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首都ラッタディア、変人達のから騒ぎ編
古代遺跡・地下水道―4日目・基因―2
しおりを挟む「これはまた……なんだ?」
驚くのすらもう飽きたぜ、なんて言いたいけど、やっぱり見慣れない物には体が警戒してしまう。俺達が到達した中枢部……らしき場所には、研究施設にあるような巨大な装置や机、そして中央には菱形(ダイヤ型の事ね)の大きな石が台座の上でふわふわ浮かんでいた。
巨大コンピューターみたいなモノリスはいいとして……中央の菱形岩はなんだ?
「中枢部って、普通に部屋なんだね。いや、普通ではないけど……」
「ここで下水を浄化してるのか?」
「そのはずだが……そんな装置は見えないな……」
それぞれが適当に言葉を放りながら、部屋の中に入っていく。
「ツカサ君、入らないの?」
「いや……あの部屋の真ん中に在るでっかい石の菱形が気になって……」
「確かに気になるね……。台座が有るってことは何かの彫像だろうけど……部屋の中央に置くにはちょっと不自然過ぎる」
例え中枢部じゃなくても、この部屋が何か重要な場所なのは間違いないだろう。じゃなけりゃ、あんな面倒な仕掛けなんて作る訳がないし。
あの仕掛け、俺が術で「視た」限りでは、日によって水が通らない水管の場所が違うみたいだった。そんな厳重なセキュリティを付けてるんだから、この地下水道に関しての資料くらいは保管されてるはずだ。
だけど、そんな場所のど真ん中に彫像って……。
「このパターン……まさかな……」
俺が知ってる小説やアニメのパターンだと、これはちょっと厄介な事になりそうなんだけど。ううむ、迂闊に部屋に入らない方が良かったかな。
悩む間にも、コータスさんが俺達と同じように彫像の不自然さに気付いたのか、台座に近付いて何やら調べ始める。
「この彫像は……何々、ええと……まつろ、わぬ……へい、しの、ぞう……?」
まつろわぬ兵士の像。
コータスさんがそう言ったと、同時。急に部屋全体が振動し始めた。
「きゃぁあっ、なにっ!? 地震!?」
「ち、違う、こりゃ地面からじゃねえよ!」
「じゃあ、どっから……アッ!?」
フェイさんの声が途切れる。
その声の放たれた先は、残念ながら俺が予測した「嫌な予感」の主――――
台座に鎮座していた、あの菱形の浮遊岩だった。
「か、形が……!!」
細かい振動を部屋中に伝わせ、菱形がゆっくりと形を変えて行く。
緑の光が一直線に走り、中央から石を上下に切り離す。
だがそれは発端に過ぎないとでもいうように、石は変形し、何重にも緑光の線を走らせて形を変えて行った。その形は、今や……。
「石の……兵士……?」
逆三角形で足のない下半身。尖がり帽子のような兜に、緑光が円形になった目。分解された石を再構築し両腕を作り、その兵士はやっと真の姿を現した。
そう、これがまつろわぬ兵士。
恐らくこの部屋を守る、ガーディアンだ。
……って……これ、まさしく自動人形じゃんかあああ!!
「うっ、うそ……ブラック、いないって言ったじゃん! 自力で動く人形いないって言ったじゃん!!」
「僕は石の兵士が存在しないとは言ってないよ! し、しかし、古代文明にこんな……こんな技術があるなんて……!」
これアレだよ、ゴーレムだよ!
俺知ってるよ、ゴーレムって遺跡の守護神としてよく出て来るよね、でもまさか地下水道に居るなんて思わないじゃん!?
ああでもヒント出てたよね、遺跡が全部石造りって時点で予測しておくべきだったよねー! だー畜生っ、俺バカだからそう言うの解んないんだってば!
「な、なんだこれ!?」
「い……石の人形っ……ヒッ、こっちむいたぞ!」
今まで見た事もない相手にエリーさんが慄く。
彼女の怯えを感知したのか、石の兵士は姿勢を変えずに上半身だけを大きく回転させ、エリーさん達へと目を向けた。
緑光のモノアイが強く光り、兵士は片手を石の剣へと作り変える。
そして、石とは思えぬ俊敏さでエリーさんに突っこんできた。
「エリー危ない!!」
セインさんが庇い、フェイさんがその体を突き飛ばす。
三人とも床に転がり、元にいた場所には石の剣が深々と突き刺さっていた。
な、なにあの速さ……どう考えても無理だって……!
「クソッ、ここじゃ付加術が使えねぇ! どうなってんだ!?」
「先生、マグナさん、この部屋から出ろ!!」
「わっ、解りました! ツカサさんも私達と一緒に!」
部屋から出る途中で腕を引かれる。俺は思わずブラックを見上げたが、ブラックは何も言わず軽く頷いた。
「ツカサ君はまだ戦っちゃいけない。僕がやるから、コータスさん達を頼む」
「…………わかった」
首を僅かに動かした俺に微笑み、ブラックは剣を引き抜いて部屋へ踏み込んだ。部屋の中では石の兵士の猛攻に、セインさん達が必死に逃げ回っている。
体勢を崩したままでは満足に反撃も出来ず、転がりながら必死に剣の猛追を避け続けるしかなかったのだ。
そこに、ブラックが隙を突いて背後から剣戟を見舞う。
ガン、と固い音がして、僅かに石の兵士の体勢が傾いだ。
「助かったぜ旦那!」
「フェイは離れろ、俺とエリーで捌くから、二人は弱点を探ってくれ!」
「分かったよ!」
ぐるん、と上半身が回転してブラックへと剣が向かう。が、ブラックは石の兵士の兜を足で踏み、宙に軽々と飛び上がる。
刹那、隙を作った兵士にセインさんとエリーさんが二方向から切りかかり、兵士の体がまた大きくバランスを崩した。
難なく逃れて後方に着地したブラックは、自分の剣を見て舌打ちを漏らす。
「チッ……アダマン鋼の剣が欠けたよ。かなり堅い身体だね……普通の剣じゃそう持たないかもしれない」
「どうするよ、俺達は今までこんな化け物を見た事がねぇんだ……弱点なんて解んねーぞ! 旦那、アンタ何か解らないか!?」
フェイが少し離れた場所で問いかけるのに、ブラックは渋い顔をする。
「残念だけど、僕もこんな生物は記憶にないんだ。……空白の国の技術は、書物には記されていない。魂を持たない生物なんて僕も聞いた事ないよ」
この世界には魔導生物とか、作り物の生き物なんかの概念がないのか。
いや、多分有るには有るんだろう。だけど、この世界ではその技術や発想は遥か昔に滅んでしまったんだ。だから、ブラック達は知らなかった。
その技術が「空白の国」と呼ばれる場所に在った文明のものなら、尚更。
「おいっ、やべえぞ! コイツの剣とかち合せただけで剣が壊れそうだ!」
「ちょっと、これ、どうにか出来ないのかい!?」
自分の剣が壊れないように兵士の石の剣を必死で受け流しつつ、セインさんとエリーさんが叫ぶ。石の兵士の剣はあまりにも頑丈で、それでいて早い。
叫ぶ間にも横に薙ぎ縦に振りおろしを自在に行う相手に、二人は踊るように体を滑らせながら、それでもどこかに弱点がないかと攻撃を続けていた。
だけどやはり、二人の剣は遠目に見ても消耗が激しくなっている。
あと二三撃で壊れてしまいそうな剣を見て、俺達は歯噛みせざるをえなかった。
この場所がよほど大事なのか、兵士は大仰な攻撃はしてこない。
石の剣で執拗に打撃を加えようとして来るだけで、ビームなどの部屋を壊す方法は使って来なかった。動きだけ見れば、攻撃パターンは単純だ。
だが、その異常な防御力と素早さが弱点を探す隙を与えず、強烈な攻撃力は恐怖を覚えさせ、敵が懐に入る事を許さない。
石の兵士。自分で動く人形。
ゴーレムだとは知っていても、実際に見たら何が弱点なのか全く判らない。
――ゴーレムは水が苦手だ。
だが、あの硬い岩石みたいな相手に水をかけて何になる?
――どこかに自立機動を止める札やスイッチがあるはず。
だが、それはどこにある?
見える場所にはないし、戦いながらでは見つける事すら危うい。そもそも、敵に易々と見つけられるような場所にそんな物を付ける訳がないだろう。
このままでは、ブラック達があいつに殺されてしまう。
「あ…………」
そうだ。殺されてしまうかもしれないのだ。
唐突にその事に思い至って、俺は目を見開いて震えた。
――殺される。ブラックが?
そんなバカな。あいつは強いんだ。訳の分からないドでかい曜術を使えるくらい凄い曜術師なのに、死ぬわけがないじゃないか。
俺の事だってすぐ助けに来れるくらい強いのに、あんなものに負ける訳がない。でも、そう思っても、現状を見ていると不安がにじり寄ってくる。
何故か、とても嫌な予感がした。
早く、早くなにか対処法を見つけないと。
「岩……岩…………自動人形……自動……そ、そうだ! マグナ、あんたあの人形に何か感じないか!? 金の曜術師のあんたなら何か分かるかも……!」
後ろで突っ立っていたマグナに問うが、相手は無表情のまま首を振る。
「あの石の兵士には金の曜気は感じられない。という事は、別の力で動いている。土の曜術師なら何か分かったかも知れないが、俺には無理だな」
「私にも解らない……あれは考古学の範疇では考えられない物だ……」
土。そ、そうか。土の曜気が解ればどうにかなるんだな?
俺は黒曜の使者だ、見ようと思えば全ての曜気が見える。だから、集中すれば……いやでも俺土の曜気って実際見ようとした事ねーよ!!
二種類に絞って曜術を勉強する前に、そういう基礎をやっとくんだった、くそっ後悔してばっかりだよ……!
「ブラックさん、頼む!!」
セインさんの声が聞こえて、咄嗟に顔を上げる。
こちらに背を向け赤い曜気を纏っているブラックが、マントを翻し何かの呪文を唱えていた。その呪文の意味は、解らない。だけどブラックの纏う赤い曜気は、炎の曜術を使う時のものだ。
そうだ、ブラックは強大な曜術を使える。だから、大丈夫だ。
息を吐いた俺の期待に応えるように、ブラックは鋭い声で叫んだ。
「炎の光輪よ、風を纏いて天へ噴き上がれ――【ディノ・パイラフレイム】!!」
石の兵士に照準を合わせた指を、一気に天へと引き上げる。
その瞬間、石の兵士の周辺に炎の輪が形成され、中心に集中した刹那轟音を立て火柱が吹き上がった。
「やったか!?」
「いやっ、これ、は……!!」
ブラックが悔しそうな声を出す。
石の兵士は炎にびくともしていない。部屋中を熱気で満たすほどの強烈な火柱の中にあっても、何事もなくぎょろりと一つ目でブラックを睨んだ。
火柱が、緑の光に覆われて一瞬で消え去る。
「馬鹿な、曜術封じだと!?」
「よ、曜術封じってなんだ!?」
ブラックの焦った声に、マグナを振り返る。
もうこの際誰でもいい、戦況が有利なのか不利なのか教えて欲しかった。
「曜術封じ、オムニス・アーフェルト…………遥か昔、ライクネスの英雄サウザー・オレオールが居た時代までは存在していた古代魔法だ」
「古代魔法って……どういうこと?」
「オムニス・アーフェルトは、相手が発動した曜術の曜気を取り込み、術の全てを無効化する。普通の曜術師では絶対に使えない、しかも抗えない術だ。……かつてその技術は多くの曜術師を苦しめ、多くの人間の奴隷を作り出した。しかし、英雄サウザーの【法術】によってその技術は無効化され、悪しき技術として葬られたと言われていたが……そうか、この魔法は古代から存在していたんだな」
法術って、特別な人間だけが使える曜気を使わない魔法だよな。
俺達の世界的には、法術の方が本来の魔法に近い。
だけど、それは神の加護から生まれたものだ。今の俺達には使えない。
法術を持たない俺達には、石の兵士の曜術封じを防ぎようがないのだ。
まって。じゃあ、これって。
「ブラックの曜術は……使えないって、こと……!?」
そんな、じゃあどうしたらいいんだ。
さっきセインさんが「この場所じゃ気の付加術が使えない」って言ってた。身体能力を上げる事は出来ない。それに加えて相手は防御力が高すぎて、剣が欠ける。刃物が通用しない。そうなると素早い相手から逃げ回る事しか出来ず、曜術だって封じられて、じゃあ、あとは。
「そ……そんな……じゃあ、死ぬしかねーってのかよ!」
「このままだと、な」
なんでそんな事をさらっと言えるんだよ、この男は。
俺は冷静なマグナの表情に青ざめ、ブラック達を振り返った。
「ブラック……!」
赤い髪が忙しなく揺れている。首を薙ごうとする剣を躱し、空に舞い、その動きは優雅に途切れることなく続いていく。終われば、死だ。
ブラックを狙った石の兵士の隙を再び狙い、今度はフェイさんが兵士の体の隙間にナイフを突き立てた。だが、入らない。
ガラスが割れるような音を立てて砕けたナイフに、フェイさんの動きが止まる。
そのわずかな戸惑いを見取ったのか、兵士は急に標的を変えた。
「フェイ!!」
誰かの叫び声と同時、フェイさんの体が壁に叩きつけられる。
「ガハッ……!!」
壁にめり込んだフェイさんの腹部には、血が、滲んでいた。
「クソッ……くそっ、てめええええ!!」
「セインやめろ! 突っ込むな!!」
エリーさんの制止を聞かず、セインさんが亀裂の入った剣で剣士に切りかかる。
幾度もの攻防で半狂乱になっているのか、セインさんの顔は狂気に満ちていた。……いや、これは――――怖がっている。
怖いんだ、死ぬのが。
兵士のたった一つの目が、ゆっくりとセインさんの方へ向かう。
エリーさんが手を伸ばすが、距離が足りない。
石の兵士の手が、剣を振り上げる。
その動きは、あまりにも早く。
セインさんの振り上げた剣もろとも、真っ二つにしようとする動きで、その剣をセインさんの真正面に向けて……勢いよく、振り下ろした。
「いやああああああ!!」
エリーさんの絶叫が、聞こえる。
その声を聞く前に、俺は思わず体が動いていた。
何もできないのに、辿り着けるはずがないのに、セインさんを助けようとして、いつの間にか部屋の中に入っていた。
だが、間に合わず。
剣が叩きつけられたそこには――――
セインさんを庇い、片足を血まみれにして蹲るブラックが、いた。
「あ……あぁ……あああああっ!」
「ぶ、ブラック、さ……」
ブラックの手によって突き飛ばされたセインさんが、驚きとも恐れともつかない表情に顔を歪め、ブラックを見て絶叫している。
遠くから、驚愕するような声が聞こえた。
だけど俺にはどうする事も出来ない。
ブラックが、足から血を流している。
辛そうに蹲って、顔を歪めている。
そこへ、兵士は容赦なく、再び剣を振り下ろそうとしていた。
「――――っ」
嫌な臭いが、する。
今まで嗅いだことのない臭い。
「死」というものの、臭いが。
ゆっくりと動く世界の中でそれだけははっきりと解って、俺は目を見開いた。
「ぁ…………」
――死ぬ……?
ブラックが、死ぬ?
俺より強くて、年上で、途方もない力を持った、ブラックが。
一緒に旅をしてきたブラックが。
ずっと、俺を助けてくれた……ブラックが……?
「ぁ……っ……あぁあ……」
そんなの。そんなの、駄目だ。
そんな、そんなのは。
「や、だ……っいやだああああああああああ!!」
手を伸ばし、叫ぶ。
赤い髪の間から見えた綺麗な菫色の瞳を見て、俺は――――
意識を、手放した。
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