにはこんな本を読むのも良いですよね!」
「ええ勿論! 男三人旅だと辛い時も有りますしねえ。ツカサさんには沢山購入して頂きましたから、お安くしておきますよ~」
そう言いながら揉み手でニコニコと微笑むラトテップさん。
値引く、と言われたら……そらもう、買わない訳にはいくまい。
「じゃ、じゃあ、この……“淫らで役立つ豆知識”の本、下さい……」
……この世界の本ってのは、本当に見も蓋も無い題名ばっかだなあ。
まあ、そんな本を恥ずかしげも無く購入する俺もどうかしてると思うけどね!
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※次ちょっとセルフバーニング
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