番外 異世界日帰り漫遊記

御結頂戴

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クロウ×ツカサ

ほのぼの、ご飯食べるだけ

 
 
 クロウは食べるのが好きだ。

 まあ……人間の体液がご飯という特殊な所もあるけど、それを差し引いてもクロウは「食べる」という行為自体が基本的に好きっぽい。
 とは言え、普通の食事で腹を満たすためには、それこそ大食いレベルの量で食べなければいけないみたいで、ご飯を食べる時はかなりの出費になってしまう。

 仮に俺が一杯のどんぶり飯で満足するとしたら、クロウは軽く俺の二十倍だ。
 一日三食満腹メシだと家計がヤバい。そもそも獣人自体がよく食べる種族だというのはテンプレなのだが、それでもここまで食べるのはちょっと怖いぞ。漫画ならともかく、現実だぞコレ。大食いの選手が食べる量が基本の食生活なんて、どう考えても一般的では無かろう。ファンタジー味が過ぎる。

 そのため、獣人族の国ではどうか知らないが、人族の国では獣人の食費と言う物は、とてつもなく高くついてしまうのである。
 人族の大陸に獣人があまり訪れないのは、食費や職業の問題もあるのかもな。
 だって、冒険者をやるにしてもバンバン仕事が舞い込むってわけじゃないし、普通のお仕事で一日にもらえる給金では、食費で全部消えちゃうだろうしな。

 奴隷にしても、実際に目の当たりにした獣人族の奴隷達は、満足にご飯を食べていなかったっぽいし……なんにせよ、獣人に人族スタイルは辛そうだ。

 出来れば人族の国でもお腹いっぱいになってほしいとは思うが、しかし、だからと言って普通の飯をたらふく食わせるのが出来ないのも現実だ。
 俺のような底辺冒険者では、獣人の飯を養おうとするだけでエンゲル係数アゲアゲっぱなしで手持ちの金が死ぬ。

 だもんで、俺は歯を喰いしばりつつも、一回で満腹の食事三日分に相当する栄養を得られると言う、その……せっ……し、白いソレを、眉間にしわを寄せるほどの覚悟でクロウに定期的に差し出して、どうにか路銀を死守しているんだが……

「まあ、たまには普通の食事もいいよな」

 目の前でコトコト煮込むのは、深く濃い色のビーフシチューのようなスープだ。

 よく仕込んだヒポカムの肉と、新鮮な野菜。味を引き締めるのは、一振りの塩胡椒と少量のスパイスだ。我ながら良く出来たと思いながら、寸胴鍋ずんどうなべに木のお玉を潜らせ一口あじを見る。

「……んー……もうちょっとかな?」

 こういう煮込み料理はあせっては駄目だ。
 強火にしないように、手間を惜しまぬように、育てなければいけない。
 アッチの世界で暮らす時の俺は、料理なんて授業か気が向いた時にしかしなかったけど、こんな手間を考えると婆ちゃんや母さんが何だか凄く思えてくる。

 一時間以上も台所に立ち続けているのは、やっぱりそれはそれで重労働だ。それを毎日やってんだから、本当に頭が下がる。俺は無理だ。上げ膳据え膳が良い。
 でも、美味しい物を大事な人に食べさせてあげたいって思いや、きちんとした物を食べさせたいって信念が、こういう料理を手作りする原動力だったんだろうな。
 今更だけど、他人の為に作ってるとそれがよく解るよ。

 コックさんが料理に妥協だきょうを許さないのも、そういう他人や自分に対するプライドがあるからなのかな。ううむ、俺には辿たどけない境地だけど、この世界で料理を作る役割になると尊敬を禁じ得ないなあ。

「まあ俺も嫌いじゃないけどさ……ふふ、今回は結構頑張ったしな」

 この世界では、固形ブイヨンとか便利なものは無いし、そもそもほとんどの食材が日本では絶対に見かけないようなファンタジー食材だ。
 トマトはあるし、ジャガイモやトウモロコシに非常に似た植物もあるけど、それでも全部が全部代用品に成るとはがたい。
 だから、今回作った料理――ビーフシチューもどきは、俺の中では傑作だった。

 材料が異世界らしい変わった食材ばっかりでも、工夫をすればなんとかなる。
 だいたい、この世界の味覚も日本とあんまし変わんないみたいだしな。
 いやぁしかし、俺ってば本当天才って言うか、料理上手なんだよなぁ。

 特に、安価ではあるが淡白な味の山鯨馬ヒポカムの肉を柔らかく煮て、あらかじめ味を染み込ませておいた俺の手腕は中々だ。味付けも完璧だしこれは天下一品だろう。
 デミグラスソースぽいものも何とか出来たし、自分自身を褒めてやりたい。

 ……まあ、本物の天才と比べたらアレなんだけど、でも、自分一人でここまで作りあげたんだから、自画自賛くらいはさせてくれ。

「よしっ、このくらいで良いかな」
「ツカサ……」
「ん?」

 急に名前を呼ばれて振り返ると、台所の出入り口から少し顔を出しているクロウが、何だか遠慮がちにこちらを見ていた。
 ……筋肉質で図体のデカいオッサンが、顔半分を出して様子をうかがっている姿……かなりシュールだな……。でも、そのボサボサでボリュームのある髪の中でピョコンと立っている熊耳を見ると、ソコが可愛くて思わずウッとなってしまう。

 ぐぬぬ……どうして褐色筋肉のモサいオッサンなのに、熊さんの耳が生えていると言うダケで、こんなに可愛いと思ってしまうんだろうか……。
 でも、なんか、クロウに関しては仕方ないんだよな。
 だってこのオッサン、普段は無表情であまり喋らないんだけど、俺に対してだけは無表情ながらもまとっている雰囲気ふんいきが凄く表情豊かになるし、表情も動くし、耳だってすぐ嬉しそうにぴるぴる動いたりするんだもん……。

 …………そ、そんなの、動物好きにとっては拷問に等しいだろ!!

 獣耳がついてるのがオッサンでも、熊耳を動かして動物のように純粋な目で見つめられたら、そんなのもう……う、うぅ、か、可愛くてずるいぃ……っ。

「ツカサ……メシは出来たのか……? 食べていいのか……?」

 きゅぅうん、と犬のように耳を少しれて動かす、あざといオッサン。
 ぐぅうっ、ち、ちくしょう、なんでこんなのにキュンとしちまうんだ俺ぇえ……!

 落ち着け、ハァハァ、ケモミミ美少女より傷は浅いはずだ、落ち着くんだ俺。
 何度も見ているからいい加減見慣れろ。釣られるんじゃない、冷静になれ……!

「ご、ゴホン」
「ごほん?」
「ちょうど出来たから、そっち持って行くよ。座ってて」

 そう言うと、クロウはすぐさまピンと熊の耳を立てて、嬉しそうな雰囲気を盛大にかもし出す。顔は無表情だが、嬉しそうな感じがだだもれだった。
 うぅう……ず、ずるぃっ、ずるいぃ……。

 もう早く持って行こうと食器棚に近付こうとすると、クロウが台所に入ってくる。

「オレが持って行く」
「そ、そう? あんがと……」

 俺が食器棚に着くより先に、その長い足を生かしてクロウが棚に近付いて皿を取り出してくれる。あまりのスマートさに思わず礼を言ってしまったが、こういうトコがブラックとは違うよなとしみじみ思ってしまった。

 ブラックは甘えたがりなので俺に全力で甘えようとするんだけど、クロウはと言うと率先そっせんして何かを手伝おうとしてくれる。それも、押し付けがましく無く。
 その紳士っぷりがまた「立派なご家庭の御子息なんだろうなあ……」なんて思ってしまうんだけど、貴族とか父親って実際は食事の用意なんてしないから、こういうのは珍しいんだろうな、たぶん……。

 それを考えると、ブラックの方が普通で、クロウは世話好きなんだろうか。
 どちらにせよ、どっちが悪いと言うワケでもないけど……なんか、手伝って貰えると嬉しいな。母さんとか婆ちゃんも、俺がガキの時にこんな事してたのが嬉しかったんだろうか。そうだといいな。

「ツカサ、しちゅー。栗色のしちゅーが早く食べたいぞ」
「あ、ああ、ごめん。ほら、深皿こっち持って来て」
「むっ」

 匂いだけで俺のビーフシチューモドキが美味しいと分かるのか、クロウはフンフンと鼻息を荒くしながら、無表情の目を輝かせている。
 耳もさっきからピコピコ動きっぱなしだ。

 とてもオッサンとは思えない様子に、思わず苦笑しながら俺はシチューを注いだ。

「む……ムゥウ……こ、これは、なんだか淡くがしたような良い匂いがするぞ」
「今日はブラックの帰りが遅いから、先に食べてような」

 子供に言い聞かせるように言うと、クロウはコクコクとうなづく。
 まったく、ブラックもそうだけどクロウも時々ホント子供っぽいんだよなぁ。

 でもまあ……そう思うから、俺も可愛いとか思っちゃうんだろうけど。

 俺も俺でちょっとヘンかもなぁと思いつつ、一通りの料理をそろえてクロウと一緒に食卓まで持って行く。俺一人でやるつもりだったんだけど、クロウが持ってくれると一度で済むのが助かる。……ホントは全部一人で一度に運びたかったんだけどな。

 クロウは俺の事をよく手伝ってくれるけど、あまりにもお手伝いしてくれるので、自分が何だかひ弱な女の子みたいに思えて来てムズムズする。
 こういうのって、普通逆なんだけどな。
 俺が、女の子をスマートに助けて、れ直されちゃったりしたいんだけどな。

 それなのに、手助けして貰ってるなんて……毎度の事だけど情けない。
 まあ、クロウの方が腕も筋肉で太いし手もデカいから、助かるってのは事実だし……手間を考えたら喜ぶべきなんだけどさあ。でも男としては納得いかん。

 料理を作るんなら、テーブルから料理の持ち運びからキッチリ“俺流”にしたいってのが硬派だろう。なによりメシは俺の担当なんだから、なんかこう……いやしかし、手伝ってくれるのは助かるし素直に嬉しいんだけどね。ううむ、難しい問題だ。
 ――――なんて事を思っていたら、クロウがもう既にテーブルの上に、綺麗に皿を並べてくれてしまっていた。

「ツカサ、早く食べよう」

 フンスフンスと鼻息を荒くしながら、耳を激しく動かすクロウ。
 ううむ、周りの空気がキラキラしている気がする……ほんとにクロウは食べる事が大好きなんだなあ……。

 ちょっとほのぼのしてしまったが、俺とクロウは向かい合って席に座り、異世界式ビーフシチューもどきとサラダとパンを頂く事にした。
 ……後でブラックとも食べなきゃいかんので、俺は少量だが。

「いただきます」
「ム……い、いただきます」

 クロウの国には食事前に何かを言う習慣が無いのか、それとも俺の世界の言葉のような物がないのか、俺を真似て言葉を言う時はちょっとどもるんだよな。
 ぎこちない感じで、見ているとなごむ。……ってイカンイカン。また可愛いとか思ってどうする俺。こらえ性なさすぎアホか。

 でも、ギャップ萌えって言うか……そう言うのが有るんだよなあ、クロウ。
 粗野な印象からはそう見えないけどさ、驚くぐらい綺麗にスプーンを使うんだよ。それに、スープだって基本的には音を立てて呑まないし。テーブルマナーに関してはブラックと同じで凄く良い。一般人の俺が恥ずかしくなるくらいなんだよ。
 そういう所からも育ちが良いのを見て取れる。とは言え、食欲が抑えきれない時は、子供みたいにスプーンをにぎってガツガツ食べちゃったりもするけどね。

「…………」

 まあ、そういう素直にがっつくのも、嫌いじゃないけど……。

「んんっ、んまいな、美味いぞツカサ。パンに良く合う。味の濃いコレなら、白パンでなくとも何でも食べられるのではないか。オレは好きだぞこの味」
「そ、そお? 気に入ってくれたなら良かったよ。おかわりまだあるから、遠慮せずにどんどん食べて良いからな」

 音をたてないように気を付けながらも、美味さに止まらないのか時折すすってしまいワタワタする姿が微笑ましい。雰囲気は喜びっぱなしで、耳も感動しているのか細かに震えていた。……こういう所があるから、可愛いと思っちゃうんだろうなあ……。

 クロウは大人だけど、ブラックと一緒で感情を抑える事をしない。
 だから、怒る時は怒るしねる時はねる。好きな事には、素直に興奮だってしてしまうんだ。俺の世界で出会う大人達とは、ちょっと違っていた。

 時々、俺より子供みたいで…………だから、可愛いって感じるのかも知れない。
 女の子に思う「可愛い」ではなくて、なんていうか……子供、みたいな。

 ……大人にそんな事を思うなんて俺だっておかしいと思うけど、でも、実際に目の前のオッサンは子供みたいな事ばっかりするんだから、仕方ないよな。
 俺は俺で、そういうクロウじゃないと何だか「らしくない」って考えちゃうくらいには、子供っぽい所を許容しちまってるわけだし……。

 なんにせよ、食事で満足してくれりゃそれでいいさ。
 ん~っ、それにしても俺のこのシチューの絶品な事! ふふふ、やっぱり俺ってば料理に関してはスキルレベルマックスと名乗っても良いのでは?
 異世界料理人……良い響きだ……チート物には料理系もあるからな!

「……ん、確かにパンがうまい」

 クロウの言う通りパンを浸して食べると、デミグラスソースに似たほんのり焼き味が付いたような香ばしさと、まったりとした肉や野菜の滋味とほろ苦さがよく解る。柔く煮た努力の結晶の肉も、ほろりとほどけてパンの味に合い最高だ。すり潰し丁寧ていねいしたトマトがさわやかな酸味を加え、じっくり煮詰めた事でにじみだした濃い旨味うまみも添えてくれている。

 ビーフシチューをご飯にかけて食べる人が居ると言うが、確かにこれはアリかも。
 そもそもハンバーグをおかずにご飯食べてるんだから、さもありなんってか。
 内容はちょっと違うけど、ビーフシチューにデミグラスソース使う家もあるしな。

「んまいな。うま」

 クロウも初めての味に興奮しているのか、段々とテーブルマナーが崩れて、欲望に忠実になって来た。欲をとしてガツガツするのも、やっぱり獣人ならではなんだなあ。とは言え、勢いよく食べるのは俺も嫌いじゃないから、嬉しいけどね。
 でもあまりに急ぎ過ぎてか、クロウの口の周りには次第に汁気が多くなっていく。
 子供っぽくて可愛いとは言うが、さすがに服に付着したら洗濯が大変だ。

「クロウ、口の周りが大変な事になってるぞ」
「ンム? ああ、すまん、夢中になっていた」

 そう言いながら、クロウは舌をベロンと出すと大雑把おおざっぱに口の周りを舐め取った。
 おいおいおい、いくらなんでもそりゃないぞ。動物モードの時のクセでやるなよ。

「ああもう……ちょっとこっち向いて」
「うぐ」

 キョトンとしたように眠たそうな目をしばたたかせるクロウに、俺は手を伸ばす。
 だけど座ったままじゃ届かなかったので、中腰になってハンカチをつかんだ手を伸ばした。腕すら短い自分が情けないでもなかったが、クロウが顔を軽く突き出してくれたのに甘えて、ハンカチで優しく顔をぬぐう。

 何が嬉しいんだか、クロウの熊耳はウキウキとしているかのように、軽く伸びたり震えたりして、俺が口を拭うたびに元気に動いていた。
 顔は、ほぼ無表情な癖に、ホントこういうのが素直でズルい……。

 …………まあでも……こういう風に子供っぽい部分を見せてくれるのだって、俺と二人きりでいる時とか、ブラック以外には誰も居ない時しかないんだけどな。
 他人がいたら、やっぱりここまで子供っぽくはならないよ。
 そのあたりが大人って奴なんだろうな……。

 そう考えると、俺は何故か少しだけ優越感を感じたような気がして、勝手に恥ずかしくなってしまった。いや、誰に優越感持ってるんだよマジで。

「ツカサ?」
「ぅ、いや、な……なんでも、ない」

 だあもう意識してるような感じ出すなって俺は。何で声が変になっちゃうかな。
 変な恥ずかしさがこらえ切れなくなってきて、思わず口をつぐんでしまうと……クロウは、うっすらと笑みを浮かべて俺の手首を握った。

「ツカサと一緒に食事をすると、より美味く思えるな」
「そ……そう……?」

 何言ってんのなに言ってんの、いつものことだろ食事とか!
 急にそうやって大人の声で変なコト言われると困るんだけど!!

 よせば良いのにドキドキしてきてしまう自分の心臓を抑えようとするが、それより先にクロウが俺に嬉しそうな低い声で言葉をぶつけて来た。

「愛しいメスが用意してくれた食事を、その愛しいメスと一緒に食べるのは……何物にも代えがたい幸福だな。それを、ツカサが教えてくれていると思うと、より食事が美味く感じられて困ってしまうぞ。これでは、腹が空きっぱなしだ」

 ――――そんなことを、言う……とか……っ。

「う、うぅう……っ! そ、そんな、ことっ、言われたって……っ!」
「ああ、困るな。……だが、困って顔を真っ赤にするツカサも可愛いぞ。オレを意識して、顔を赤らめてくれるんだと思うと……食欲が増して困ってしまう」
「そっ、それ以上増すの!?」

 いつも凄い量を食べるのに、それ以上になるなんて。
 流石にそれは困ると思わずクロウの顔を凝視すると、クロウはクスクスと笑った。
 そうして、俺を優しく引き寄せると、にたりと口を歪め。

「増したら、ツカサがオレに喰わせてくれるのだろう? ……ツカサ自身を」
「――――――ッ!!」

 っ、なっ、何言っちゃってんの、なに言っちゃってんのこのオッサンは!!
 そっ、そ、そりゃそうですけど、俺はアンタの食料でもあるけど、でもそんなキザイケメンが言うような笑っちゃうことを素面しらふで目の前で言われてもねっ、俺男なんだけどね困っちゃうんだけどねえ!?

「恥ずかしがって赤くなるツカサも、とても美味そうだな……。これはもう、普通の食事では満足出来なくなってきたぞ」
「うっ、うぅ……っ」
「……ツカサ、明日の“食事”も楽しみにしてるからな」

 そう言いながら、クロウは――――心底嬉しそうに、笑う。

 他の誰にも見せない、俺にだけ見せる、満面の微笑み。
 熊の耳は嬉しそうにゆったり動いていて、全身から「嬉しい」とか「楽しい」っていう純粋な思いが溢れ出てる、みたい、で…………。

「ばか、すけべ……」

 小さくて震える声でしかそう言い返せない俺は、ただただ顔を熱くして、クロウが嬉しそうに笑うのを目を泳がせながらチラチラと見る事しか出来なかった。

 …………本当に、ズルい。
 食べるのが好きで、子供みたいで、俺にだけは素直に感情を出してくる。
 獣人の耳も、そのイケメンなオッサンの顔も、図体のデカさも、ぜんぶずるい。
 そんなナリなのに、性格は結構ふてぶてしいのに、なんでこうなっちゃうんだろ。

 考えてしまうけど、結局のところ俺にはどうしようもない。

 だって俺は……そんなクロウを、ずるくて子供っぽくて時々真摯な所のあるクロウの全部をひっくるめて……可愛いと、思ってしまっているのだから。

 …………やっぱり、なんかズルい。

 目の前にいるズルい張本人に不貞腐ふてくされる俺に、相手は上機嫌な雰囲気でニコニコと笑いながら、俺の手にほおり寄せたのだった。













おわり

※リクエスト品です(*´ω`*)
 ほのぼのして貰えたら嬉しいです!

  
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