異世界日帰り漫遊記!

御結頂戴

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謡弦村アルフェイオ、陽虹を招くは漆黒の王編

9.嫌な予感しかしないんだが

 
 
 このどうしようもねえオッサンが言う事を要点だけ抜き出してまとめると、こうだ。

 馬を一頭奪って逃げた後、ブラックは盗賊達と山のふもとの森の中にあるアジトにしけこんだのだが、その時に今回もまあ成功したと言う事で宴会になったらしい。
 そのバカ騒ぎの最中に、これからどうするかを聞いたのだそうだ。
 馬は買い手があると言う事で、二日後にとある場所へと移送する事になっている。んで、その時は再び『霧の壁』とやらを通ってその場所に行くんだと。

 ディオメデ達はアジトに繋がれてはいるが、丁寧ていねいあつかわれているらしい。
 ……まあ、轡を噛まされていたり拘束されているので、それは違うんじゃないかと思ったが……傷つけられたりご飯を貰えなかったりはして無いみたいで安心した。

 とにかく、ブラックはその悪辣あくらつなやりようにいきどおったと。そういうわけだな!

「ねえツカサ君っ、僕の話ちゃんときいてる!? あいつらったらさぁ、僕がツカサ君と楽しいセックスしてるのを聞き付けて、事も有ろうか『じゃあ今度はそのメスもさらって来て、強姦しながら宴会をしようぜ』なんて言うんだよ!? 僕もうホント、ツカサ君との約束が無かったら、さっさと斬り殺して燃やしてたんだからね!!」

 えー……と……。
 ブラックは、なけなしの正義の心から……・

「あぁーもー腹が立つー!! 馬を盗もうが殺そうが勝手にすればいいけどさあ、僕のツカサ君をっ、婚約者をけがそうだなんて許せないと思えない!? っていうかもうあいつら言葉で穢してたんだから殺して良いよねっ、ねっ!」

 正義の心……。

「僕としては炎でじわじわあぶり殺したいんだけど、それだと盗賊を殺したって証明が出来ないじゃない? だからさ、ツカサ君と使えない村人どものために斬り殺す方にして、首を持って来ようと思うんだけど、どうかな。いい案だよね! そしたら全部解決バンバンザイだよねーっ」
「だーっ!! お前なにとんでもない事さらっと言っとんじゃぁあああ!!」
「だってツカサ君が盗賊どもに言葉で犯されたんだもん! 大丈夫、ちゃんと首だけは残してあとは滅茶苦茶にそぎ落としておくから!」
「お前もう本当一回くらい警備兵に捕まって説教されろよマジで!!」

 言葉だけなら逮捕するのは難しいが、しかしコイツの場合本当にやりかねないし、今言った事は割とガチでやらかすつもりでいるから困る。

 ブラック・ブックス……確かにコイツは俺の恋人であり、こ、婚約者だが、しかしこのオッサンは恐ろしい事に“非常に自己中心的”なのだ。
 というか、クズとか外道とか言った方が早い。

 他人なんか全然気にしないし興味が無いから、男だろうが美少女だろうが鬱陶うっとうしいと言わんばかりにけむたがるし、酷い時にはサクッと斬って捨てようとまでする。
 それでいて、他人を利用する行為には何の良心の呵責かしゃくも感じていないから、他人に良くして貰ってもお礼なんぞ言いもしない。クズだ。基本的にコイツはクズなのだ。

 顔が良くても無精髭ぶしょうひげだし、モジャモジャ長髪も適当にリボンで縛ってるだけだし、髪なんてせっかく綺麗な赤髪なのに俺が手で梳かないと気にしもしないし、オマケに風呂にも入りたがらない。それでもメスっ子な女の子や野郎どもにはモテるけどな。ああチクショウぶん殴りてえ女子にモテるの羨ましい。……じゃなくて。

 とにかくモテるけど、クズだし性格が最悪だから色々台無しになってしまうのだ。

 しかし俺は、このクズいオッサンの恋人になってしまったんだよな……。
 そのうえ、こ……こ、こんにゃく、婚約、指輪を渡されて、受け取ってしまった。

 それについては長い長い話になるし、なれそめを語ると物凄く恥ずかしくなって俺が死にそうになるので割愛するが、しかし今更ながらに途轍もなく申し訳なくなる。誰にって他の人に。本当にもう色々と。

 ……いや、マジで、恋人って言うんなら俺がコイツの性格を矯正しなきゃ行けないんだけど……でも、このオッサンは言って直す奴ではないんだ。
 そもそもブラックは俺より凄く年上だし、頭の中身もすげぇ良いし知識も計り知れない奴だから、高校生の俺なんかにゃとても止められない。それが出来ていれば、今みたいにステージのふちに座ったコイツのひざの上に、恥ずかしげもなくむざむざと座らされていないワケで……。

「ツカサ君きーてる!?」
「きっ、聞いてる、聞いてるから! だからもう離せって……!」
「えぇ~……? せっかくツカサ君とイチャイチャできる二人っきりの時間なのに、何でやめなくちゃいけないのさ。ツカサ君だって、本当は僕にこうされて、嬉しいんでしょ……?」

 とか何とか言って、ハァハァと変態オヤジ丸出しの荒い息を漏らし、俺を背後から抱き締めて来るブラック。
 ……べ、別に好きで膝の上に座らされてるんじゃないんだからな!?

 この世界の男連中は、基本的に背が高くてガタイがいいんだ。だから、俺がこうも易々やすやすと野郎の膝に座らされるハメになってるんだ。マジで。
 その体格の良さと言ったら、驚くことに早熟な男児だと十二歳くらいからすでに青年と見紛みまがうほどの姿になるってんだから驚きである。ブラックもそうだけど、外国人風の容姿の人ばっかりだからそうなるのかもな。

 まあ、それはともかく……平均的な男子高校生であるはずの俺が「ヒョロい軟弱なチビ」と言われるのは、そこに起因している。決して俺が平均身長にギリギリ届いてないからそう言われているのではない。十七歳にもなって仲間から小さいね子供だねと言われるのも、実際真実ではないのだ。

 そう、全てはこの世界の男が外国人ばりにガタイが良いのが悪い。
 俺はこの世界では果てしなくチビで、大人と子供っていう体格の差異がより顕著けんちょに出てしまうのである。だから俺が悪いんじゃない。こいつらが悪いんだ。
 俺はギリギリ平均的な男だ、こいつらがデカ過ぎんのが悪いんだー!!

「あーもー離せよっ! きょっ、今日、無理矢理あんな所でしやがって……ほんとにもう俺怒ってるんだからな!? 今日と言う今日は……」
「えー? でも、怒ってても、僕が“プレゼント”した婚約指輪をちゃーんと付けてくれてるんだよね……へへ、えへへへ……ツカサくぅん……うへへっ、す、すきぃ……僕また興奮してきちゃったよぉ……」
「お前本当にちょっとは真面目になれよ頼むから!!」

 こんな屋外のさえぎる物も無い所で臆面おくめんもなく興奮するとか、お前は枯れると言う事を知らんのか。頼むから知ってくれ。中年らしく少しくらい枯れてくれ頼むから。
 いやでもまともなオッサンなら、俺が矯正しなきゃなんてなってないか……。

 ああもうでも頼むから、真面目な話をしようって時には真面目になってほしい。
 背後から荒い息が首に吹きかかって来て、耳のすぐそばで声がしてる。俺を抱える腕だって、動いて徐々に変な所に手が近付いて来てて物凄くヤバい。

 こ、こんな、明らかにやしろっぽいものがある場所で、満天の星が見える屋外で男同士がイチャついてるなんて、どう考えても見られたものではない。
 しかもそれだけでなく、またりもせずスケベな事をしようとしてるなんて……

「ねえツカサ君、今ここで二回戦しようよぉ……僕、ちゃぁんと情報を持って来たんだよ? だからさ……今度は朝までずっと、抜かずにツカサ君のナカに……」
「っ…や……だめ、だ、って……! ば、か……っぁ、馬鹿、あぁっ……!」

 生温い舌で耳を舐められて、大きな手がブレザーの中に無遠慮に入って来た。
 薄い生地のシャツの上から乳首を撫でられると、ザラついた指の感触がダイレクトに伝わって来て思わず体が反応してしまう。なんで制服のままでこちらの世界に来てしまったんだろうと後悔するが、もう遅い。

 ブラックは荒い息をハァハァと漏らしながら、俺の乳首を執拗にこすって来た。

「ハァッ、ハッ、はぁあ……つ、ツカサ君のこの服、すっごく生地が薄くて最高だね……あっちの世界じゃいつもこんないやらしい服着てるの……?」
「ばっ……ば、か……違うっ……違うってば……! 真面目に話して……っ」
「だってツカサ君が僕の気持ち解ってくれないから……」
「分かるからっ、もっ、だ、だから、盗賊を捕まえる方法……っ」

 盗賊達を捕まえて、ディオメデを取り戻すんだってば。
 こんな場所でこんな事してる場合じゃないんだってば!!

 頼むから真面目に考えてくれよと涙目になって必死にこらえながらブラックに訴える。すると、ブラックは一瞬考えたように手を止めて……俺の肩にあごを乗せながら、あざとい上目遣いで俺をじっと見つめて来た。

「ふーん、ツカサ君、僕と恋人同士の大事な大事な営みをするより、盗賊や村人たちのが大事なの……?」
「そ……そうじゃ、ないけど……」
「本当に? じゃあ、盗賊達をとっ捕まえたら僕の好きにセックスさせてくれる?」
「う…………」
「してくれないの……?」

 ブラックの綺麗な菫色すみれいろの瞳が、ぎらりと嫌な光を帯びる。
 こういう時のコイツは、凄まじい。威圧感も有るけど、なんというか……何をしてくるかも判らないような恐ろしさを感じるのだ。
 恋人にそんな感情を抱くなんて変なのかも知れないが、そもそもブラックが特異な奴なんだから仕方がない。だけど、ここで拒否など出来なかった。

 だって、ここで拒否をすればもっとヤバい事態になる事を、俺は何度も何度もこの身をって知っているのだから……。

「わ……わかった……」

 そう言って頷くと、ブラックはニタリと笑って服から手を抜いた。

「じゃあ、手っ取り早くあいつらを一網打尽にするために……ツカサ君にも手伝って貰っちゃおうかなっ」
「…………はい?」














 
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