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古代要塞アルカドビア、古からの慟哭編
14.戦の前の一休み1
◆
あれから数時間して、ようやく会議はお開きとなった。
もう後半あたりは何を話しているか俺にはチンプンカンプンだったので、少し離れたところに移動して、ロクとナルラトさんと一緒に気の抜けた顔で手遊びをしていたのだが、なんとか話はまとまったらしい。
こういう時に「話し合いを全部任せてしまって悪いなぁ」と思うんだが、政治や戦略と言った話にトコトン疎い俺が話を引っ掻き回すより、ここは頭のいい人たちだけで話を纏めて貰って、その結果を分かりやすく教えて貰う方がスマートだろう。
そもそも、万年赤点ギリギリ常習犯の俺が戦略を語れるはずもない。
今回は悪友達のおかげで頑張った……と思ってるテストだって、結果が心配ないとは言えない状態なんだからな。自分で言うのもなんだが、俺のようなヤツでは絶対にブラック達の話についてけないだろう。
フフ、これがアレだ。
「まあ……俺じゃわからないか。このレベルの話は」ってヤツだ。
……俺だって自虐はしたくないが、嘘をつくわけにもいくまい。自分の力不足を素直に認めるのもオトナの度量ってヤツだよな。
ともかく、話し合いが無事に終わったのならそれでいい。
部屋に戻ろうというブラックとクロウに頷き、俺はロクと一緒に会議室を後にした。
途中途中で休憩は挟んでいたけど、それでもあれだけ議論してたら疲れただろうな。つーかそもそも、ロクとブラックは大変な任務から帰ってきてすぐだったんだし……。
ううむ、これは部屋に帰ったら腰の一つでも揉んでやらねばならないだろうか。
ブラックがそんなジジむさいとは思ってないけど、でも戦った後すぐに会議だなんて流石にオーバーワークすぎる気がする。
いくらブラックが超人的な体力を持っていても、疲れるものは疲れるのだ。
まだ柘榴ちゃんに貰った蜂蜜はたくさんあるし、なにか作ってもいいかも……などと思いつつ、俺達はやっと客室へと戻ってきた。
外はもう夜中で、外廊下には点々と明かりが灯っている。
部屋の中も、王宮勤めの侍従の人が整えてくれたらしい。俺達が会議室にこもっているという話が伝わっていたのか、円座の横の小さなテーブルには黄金の大きな杯に入った果物の盛り合わせや、お酒などが置かれていた。
お肉などは冷えちゃうから流石になかったけど、気を使ってくれたらしい。
この王宮を訪れた最初は、こんな厚待遇を受けるなんて思ってもみなかったな……やっぱりこの大陸じゃ「強い」は正義ってことか……うーむ世知辛い。
「果物か……ムゥ……肉が良かったぞ……」
「……まあ、王都も閉鎖状態だし、仕方ないだろうよ」
クロウが素直に文句を言うのに、珍しくブラックも賛同する。
やっぱり疲れてるしお腹も空いてるのか……そりゃそうだよな。それに、ブラックって肉料理大好きだから、基本的に肉ばっかり食べるし。人参嫌いだし。
そんな肉食系オジサンなんだから、そら果物じゃ不満顔になるよな。
でも折角の行為に不満顔をするもんじゃないぞ。
「けっこうな時間になっちゃったし、これしか用意できなかったんじゃないか? 折角のご厚意なんだから、美味しくいただこうよ」
「キュー!」
ロクちゃんはお肉以外も好き嫌いせず食べる良い子なので、すぐに果物に飛んで行って、ブドウっぽい果物の房から粒をもいで食べている。
ウッ……か……可愛い……っ。
「ツカサくぅ~ん! ねえねえロクショウ君ばっかり見てないで、僕もみてよぉ! ホラみてこのおなかが空いて可哀相な僕の目をっ」
せっかくロクの可愛い姿を見ていたってのに、急にオッサンが俺の視界にズイッと割り込んで来て、わざとらしい潤んだ瞳を見せつけてくる。
……いや、お前な、誰がどう見たって今のお前じゃ瞳よりヒゲの方に目が行くって。朝から忙しすぎたせいで、ヒゲ凄いことになってるぞ。
「お前なぁ……食べ物の前にヒゲどうにかしろよ……」
「今日はもう誰にも会わないから良いじゃないかぁ。それより、ツカサ君お肉ぅ。今からお肉焼いてよ~。僕、果物だけじゃお腹と背中がひっついちゃうよう」
「ちょっ、ちょっと、急に近づくなって……!」
ロクショウを見させまいとしてか、ブラックは俺の肩を掴んで顔を近づけてくる。
まさか、今から俺に肉を焼けというのだろうか。
確かに……船で貰った食糧や、万が一のためにと思って入れておいた肉の塊などは【リオート・リング】に入ってるけど……でも、今から厨房って借りられるのか。
さすがにこの時間じゃ無茶ってものなのでは……。
怖気づくが、しかしブラックはそんな俺に更に畳み掛けてくる。
「ねー、ねー、ツカサ君お願いぃ~……僕、今日とっても頑張ったんだよ……? 凄く頑張ったんだよ……? だから、僕のこと甘やかしてよう……じゃないと僕、もう今日は疲れて何も話す気がなくなっちゃう……」
「ぐっ……お、お前な……」
さっき「結果を話す」とか言ってたくせに、どういう風の吹き回しだ。
そんな風に人を脅しやがって……こうなったら、無視してクロウにでも聞いたほうがいいんじゃなかろうか。と、思ったが、クロウを振り返るとコイツも腕を組んで沈黙の構えを取ってやがった。
こ……このオッサンども……肉を食うまでテコでも動かないつもりだな……。
「ね~、ツカサくぅんん……お肉が食べたい~……久しぶりにツカサ君の手料理食べたいよ~……」
「ぐぅう……」
だあもう、近づいてくるんじゃないっ。ただでさえむさくるしい無精ヒゲだってのに、今のアンタは通常に輪をかけてヒゲが濃くなってんだぞ。
そんな風に目を潤ませて顔を近付けてきても全然キュンとしないし、べ、別に……その……別に、ドキドキしたりなんて……っ。
「ふへ……。つ、ツカサ君……」
「ううううるさいっ、変な声を出すなっ!! へにゃっとした顔をするなーっ!」
何故か顔が熱くなる。それが恥ずかしくて必死にブラックを押しのけようとするが、相手は何が嬉しいのか顔を笑みに緩めて口をすぼめてくる。
そ、その顔やめろっ。これみよがしにタコみたいな口になるんじゃない!
あーもーさっきはあんな真面目だったのに、なんで身内だけになったらこんな風にスケベオヤジみたいになるんだよアンタは!
「ツカサ、観念して肉料理を作るのだ。それしかブラックの執拗な口づけから逃れる術はないぞ。逃れられないと今夜はきっと酷いことになるぞ」
「こ、こんにゃろクロウうううう」
「ツカサ君んん~」
ぐわあああ、こ、こんなことしてる場合じゃないってのにっ。
でもこのままじゃ、昨日の二の舞になってしまう。ヤドカリも近付いてきてるに違いないのに、またブラックに撃沈されるわけにはいかない。
だったら、もう俺には選択肢はないワケで……。
「う、ううぅう、分かった、分かった作ってやる! だから離れろってばー!」
「ふふふ……ツカサ君ならそう言ってくれると思ってたよっ」
「ウム、では早速調理場をどこか使えないかアンノーネに聞いてこよう」
……正直、アンノーネさんも疲れてるんじゃないのかなぁ……。
オッサン達のワガママで胃が痛くなりはしないだろうかと心配になったが、そんな事を言えばブラック達が何を言うか分からなかったので、俺は口を噤んだのだった。
→
※ちょっと長くなりそうだったので切りました。次は肉うま回
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五月くらいまでには体調も整えてもとに戻せるよう頑張ります…!
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