859 / 1,264
世界協定カスタリア、世界の果てと儚き願い編
16.エンテレケイア遺跡―招待―
しおりを挟む※今回もただの移動回になってしまいましたすみません(;´Д`)
諸事情でちょっと内容なさげ
◆
色々とグダグダになってしまったが、とにかく最上階の部屋へとやって来た。
もうお姫様抱っこに関しては何も言うまい。墓穴を掘るのは俺だ。
で、どうやら団長室だったらしい部屋に入って調べたんだが、そこで俺達はエンテレケイア遺跡の事を少し知ることが出来た。
まず、この建物は本当に訓練場だったらしく、エンテレケイア遺跡への入口……門にほど近い場所であるという事。そして、彼らが「神兵」であり、神の手助けをする為に存在する者でもあり、その力を神の民……つまり、この遺跡の住民達のために使う事を絶対としていたらしい。
要するに、騎士団みたいなもんだったっぽいな。
そんな事が、部屋に残っていた唯一劣化していない石に「掟十か条」として刻まれていた。
……どうもこれ、新撰組的な組織が、掟を額縁に飾っていつでも見えるようにしておくような目的で作られたらしいな。この平たい石が落ちていた場所のすぐ隣の壁には、石を掲げて置く為の金具のような物が落ちていたし、壁にも金具が抜け落ちた穴が有ったから間違いないだろう。
おかげでこの建物がなんなのかが解ったけど、プレインの遺跡では人の意思が残る痕跡ってのを初めて見たもんで、なんだか妙な感じがした。
この部屋には本棚も有って、どうやら本や書類などが置かれていたみたいだけど……なんか引っかかるな……。ミレットではあんだけ超古代の技術が使われてたのに、どうしてこの施設はそういう物が無いんだろう。まあ、本が好きな懐古主義の人だったのかも知れないけどさ。
そこはひとまず置いといて……部屋を調べ終わった俺達は、次に部屋の窓からこの遺跡を見てみたんだけど……その光景に、四人揃って絶句してしまった。
首都くらいの規模は有るんじゃないかと言う程の大きさの街が、城壁のような壁とその上に被さる橙色の半透明なドームにしっかりと守られている。
上から見た時はただの濃い卵の黄身にしか見えなかったけど、内部は圧巻の光景だった。
鈍い青の光を放つメタリックな建物が広がるエンテレケイアは、中心に有る一際高く荘厳な建物を中心にして一部の乱れも無く広がっている。
西欧のどこかの都市が、このような区画分けがきっちりした円形の都市だった気がするが、実際に見てみるとなるほどとても美しい。
街を歩いていただけでは解らないけど、高みから眺めるとただただ見事の一言だ。
この遺跡……いや、この街を造った人は、空から見る事も考えて作ったんだな。
そして、その楽しみはきっとこの訓練所の団長と、あの中心の高い建物に鎮座していた……恐らく、この街を治める人間……その二人しか知らないだろう。
中心にある建物よりも低いこの建物ですら街の様子に驚いたんだから、あの建物の最上階から下を見たらきっともっと凄いだろうなあ。
素直にそう思ってしまうほど、遺跡は洗練されていた。
実際、訓練所を出て街を歩いてみてもその整った様子が解る。
建物自体は崩れた物も有るけど綺麗に残っている物の方が多いし、ゴミといっても長い間に積もった瓦礫やらくらいで、整備されているかのように綺麗だ。
まるでミレットみたい…………
「…………ん……? もしかしてあのロボットって……」
「え、なに? ツカサ君」
ブツブツ言いながら歩く俺に、ブラックが腰を屈めて聞いて来る。
まあブラックならいいかと思って俺は話した。
「いや……俺達を襲ってきたロボット……変なの居たじゃん? もしかしたらアレが掃除してたのかなって思って……」
「えっ、あれが掃除してたの!? モンスターじゃなくて!?」
「いや俺も断定はできないけど、アレの刃物とか足とか付いてない可愛い奴なら、俺のトコにも有ったんだよ。お部屋を掃除してくれる奴……俺は持って無かったけど」
「うぅ……うぅ~ん……? 家事妖精みたいなもの……?」
イマイチ想像できないのか、ブラックは腕を組んで苦しそうに首を傾げる。
そんなに理解しがたいのかと思ったが、まあ襲われた後なら当然か……。
だけど俺の世界に似たようなものが有るってのは納得してくれたみたいで、こそっと耳打ちをして来た。
「でも、だったら余計にぼやかしておいた方が良いかもね。あいつらツカサ君の素性をきちんと把握してないみたいだし、シアンも多分ワケがあって話してないんだろうから……黙っておいたほうが良さそうだ」
「そうだな……そっか、シアンさんにも何か事情があるのか。だったら、今は伏せておこう。幸い、今は色々あって二人ともロボについては何も言ってないし……」
とは言え、この会話も聞き耳されてる可能性があるが、そこは仕方ない。
まあ、これはケルティベリアさんが聞いてても良いだろう。
彼は無理矢理聞いてくるような人じゃないし、俺達に敵意は無いみたいだしな。
「それにしても、あのロボってのはどうやって倒したの?」
「簡単だよ。塩水をぶっかけたの。そうすると、ああいうのはバリバリーってなって止まるんだ。えーと……電気って言葉ある?」
「伝記? 本の事?」
「あ……えーと……雷をもっと人が扱いやすくして、曜術みたいに操ってるものの事……かな。その電気ってのがロボには流れてて、それを消費して動いてるんだ」
「ふーん、曜具みたいなものかぁ。雷を動力に使うなんて不思議だね」
不思議かぁ……この世界じゃそう言う物の方が変に見えるんだな。
まあそりゃそうか。雷なんて危ない物を捕まえようとしなくたって、この世界には直接扱う事が出来る属性が沢山あるし、動力だって、電気がなくたって魔法みたいな力で充分まかなえるんだもんな。
でも、俺の世界じゃ電気が無いと始まらないからなあ。
俺の体にだって、電気が流れてる訳だし……うーん、考えてみると、エネルギーを全部電気に変換して動いてる世界だなんて、それはそれで妙な話なのかもなあ。
うーん、近未来ものはあんまり読んだ事が無いけど、なんだか俺の世界がそう言う物と同じような気がして来たぞ。電気や電波と言ったものに支配されている世界……とかなんとか言ったら、ちょっとした中二病気分でワクワクしてくるかも。
まあ実際はワクワクするもんでもないけどな。別に術が使えるわけじゃなし。
「ツカサ君なんで難しい顔してるのー?」
「いや、ちょっとな。まあとにかく、ここにいないとも限らないんだから警戒を怠……」
るな、と、言おうとした所に……カシャカシャと音を立てながら、一匹の大きめなル○バ……じゃなくて、お掃除ロボのようなものが路地から出て来た。
あっ、これヤバい。
思わず構えた俺達だったが……黒いお掃除ロボは俺達に気付くと、別段急ぐでもなくチョコチョコと近付いてきた。……あれ? 攻撃してこないの?
思わずしゃがみこんでロボットを待つと、相手は俺の前に止まってピーと鳴いた。
えっ、なにっ、俺ゴミ判定されたの。
「敵意は無いようだな」
「ツカサ君、なんか解る?」
相手が曜具みたいな物体……つまり、感情や好き嫌いが無いものだと理解したからなのか、ブラックは別段焦るでもなくさらっと聞いて来る。
俺も冷静になって足元に留まっているロボを見やると、相手は小さなランプをチカチカさせながら物を喋り出した。
『ニンシキ、アタラシイオキャクサマ。ゴシュジンサマ、オツレスル』
「お客様……?」
ロボらしいカクカクボイスで喋ってくれたのは良いけど、お客様とご主人様って……もしかしてこの遺跡にはまだ人がいるって事なのかな。
けれどもお掃除ロボは俺達の様子も気にせず、すぐにちょこちょこと走り出す。
だが、俺達が立ち止まっている事を知ると、くるりとターンして戻ってきた。
『オキャクサマ、ツイテクル。ゴシュジンサマ、アワセル』
そう言いながら、ロボは俺の前でおろおろするかのように左右に細かく移動した。
「か……かわ……」
「ツカサ君駄目だよそいつ数刻前に僕らを殺しに来た奴の仲間だよ」
ハッ、そうだった。
いかんいかん、どうしてこう可愛い物体を見るとすぐ心がときめくんだ。でも仕方ないじゃない人間だもの。可愛いは正義なんだもの。
『アンナイスル、アンナイスル』
「あっ、ご、ごめんね。付いて行くからね」
軽く足を踏み出すと、お掃除ロボは俺達の意志を読み取ったのか先導を始める。
ル○バって見てる内に可愛く思えて来るけど、やっぱああいうちょっとドジっ子的な無機質デザインの機械が頑張ってるのを見ると、ほのぼのしちゃうんだよなあ。
顔が有るとか美少女型とかそういうのとはまた違う、何と言うか犬や猫に抱くようなきゅんとする物が有るのだ。こう言う気持ちは顔が有るロボットとかには抱けないんだよなあ不思議と。相手を人に似た物って認識しちゃうからなのかな。
色々と考えてしまったが、まあ今はお掃除ロボについて行こう。
このまま街を彷徨っていても時間が掛かるだけだし、虎穴に入らずんば虎児を得ずという奴だな。うん。危険に飛び込む事も時には重要なのだ。
などと思いながら、お掃除ロボ君と共に歩いて行くと……なんだか中央に位置するあのでっかい建物に近付いてきた。
まさかと言わずとも、あそこに連れて行かれるんだろうなあ……しかし、ご主人様ってのはどんな奴なんだろう。というか、こんな場所に人なんているのか?
「ねえツカサ君、これ罠だったりしない? 僕イマイチ信用出来ないんだけど」
「我も同感だ……ちょっとその……都合が良過ぎやしないだろうか」
「それはそうなんですけど……結局は中央のあの建物に行く事になりそうだし、警戒しても一緒かなあと……」
そう言ってしまえばお終いな訳で、それ以上ブラックもケルティベリアさんも何も言えなくなってしまったようだった。
不安がないワケじゃないけど、ここで拒否したってロクな事にならないだろうし、またロボ達に追いかけられるのも嫌だし……それなら全面対決した方がまだ気が引き締まるってもんだ。どこに連れて行かれるのか解らないが、覚悟だけはしておこう。
ちょこちょこと走る黒いお掃除ロボットを見つめながら、俺は深呼吸をした。
→
29
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる