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ブラック×ツカサ
現パロ:ホームレスとDK 8
◆
「ツカサ君のお婆さんが住んでる家に?」
せめて後処理をしろ、と、ノンアルコールの濡れティッシュを渡す。
無遠慮にえげつないモンを揺らすオッサンは、俺が目を逸らしながら伝えたことをおうむ返しして来たが、格好が格好なのでそっちを向けずにただ頷いた。
「そ、そう。……俺の父方の婆ちゃんは地方に住んでてさ、田舎だからそこに用事がある人しか来ないし、自然いっぱいで良い所だし……それに、リハビリとして近所の家の爺ちゃんとかに仕事をさせて貰ったりも出来るしさ。そんくらいなら、俺が何とか頼んでやれるし……だから、夏休みの間、どうかなって……」
ブラックにとってはかなりの大旅行になるだろうし、そのうえ俺以外の他人と話す事になるだろうから、きっとつらい思いをするだろう。
人が怖くて、俺以外には姿すら見せたくないと思っているオッサンなのだ。
断られる可能性の方が高いかもしれないと思ったが――――意外にも、ブラックは目をパチパチと瞬かせるだけで、特に嫌そうな反応はしていなかった。
「ツカサ君のお婆さんのおうち……。もちろんツカサ君も一緒?」
「そりゃそうだ。二週間程度いて、お前がその間に人に慣れたらなと思ってるけど」
そう言うと、相手はパァッと顔を輝かせて俺ににじり寄って来……おいっ、その前にズボン穿け!! 揺れてんだよお前の特大モザイク活用品が!!
「それって、それって、二週間もずっとツカサ君と一緒にいていいってこと? 隠れずにツカサ君と手を繋いだり一緒にお風呂入ったりごはん食べたりしていいの?!」
「ズボン穿けっ……えぇ? まあ、うん……アンタが慣れて大丈夫になるまでは?」
まあ、怖いってんなら手は繋いでやらんこともないし、日本の古い風呂はブラックにとっては使いにくいものかもしれないしな。
それに、ご飯は普通に一緒に食べるだろ。婆ちゃんが飯抜きなんて許さないし。
何故このオッサンがそんな当たり前の事で目をキラキラさせているのか分からないけど、とりあえず間違いではないので肯定してやる。
すると、ブラックは分かりやすく満面の笑みになって俺に抱き着いてきた。
「おいっ!! デカブツをしまえっての!」
「わは~! ツカサ君しゅきしゅきしゅきぃ~っ! ずっとツカサ君と一緒にいられるなら行くっ、僕ツカサ君と田舎に旅行するぅ!」
…………台詞だけ抜き出したら、とてもイイトシしたオッサンが発している言葉には思えない。が、これは間違いなく目の前の外国人風のオッサンの言葉なのだ。
最初はもうちょっと大人っぽい口調だった気がするんだが……。
「っていうか離れろっ! それとズボン穿けってば蚊に刺されても知らないぞ!」
「そしたらツカサ君掻いてくれる?」
「なんで俺が人様のチンコを触らなきゃなんねーんだよ! 俺の方が変人扱いされるだろ、絶対やんねーかんな!?」
どう考えても世間一般の人がやるようなことではない。
というか、アンタも他の男にその特盛モザイクの部分を触られるのとか嫌だろ。何をトチ狂ってるんだ。それは親しい行動の範疇じゃなくてただの悪ふざけだぞ。
そうギャアギャア騒ぐと、ブラックは「ふぅん……」と子犬がショボくれたような変な声を漏らして、分かりやすい悲しげな顔を見せてきた。
「僕はツカサ君のこと大好きだから、変人なんて思わないけどなぁ……」
「好きにも限度があるだろ限度が。お前はヒトにプライベートスペースを開き過ぎなんだよ……。もうちょっと慎みを持て。あとズボン穿け」
何度目だよと思いつつ敢えて諭すようにもう一度言うが、ブラックは俺に縋りついたままで動かない。そうして、今度は切なげな表情で俺を見上げてきた。
「ツカサ君だから、触って欲しいって思うんだよ」
「え……」
「こんなに近くにいて平気なのも、もっと触れたいって思うのも、ツカサ君だけだもん。ツカサ君じゃないと、僕……こんな風に、みっともなく縋りつかないよ」
「…………っ」
菫色の瞳が、じっと俺を見つめてくる。
……口調はとてもじゃないが、大人とは思えない。子供が「でもでもだって」と不満を言うような幼い口調で、だけどその声は聞き間違えようもないくらいに低くて重い、痺れるような大人の男の声で。
その、あまりに相反するものが多い状況に混乱して、頭が働かなくなる。
――――相手は、大人なのに。
無精髭も生えていて、髪の毛もモサモサと伸びた大人の大柄な男。しかもその姿は、未だに下半身を丸出しにしていて、格好がつかないってもんじゃない。
なのに……地面に膝をついたまま、子犬のように縋りつくデカいおっさんに対して「気持ち悪い」とも思えない。ただ、何故か、焦るような変な気持ちになって。
……二人きりで、こんな狭くて蒸し暑い小屋の中にいるからなんだろうか。
それとも、さっきの変な行為のせいで俺も妙にドギマギしてるのか。
よく解らないけど、でも、普通なら間違いなく相手を突き飛ばして逃げているだろう状況なのに、それでもブラックの事を振り払えない。
真剣な目で見つめられていると心臓が早鐘を打って、耳の奥がどくどく鳴って、顔が何故だか熱を帯びていくのを止められなかった。
そりゃまあ、フルチンのオッサンに抱き着かれたら、恥ずかしいとは思う。
だけど、ならなんでブラックを拒否できないのか自分でも判らない。
だってこんなの、明らかに「仲良し」を越えてるのに。
腰に抱き着かれて密着されてるのだって、男同士だし絶対嫌なはずなのに。
なのに、ブラックの事をイヤだと思えない。
……俺……変だ。
なんか、おかしい。さっきの行為のせいで、俺も変になっちゃったのかな。
変な感じがする。ドキドキして息苦しいのに切ないみたいで、体中がカッカしてて、頭も冷静なはずなのにいつもみたいな「友達との距離」がわからなくて。
これが正しいのかなって、そんなことすら思えてくる。
違うのに。
ブラックとの距離は、こんなに近くていいはずがないのに。
……なのに、腰を抱きしめられてる感覚が妙に強くて、密着してる相手の体が呼吸するために動くたび、喉の奥がぎゅってなる。
無意識に太ももの内側に力が入ってしまってて、俺は自分がどうなってしまったのか分からず、ただただその感覚に戸惑う事しか出来なかった。
そんな俺を、ブラックはずっと見つめていて……
――――やがて、嬉しそうにフッと微笑んで見せた。
「ツカサ君も、僕とくっつくの……好きでいてくれる……?」
「ぅあ……ぇ……」
「僕……ツカサ君と、もっと一緒に居たい……。もっとこんな風に、ぎゅってしたいよ。出来るなら、ツカサ君と……」
俺と、なに。
なんでそんな、熱を感じる瞳で見つめてくるの。
「っ……!」
あ……手っ……手が、ブラックのおっきい手が、腰から下に降りていく。
ズボンの上からなのに密着して横っ腹からゆっくりと足の付け根の方に移動して、俺の太腿のあたりに指が到達する。
と、思ったら、指が柔らかい部分に沈み込んできた。
力を入れられているのが、分かってしまう。
おっきい手が自分の足に触れていることだけでも恥ずかしくなってくるのに、太い指が今、足の感触を確かめるみたいに動いているのが我慢できない。
嫌だ、というか、ただひたすらに恥ずかしい。
ドキドキしてて、動けなくて、そんな自分に何故か焦って恥ずかしくなるんだ。
なんだ、これ。
俺、どうしちゃったんだ。
どうしてこんなことされて、俺は気持ち悪いとも思わないんだろう。
ブラックの事は友達だって俺は思ってるけど、でも、友達がこんな風な距離になる事なんてないはずだ。こんな、へんなこと……。
…………っ、う……うぅう……っ、も、もうだめっ、ブラックの顔を見てらんない。
ダメだ、こんなことしてたらブラックの顔がもう見られなくなる。
恥ずかしくて、顔が熱くて死にそうだ。そんなことになったら、ブラックを俺の田舎に連れていくのも困難になってしまう。
ダメだ、こんなのだめ。
も、もう限界……っ。
「っばか! もっ、もうやめろってば!」
ああぁ、自分の声が変に甲高く裏返ってて恥ずかしい。
ブラックの顔が見れない。きょ、今日はもう無理だ。こんなんじゃ話も出来ない。
でもともかく日程だけは伝えなくてはと思い、俺はブラックをどうにかムリヤリ引き剥がして距離を取ると、顔を背けながら早口で喋った。
「ににに日程は三日後の早朝だ! 早朝に出発するから用意しとけよ! だから体は絶対に洗っとけ新しい服に着替えて荷物まとめてろ!!」
「ツカサ君……」
「以上!! 俺もう帰るっ!」
ブラックに背を向けて荷物を取ると、俺は慌ててガタガタと小屋の戸を開けた。
外からの眩しい日差しにドッと汗を噴き出しながら飛び出す。
と……――――
「あと一押しかぁ……」」
背後から、ブラックが何かボソボソと言うような声が聞こえたが……走り出した俺の耳ではキチンと聞き取れなくて、そのまま離れてしまった。
…………その夜。
俺は今日の事を思い出すと猛烈に恥ずかしくなり、ベッドの中で頭を抱えて数時間悶え続けたのだった。
ちくしょう、ブラックの野郎……。
旅行の時は絶対、あ、あんな風に距離ナシになるのをやめさせないと……!!
→
※久しぶりのホームレスパロです…!
次はもうちょい早めに更新したい( ・ω・)♪
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