異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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北アルテス街道、怪奇色欲大混乱編

14.さくばんは おたのしみ でしたね!(無邪気

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 昨日俺は初めてブラックが髪を解いたところを見て、初めて他人の頭を洗って、初めてその状態でえっちして、初めて三回中出しされた。
 ……はい最後の項目だけアウトー。ちょっと、本当マジで勘弁して。

 そのせいで俺また熱出ちゃったんだけど。昼過ぎまで動けなかったんだけど。
 抜かずの三発の上に風呂場でびっしょり濡れたまんま掘られまくったら、そりゃ熱出るよね。面白いくらい声も枯れるよね。

 チクショウこんなの一番最初にケツを掘られた時以来だよ。
 あの時も三日くらい寝込んじゃったけど……今回は時間もないし、一日で症状が治まってくれると良いんだが、どうかなあ……。熱も痛みもまだ軽く残ってるよ。

「あぁ……それにしても本当むかつく……」

 ベッドに寝転がって天井を睨みつつ、俺は掠れた声でにっくきオッサンを思う。
 あの時の俺はおかしかった。考えるだけで憤死しそうだからあまり自分の言動については考えないが、それでもやっぱり自分の行動がおかしかったと思うんだ。
 だからどうしても昨日の自分に納得が行かなくて、俺は起きてからずっと昨日の事を反芻はんすうし続けていた。

 いや本当、ありえないよな。
 ブラックに対して素直に格好いいとか思っちゃうし、俺のムスコも勝手に反応しちゃうし、気持ちよくなりたいからってオッサンの変態すぎる物凄い戯言にもホイホイ従っちゃうし。
 普通に考えて、ありえない。

 快楽漬けにされた後ならまだ解るけど、それにしたって度を越している。
 そもそも、俺は素面のブラックに欲情するほど色情狂じゃないんだ。いくら相手がいつもと違ったからって、あんな風に直球で興奮してしまう訳がない。
 例え少々えっちな気分になったとしても、理性を総動員して股間の反応を抑え、平常心を保っていられていたはず。風呂場での俺は、あまりにも聞かん坊すぎた。

「ぬぅう……俺がブラックにあんなに興奮するはずがない……」

 そりゃ、まあ、格好良かったよ。髪を降ろしたブラック。赤髪の獅子!みたいな感じでさ、騎士団とか率いてそうな粗野なオッサンキャラっぽくてさ。
 ゲームじゃ基本女子キャラを使うけど、攻撃力抜群ばつぐんのオッサンも俺は好きなんだ。だから俺的にはブラックの姿はグッと来たが、それとこれとは別だし。
 性格は全く尊敬できないし。オッサンキャラにあるまじき性格してるし。

 そりゃ、その、恋人なら昨日のも普通……なのかもしんないけど。
 でも自分でもおかしいって感じてたんなら、そりゃ「俺の普通」じゃないだろ?

 やっぱ酒に酔ってたのかな。酔ってたんだよな?
 そうだと思わせて、そうじゃないと生きていけない。

「ううぅうう恥ずかしいぃいいい……っ」

 掠れた声が嫌でも風呂場での事を思い出させて、俺は耐えられずに布団を被る。
 ああもう、なんで俺あんな事言っちゃったんだろう。なんでブラックを誘っちゃったんだろう。返す返すも盛り上がっちゃった自分をぶっ殺したい。
 そのせいで目が覚めてからのブラックったら気持ち悪いくらいに優しかったし、デレデレしてたし。なんか、なんかこう、滅茶苦茶恥ずかしかったし……!

「あぁあぁああ……だ、だめだ。寝てたら余計に思い出しちまう……駄目だ、寝てたら駄目だ! そ、そうだ、藍鉄の様子を見に行こう……」

 鈍痛で腰が思いけど、でも、前ほど痛くはない。
 慣らされちゃったがゆえかとは口が裂けても言いたくないが、なんか、あれだ。お風呂だったから筋肉が緩んでたとかそういう理由だきっと。

 俺はのろのろとベッドを抜け出すと、屋敷の裏にある馬小屋へと向かった。

「ひぃ……ふ、ふくらはぎも痛い……」

 今まで知らなかったけど、えっちって体位と回数によっちゃ筋肉痛になるんですね。おいこれインドア派の俺完全に死亡じゃねーか。立ちバックとかやらされ過ぎだし、あいつ本当は俺を殺しにかかってるんじゃないのか。
 掘り過ぎて俺が腹上死とかアイツならやりかねん。

 ふらふらと階段を下り、庭への扉を開けて庭を突っ切る。少し肌寒い気候のせいか、庭の花々は質素なものが多い。花ではなく緑の方が多いようだった。
 今まで華やかな庭園ばっかり見て来たからか、この庭はなんだか地味に見える。失礼な事思っちゃったけど、言わないから許して。

「あ、でも薬草とかめっちゃ植えてある……実用に絞ったのかな」

 ラスターん所の温室……とまでは行かないけど、薬草がそこそこ植えてある。
 良く見たらコケが敷き詰められていて、地面一面緑色になっていた。
 鬱蒼うっそうとした日本の森テイスト……?

「よく解らんけど、そう考えると落ち着いた庭って感じでセンスいいのかも」

 西洋風の国が多い世界で、日本ちっくに苔を生やす庭ってのも不思議だが、東に近い国ほどヒノワという日本に似てる国を知ってるっぽいから、これはいわゆる日本びいきの外国人的な所業なのかも知れない。

 まさかこの世界でそんな物を見るとは思わなかったなと思いつつ、俺は庭を突っ切って木戸から館の裏へ出た。
 すると、真正面に森を背にした馬小屋が見えてくる。
 そこには、村長のディオメデと一緒にご飯を食べている藍鉄が居た。

「藍鉄!」

 ぎこちない早足で駆け寄ると、藍鉄はすぐ俺に気付いたのか嬉しそうに鳴いた。
 本当は赤の大元の所に帰してあげたかったんだが、急に姿を消させると怪しまれるから帰せなかったんだよな……。ごめんなあと首を撫でると、藍鉄は気持ちよさそうに目を細めた。他の馬のおかげか、どうやら寂しくはなかったみたいだな。

「それにしても二頭もディオメデがいるなんて本当儲かってんだなあ……」

 ディオメデの正確な価値は知らないが、どう考えても高級品レベルですよね。
 昨日から気になってたけど、結局この村って何で潤ってるんだろうな。

「藍鉄は解るか?」
「ブルッ?」

 首をかしげる俺に同じようにキョトンとして首をかしげる藍鉄。
 そりゃそうだよなとは思うが、可愛いから良し!

 何か毎回言ってるような気がするが、ヘビもうさぎもウマもキノコもみんな可愛くて幸せだ。はぁー、動物っていいなあ。
 動物は可愛いし懐いてもケツ掘ろうとしないもんなあ。

 とかなんとか不純な事を考えつつ藍鉄とスキンシップをしていると、館の方から痩せた老人が桶を抱えて歩いてきた。

「おお、ツカサさん。体の具合はいかがですかな」

 話しかけて来てくれたのは、馬の世話をしている使用人さんだ。
 昨日藍鉄を預かってくれたのもこの人である。
 俺は軽く挨拶を交わして、藍鉄をお世話して貰ってる事へのお礼を言った。

「俺の藍鉄までお世話して貰ってすみません……二頭の世話だけでも大変だろうに、本当ありがとうございます」

 俺と藍鉄が頭を下げると、使用人さんは好々爺と言った体で笑った。

「ははは、アイテツ君はおりこうさんだから、何もお世話なんてしてないですよ。それより体の具合は大丈夫ですかな」
「あ、はい。まだ熱はあるけど、村長さんから熱さましを頂いたんで……」
「それはそれは……しかし、ブラックさんがトルクさんと一緒に村の人の所に行っているから、一人でお寂しいでしょう」
「え、い、いや全然……」

 何を言うんだこのお爺ちゃんは。
 物凄い目で凝視する俺に構わず、使用人さんは干し草を馬たちに黙々と与える。

「そうでもありますまい。昨晩はとても仲睦まじいご様子でしたし」

 はい?

「それに今日もメイド達がうらやむほど、ブラックさんが甲斐甲斐しくお世話なさっていらしたじゃないですか。本当にまあ、初々しい恋人同士という感じで……」

 えっと。あの。まって。
 これ遠まわしに「昨晩はおたのしみでしたね」って言われてる?
 待って、ってことは、あの。
 俺とブラックがなにしたかって、み、みんなに、ばれ……。

「どっ、どうなさいましたツカサさん!? 顔が赤くて真っ青に!!」
「ヒヒヒーン!?」
「ああああなんでもないですなんでもないですぅうううう」

 ぐあああああだから風呂場で盛るのはどうかと思ったんだよぉおお!!
 人にとんでもない声聞かれるじゃん、気絶したとして俺抱えられて部屋に戻る訳じゃん、その時絶対人に見られるじゃんんん!!

「あわわっ、お、落ち着いて下さい、どーどー!」
「そ、それ馬です、馬にやるやつです……いや、すみません大丈夫です、ちょっと熱で頭が物凄く痛かったもんで……」

 大丈夫ですよと手で制しながら、平然を装う。内心焼死するほど恥ずかしかったが、それをこの健全なお爺ちゃんに見せても仕方ない。
 しかし俺の極端な変化はやっぱり相手を心配させてしまったようで、使用人さんは心底気遣う様な顔をして俺を覗き込んだ。

「熱で頭が痛いとは……それは大変だ。薬があまり効かなかったのですな、申し訳ない。しかしそうなると……村にはもう良い薬が有りませんし……」
「あ、いや違うんですっ、これは俺の持病って言うかその……」
「持病なら尚更です! ならば、これはもう神にお縋りするしかございません!」

 俺の病状を重く見たのか、それとも気が優しすぎるのか、使用人さんはこっちが心配になる程の勢いで熱弁を振るう。
 老人が青筋立てて叫ぶの色んな意味で怖いよぉ!
 恥ずかしさ故の頭痛も、使用人さんの欠陥が心配で吹き飛んでしまった。
 あんまり血圧を上げさせたら行けないと思い、俺は慌てて大丈夫だと言おうとしたが、使用人さんはもう熱血スイッチが入ってしまってるのか聞いてくれない。

「大丈夫ですぞ、ツカサさん! オタケ様にお参りすれば病などたちどころに治りますゆえ! さ、そうとなったら参りましょう」
「あ、あの参るってどこに。っていうかオタケ様って……」
「オタケ様は、山の神様でございますよ。私達を守って下さる素晴らしい守り神なのです。村の者達はオタケ様のお蔭で無病息災でいられるのですよ」

 へー……そんな神様がいるのか。
 今までは慈愛の女神のミトラ様とか、認知度の高い神様の事ばっかりしかしらなかったけど、やっぱこの世界にも地域限定の鎮守様みたいなのがいるんだな。
 そんな話を聞いてしまうと、ちょっと見て見たい気もするなあ。
 こんだけ日本テイストなんだから、もしかして神社とかあったりして。

「俺みたいな旅人もお参りしていいんスか?」
「ええ、オタケ様は元々山を登る者達全ての神でしたので」
「へ~……じゃあホントに守り神なんですねえ」

 そう言えば山って絶対神社あるよな。山の神様って、それこそ山の数ほど存在するらしいし。ガトーさんからもそう言う系統のお守りを貰ったけど、もしかしたらアレってこの村と関係あるのかな? おっと、ちょっとワクワクして来たぞ。

「オタケ様の聖域は森の中ですので、迷わないようについて来て下さいね」
「はーい」

 体は重いが、散歩だと思えば筋肉もほぐれて丁度いいだろう。
 俺は気楽にそう考える事にして、使用人さんと一緒に中へと入って行った。











※次はブラック視点(  ・ω・)
 
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