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ラクシズ泊、うっかり調合出会い編
1.あなたが初めての相手です
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大奥とか王様の嫁とかってのは、こんな気分だったんだろうか。
相手に呼ばれるまで待つって言うのがこんなに苦痛だなんて思わなかった。
ああもう、めっちゃ緊張する。心臓バックバク言ってる。死にそう。
逃げ出したいけど、折角覚悟を決めたのに後から「やっぱダメです」なんて卑怯なマネやりたくない。ああでも逃げればよかった。
こんなことするくらいだったら、泥水啜っても生きたよ俺多分。
盛大な溜息をつく俺に、女将さんが近寄って来た。
「大丈夫かい、あんた」
「た、多分……あの、女将さん。その人ってもう来てるんです……よね」
「ああ、三階の部屋にいるよ。ほらなんだい、ビシっとしなよ! なーに一発終わりゃすぐ出てきていいんだ。動けなかったら枕元の呼び鈴を鳴らしなよ。すぐにベイリーが駆けつけるからさ」
ベイリー、うう、今は聞きたくない名前だ。
確かに痛くなかったけど、優しく解して貰ったけど、だけどあんな事されてあんな事言われた後じゃ、顔を合わせるのが辛くて仕方ない。
だって、俺あの人にケツに指入れられたんだぞ!?
どんな顔して会えっちゅーねん!!
ああでも精根尽きたら力を借りるしかない訳でっ。
どうしたらいいかとモダモダしていると、女将さんが肩を押さえてくる。
「あーあーほら、折角綺麗にしたんだ、ホコリがつくから騒ぐんじゃないよ。綺麗な服着てお坊ちゃんみたいなんだから、ちっとはしおらしくしな」
「う……すみません……」
「あ、あと言い忘れてたけどね、娼姫だからってなにも無理にやらなくてもいいんだよ。相手が酷い奴だったり、ナニがデカすぎて入りそうにないってのだったりしたら、遠慮せずに呼び鈴鳴らしな。怪我されちゃこっちが迷惑だからね」
ナニがでかい。その発想はなかった。
そうか、そういうのもあるのか。
というか、その言葉で俺自身が誰かにベッドに押し倒されてるのを想像してしまい、サーッと血の気が引いていってしまった。
よし、なんかされたら遠慮なく呼び鈴ならそう。もう決定。
「っていうか女将さん、そんなに優遇していいの? 怒らんない?」
「誰が怒るってんだい。こっちはあぶれた奴らに体売ってやってんだ、満足できなきゃ他の所に行けばいい。そんだけだから気にするこたないよ。無理矢理やらされそうになったら引っ叩いておやり」
……もしかして娼姫ってのは、往来でも堂々としてていい感じの職業なんだろうか。じゃないと引っ叩くなんて出来なさそうだし。
国公認の存在がいるっていうことが、地位を向上させてるのかな?
「おっと。時間みたいだね。さ、行くよ」
「ひっ、ひゃい」
うへー、余計緊張してきた。
女将さんに続いてぎくしゃくと狭い階段を上り、ようやく三階に着く。三階は下の階と違ってちょっと豪勢だ。廊下の上には絨毯が敷いてあるし、壁には金の装飾のあるカンテラが取り付けられている。
飾ってある壺や絵画もなんとなくリッチな感じだ。
「さ、頑張っておいで」
「う……うん……」
目的の部屋のドアをノックすると、中から応える声が聞こえた。
その声は、やっぱり女のものでは無い。低く渋い男の声だ。
たぶん、中年。
うー。良い声だけど中年ってことはあれかなあ、飲み屋街とかによくいる、やらしい顔した買春オヤジが中に居るのかなあ。映像で見る分にはいいけど、俺耐えられるかな……。
せめてデブ親父とかじゃないといいなあとささやかな願いを胸に抱きつつ、俺はゆっくりと扉を開いた。
「お待たせしました……」
柔らかな絨毯敷きの部屋に、ゆっくりと踏み入る。
途端、相手が息を呑んだのが聞こえて、俺は顔を上げた。
「……?」
何もかもが細かい装飾で彩られた、調度品まで煌びやかな部屋。
その部屋の中心に鎮座している天蓋付きのベッドの上で、その人は驚いたような顔をして俺を見ていた。
「き、みは……」
彼の声は、外で聞いたのと一緒だ。低くて渋い、耳をくすぐるような声。
だけど、俺が想像していた買春親父とはまるで違う容姿だった。
まず驚いたのは、ウェーブがかった真っ赤な髪。後ろ髪を長く伸ばしてリボンで一つに括っている。こんなに鮮やかな髪は、街でも見た事がなかった。
それに、顔は確かに中年だけど、野性味のある濃い顔っていうか……イケメンと言うよりかハンサムな感じにそこそこ整っている。無精ひげが気になるけど。
服装も薄紺を基調にした大人しめのものだし、どう見ても春を買いに来るようには思えないけど……黒髪にして考えたらちょっとスケベそうに見えるし、ないこともない……かも。ファンタジー補正で格好良く見えてる?
そんな失礼な事を考えている俺に、相手は少し動揺したように身じろぐと、ゆっくり立ち上がった。
「よく……来てくれたね」
ひいっ! ち、近づいて来る!
おおお落ちつけ俺。
「あ、あの……」
相手はわりと背が高い。でも、見上げた顔はやっぱりオッサンだ。
うーん、濃い顔だなあ……人のこと言えないけどこの人眉太いし、昭和のドラマに居そう。でも逆にここまでくるとテレビで見た人っぽくて親近感あるわ。
じっと見つめていると、相手は間近にまで歩いて来て、俺の頬を手でそっと包んだ。
「これは……」
じっと目を見つめられて、無意識に瞬きが早くなる。
み、見つめられるの苦手なんだよなあ。
早く終わってくれないかと困っていると、相手は俺の表情に気付いたのか手を離した。
「ご、ごめん」
「いえ……」
慌てて後退る姿は純情っぽい。
おっと、このオッサンもしかして意外とウブって奴なのか?
じゃあ、やりようによってはもしかしたら、一発もやらないで終われるかも!
そうと決まれば善は急げ。俺はそそくさとベッドの上に座った。おっと、物凄い沈むなこのベッド。高級品だぞこれは。
あまりの弾力に驚いている俺に、相手は少し目を泳がせたものの、案外すんなりと俺の隣に座って来た。
「君……名前は?」
「え? 俺? つかさ……」
ってバカ! うっかり本名を名乗っちゃったよ俺!!
「そうか、ツカサ君っていうのか。僕は……ブラック」
「ブラック?」
「そう、ちょっと呼びにくいとは思うけども……よろしく」
呼びにくくはないけど、あまりに不釣合いで驚いてしまった。
だって、ブラックって「黒」って意味なのに、相手は見事な輝く赤髪なんだもん。瞳だって綺麗な深い紫だし、黒の要素が一つも見当たらない。
ブラックってんなら、どっちかっていうと俺のほうが似合う。
変な名前を付ける親もいたもんだ。
「どうしたの、難しい顔して」
「あ、いや……ブラックって、俺もそうだよなあ~……って」
そう言った瞬間、相手は大きく目を見開いた。
僅かに相手の気配が緊張するのが伝わってくる。でも俺には今の発言の何が相手を緊張させたのか解らなくて、戸惑ってしまった。
どうしよう、なんか変なこと言ったかな……親近感とか持って貰おうとしたんだけど……。もしかして、自分の名前あんまり好きじゃないとか?
だ、だったら悪いことしちゃったかも……。
違うんだ、意外だなって思っただけで!
今度は俺が慌ててブラックさんに弁解をした。
「あ、あのさ、でもブラックって良い名前だよね。黒って高貴な色なんだって! それにブラックナントカって付いたら大抵強いとか凄いものだってあるし、あ、俺の住んでたところにはね、ブラックカードっていう物凄い高価なカードとかあったし、それに月のない真っ黒な夜って星も良く見えるし……!」
ああもう俺何言ってんだろう。
でも、ブラックさんは目を真ん丸にして俺をじっと見つめている。
ど、どういう感情でこっちを見てるんだろう、これ。嫌われてないかな……いや、寧ろこの場合嫌われた方がいいのか。そしたら相手をしなくても済むんだし。
てか寧ろ、嫌われる事をした方が俺的には得だったかも?
思わず悩んでしまったが、それは今一番やってはいけない事だった。
何故なら、考え込めば周りが見えなくなってしまうのだから。
「ごめん」
唐突に謝られて、俺は一瞬思考を止める。
なにが、ごめん?
振り向いた瞬間、強く両肩を掴まれて、俺はベッドに押し倒されてしまった。
「え!? あ、あのっ」
「優しく出来なかったら、ごめんね」
なに!? なんでいきなりスイッチ入っちゃったの!?
「ちょ、ちょっと待って……!」
拒否する間もなく圧し掛かられて、拒否しようとした言葉が途切れる。
反射的にブラックさんを見ると、相手は目を細めて――――俺にキスをした。
→
※性描写アリのため次回は22時以降更新
相手に呼ばれるまで待つって言うのがこんなに苦痛だなんて思わなかった。
ああもう、めっちゃ緊張する。心臓バックバク言ってる。死にそう。
逃げ出したいけど、折角覚悟を決めたのに後から「やっぱダメです」なんて卑怯なマネやりたくない。ああでも逃げればよかった。
こんなことするくらいだったら、泥水啜っても生きたよ俺多分。
盛大な溜息をつく俺に、女将さんが近寄って来た。
「大丈夫かい、あんた」
「た、多分……あの、女将さん。その人ってもう来てるんです……よね」
「ああ、三階の部屋にいるよ。ほらなんだい、ビシっとしなよ! なーに一発終わりゃすぐ出てきていいんだ。動けなかったら枕元の呼び鈴を鳴らしなよ。すぐにベイリーが駆けつけるからさ」
ベイリー、うう、今は聞きたくない名前だ。
確かに痛くなかったけど、優しく解して貰ったけど、だけどあんな事されてあんな事言われた後じゃ、顔を合わせるのが辛くて仕方ない。
だって、俺あの人にケツに指入れられたんだぞ!?
どんな顔して会えっちゅーねん!!
ああでも精根尽きたら力を借りるしかない訳でっ。
どうしたらいいかとモダモダしていると、女将さんが肩を押さえてくる。
「あーあーほら、折角綺麗にしたんだ、ホコリがつくから騒ぐんじゃないよ。綺麗な服着てお坊ちゃんみたいなんだから、ちっとはしおらしくしな」
「う……すみません……」
「あ、あと言い忘れてたけどね、娼姫だからってなにも無理にやらなくてもいいんだよ。相手が酷い奴だったり、ナニがデカすぎて入りそうにないってのだったりしたら、遠慮せずに呼び鈴鳴らしな。怪我されちゃこっちが迷惑だからね」
ナニがでかい。その発想はなかった。
そうか、そういうのもあるのか。
というか、その言葉で俺自身が誰かにベッドに押し倒されてるのを想像してしまい、サーッと血の気が引いていってしまった。
よし、なんかされたら遠慮なく呼び鈴ならそう。もう決定。
「っていうか女将さん、そんなに優遇していいの? 怒らんない?」
「誰が怒るってんだい。こっちはあぶれた奴らに体売ってやってんだ、満足できなきゃ他の所に行けばいい。そんだけだから気にするこたないよ。無理矢理やらされそうになったら引っ叩いておやり」
……もしかして娼姫ってのは、往来でも堂々としてていい感じの職業なんだろうか。じゃないと引っ叩くなんて出来なさそうだし。
国公認の存在がいるっていうことが、地位を向上させてるのかな?
「おっと。時間みたいだね。さ、行くよ」
「ひっ、ひゃい」
うへー、余計緊張してきた。
女将さんに続いてぎくしゃくと狭い階段を上り、ようやく三階に着く。三階は下の階と違ってちょっと豪勢だ。廊下の上には絨毯が敷いてあるし、壁には金の装飾のあるカンテラが取り付けられている。
飾ってある壺や絵画もなんとなくリッチな感じだ。
「さ、頑張っておいで」
「う……うん……」
目的の部屋のドアをノックすると、中から応える声が聞こえた。
その声は、やっぱり女のものでは無い。低く渋い男の声だ。
たぶん、中年。
うー。良い声だけど中年ってことはあれかなあ、飲み屋街とかによくいる、やらしい顔した買春オヤジが中に居るのかなあ。映像で見る分にはいいけど、俺耐えられるかな……。
せめてデブ親父とかじゃないといいなあとささやかな願いを胸に抱きつつ、俺はゆっくりと扉を開いた。
「お待たせしました……」
柔らかな絨毯敷きの部屋に、ゆっくりと踏み入る。
途端、相手が息を呑んだのが聞こえて、俺は顔を上げた。
「……?」
何もかもが細かい装飾で彩られた、調度品まで煌びやかな部屋。
その部屋の中心に鎮座している天蓋付きのベッドの上で、その人は驚いたような顔をして俺を見ていた。
「き、みは……」
彼の声は、外で聞いたのと一緒だ。低くて渋い、耳をくすぐるような声。
だけど、俺が想像していた買春親父とはまるで違う容姿だった。
まず驚いたのは、ウェーブがかった真っ赤な髪。後ろ髪を長く伸ばしてリボンで一つに括っている。こんなに鮮やかな髪は、街でも見た事がなかった。
それに、顔は確かに中年だけど、野性味のある濃い顔っていうか……イケメンと言うよりかハンサムな感じにそこそこ整っている。無精ひげが気になるけど。
服装も薄紺を基調にした大人しめのものだし、どう見ても春を買いに来るようには思えないけど……黒髪にして考えたらちょっとスケベそうに見えるし、ないこともない……かも。ファンタジー補正で格好良く見えてる?
そんな失礼な事を考えている俺に、相手は少し動揺したように身じろぐと、ゆっくり立ち上がった。
「よく……来てくれたね」
ひいっ! ち、近づいて来る!
おおお落ちつけ俺。
「あ、あの……」
相手はわりと背が高い。でも、見上げた顔はやっぱりオッサンだ。
うーん、濃い顔だなあ……人のこと言えないけどこの人眉太いし、昭和のドラマに居そう。でも逆にここまでくるとテレビで見た人っぽくて親近感あるわ。
じっと見つめていると、相手は間近にまで歩いて来て、俺の頬を手でそっと包んだ。
「これは……」
じっと目を見つめられて、無意識に瞬きが早くなる。
み、見つめられるの苦手なんだよなあ。
早く終わってくれないかと困っていると、相手は俺の表情に気付いたのか手を離した。
「ご、ごめん」
「いえ……」
慌てて後退る姿は純情っぽい。
おっと、このオッサンもしかして意外とウブって奴なのか?
じゃあ、やりようによってはもしかしたら、一発もやらないで終われるかも!
そうと決まれば善は急げ。俺はそそくさとベッドの上に座った。おっと、物凄い沈むなこのベッド。高級品だぞこれは。
あまりの弾力に驚いている俺に、相手は少し目を泳がせたものの、案外すんなりと俺の隣に座って来た。
「君……名前は?」
「え? 俺? つかさ……」
ってバカ! うっかり本名を名乗っちゃったよ俺!!
「そうか、ツカサ君っていうのか。僕は……ブラック」
「ブラック?」
「そう、ちょっと呼びにくいとは思うけども……よろしく」
呼びにくくはないけど、あまりに不釣合いで驚いてしまった。
だって、ブラックって「黒」って意味なのに、相手は見事な輝く赤髪なんだもん。瞳だって綺麗な深い紫だし、黒の要素が一つも見当たらない。
ブラックってんなら、どっちかっていうと俺のほうが似合う。
変な名前を付ける親もいたもんだ。
「どうしたの、難しい顔して」
「あ、いや……ブラックって、俺もそうだよなあ~……って」
そう言った瞬間、相手は大きく目を見開いた。
僅かに相手の気配が緊張するのが伝わってくる。でも俺には今の発言の何が相手を緊張させたのか解らなくて、戸惑ってしまった。
どうしよう、なんか変なこと言ったかな……親近感とか持って貰おうとしたんだけど……。もしかして、自分の名前あんまり好きじゃないとか?
だ、だったら悪いことしちゃったかも……。
違うんだ、意外だなって思っただけで!
今度は俺が慌ててブラックさんに弁解をした。
「あ、あのさ、でもブラックって良い名前だよね。黒って高貴な色なんだって! それにブラックナントカって付いたら大抵強いとか凄いものだってあるし、あ、俺の住んでたところにはね、ブラックカードっていう物凄い高価なカードとかあったし、それに月のない真っ黒な夜って星も良く見えるし……!」
ああもう俺何言ってんだろう。
でも、ブラックさんは目を真ん丸にして俺をじっと見つめている。
ど、どういう感情でこっちを見てるんだろう、これ。嫌われてないかな……いや、寧ろこの場合嫌われた方がいいのか。そしたら相手をしなくても済むんだし。
てか寧ろ、嫌われる事をした方が俺的には得だったかも?
思わず悩んでしまったが、それは今一番やってはいけない事だった。
何故なら、考え込めば周りが見えなくなってしまうのだから。
「ごめん」
唐突に謝られて、俺は一瞬思考を止める。
なにが、ごめん?
振り向いた瞬間、強く両肩を掴まれて、俺はベッドに押し倒されてしまった。
「え!? あ、あのっ」
「優しく出来なかったら、ごめんね」
なに!? なんでいきなりスイッチ入っちゃったの!?
「ちょ、ちょっと待って……!」
拒否する間もなく圧し掛かられて、拒否しようとした言葉が途切れる。
反射的にブラックさんを見ると、相手は目を細めて――――俺にキスをした。
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