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𝐓𝐫𝐮𝐞 𝐋𝐨𝐯𝐞 𝟏
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しおりを挟む麗二の低い声……初めて聞いた。
顔を上げると、そこには無の表情を浮かべる彼が居た。瑠璃色の瞳に光を失い、彼を怒り…いや、軽蔑の眼差しで見据えている。途端に『ぼ、僕をそんな目で見るな!』と相手が吠え、後退りする。麗二は鼻を鳴らしながら続ける。
『そういえば桜庭商事って最近落ちてるんだってね。父さんから聞いたよ。君の会社、僕の父さんの助けがあって、今何とか保ってるって…』
『あ……そ、それだけは、それだけはご勘弁を…』
何かを察したのか震え上がる桜庭。しかし、麗二は冷え切った視線を向けたまま、目を細めて、王子様の様な笑顔で下した。『君との話は無かった事にして貰うよ、当主様に頼んでね』と。彼は絶望し切った表情を浮かべ、ヨロヨロとその場を立ち去って行った。
『琥珀。大丈夫かい。何か、酷い事とか…』
『麗二、大丈夫。君のお陰で何も。だからそんな悲しそうな顔をしないで』
誰も居なくなった教室で、泣きそうな顔をして僕の肩を抱く麗二。小さい手なのに力強くて、でも今にも壊れそうに震えている。心無しか顔も青い。心配になって問おうとすると、先に彼が口を開いた。
『僕は家の肩書きでしか君を守れなかった。もっと強くならなくちゃいけないのに…ごめんね、琥珀』
『……』
麗二の震える手に触れながら気付いた。同時に、当主の言っていた言葉の意味を理解した。瞬間、僕が考えた事はこうだった。
成績が良ければ、人として逆らってくる者は減る。ならば、成績向上の為、人より何倍も勉強して完璧で在らなければならない。学校に居る時は、彼のお側として共にする。自分の事は自分で対処する。その為には自身が強くならなければならない。
『………麗二。僕は守られてばかりじゃ嫌だ』
『!』
黙っていた僕がようやく口を開くと、彼はハッとした様に見据えてきた。曇り一つの無い綺麗な瞳を見ていたら、僕には迷いなんてモノは存在しなかった。彼の目尻に僅かに浮かんだ涙を拭いながら笑ってみせた。
『君が守ってくれた様に今度は僕が君を守れる様に強くなるよ』
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