37 / 99
第三部 魔法使い、双子の悪魔の変化
36
しおりを挟む
「そ、それよりヨルはまだ二階?珍しく降りてくるのが遅いね」
いただきますと手を合わせる僕に「知らないな」と素っ気なく返すセル。基本どんな時でもきっちり行動するあのヨルが何の理由もなく朝が遅いなんて珍しい。ヨルとは昨日の話以降一度も口を利いていない。
「さぁ.....そんなにヨルとは話さないからな。アイツが何してるとかいちいち知らないよ」
「そう.....」
昔はどんな時でも一緒に行動していたのに、やはり最近の二人はそれぞれが勝手に行動しているらしい。ヨルも他人事みたいにセルが人間と会っている事を話していたし.....セルとヨル、互いを大切にして守り合ってきたのを沢山見てきたからこそ、この未来は想像していなかった。
「もう食べよう、リュシー。待っていたら冷めてしまう」
「あぁ.....うん」
セルにそう急かされ仕方なくフォークを手にして口に運んでいく。いつもは埋まっている椅子が一つだけポツンと空いている。一緒にいただきます出来なかったな。パクッと頬張り牛乳を飲みながら空いた席をぼんやりと眺めた。
「.....!ヨル」
自分達の分だけを片付けている最中、階段を降りる音が聞こえて確認すると表情の暗いヨルがいた。ボサボサでセットしていない長い前髪の下の黒い瞳がジッと僕を捉える。
「.....おはよう。寝坊した」
「珍しいね。ごめんね、先に食べちゃって。今温め直すから」
ぶっきらぼうに言い放って食卓にのろのろと着くヨルの横を通り過ぎてご飯に手を翳す。魔法を発動しようとした次の瞬間、気が付いたら僕の手首をヨルが目を見開いて掴んでいた。突然の事で魔法は消滅し「ヨル?」と混乱してしまう。
「──ごめん。.....何でもない」
ハッとしたヨルが申し訳無さそうに手を離した後落ち着かない様子で俯き、腕をゆっくり摩りながら聞こえないくらいの小さな溜息を吐く。本当にどうしたのだろうか。こんなヨルは初めてかもしれない。
(.....いや、初めてじゃないか。ヨルはこうやって言いたい事を全部呑み込むタイプだ。話してくれるのを待つしかなさそう)
ほかほかになったご飯を見兼ねて「.....頂きます」と手を合わせるヨル。彼の鋭い視線は眠たそうにキッチンで欠伸をするセルに向けられていた。
***
リュシーからセルの匂いがする。
べったりと纏わりついた濃い匂いだ。
スクランブルエッグをスプーンで掬い、もぐもぐと口内で動かしながらセルを見据える。あんな涼しい顔をしているが昨夜リュシーに仕掛けた事を俺は知っている。
グッと力を込めたせいでスプーンが曲がりそうになり自制する。.....駄目だ。アイツの顔を見ているとイライラする。ただでさえ全然眠れていないのに。
『セ、ル.....っ!』
聞いた事がないリュシーのあられもない声を扉越しに耳にした時の絶望感。誰も知らない彼のあんな声を引き出したセルが許せなかった。
ドロドロと黒い感情が溢れてくる。
脳裏で自分に笑い掛けてくるリュシーが少しずつ黒い何かに侵食されていくのを感じた。今思えば、この時の自分はとうに理性が切れていたんだと思う。
***
いただきますと手を合わせる僕に「知らないな」と素っ気なく返すセル。基本どんな時でもきっちり行動するあのヨルが何の理由もなく朝が遅いなんて珍しい。ヨルとは昨日の話以降一度も口を利いていない。
「さぁ.....そんなにヨルとは話さないからな。アイツが何してるとかいちいち知らないよ」
「そう.....」
昔はどんな時でも一緒に行動していたのに、やはり最近の二人はそれぞれが勝手に行動しているらしい。ヨルも他人事みたいにセルが人間と会っている事を話していたし.....セルとヨル、互いを大切にして守り合ってきたのを沢山見てきたからこそ、この未来は想像していなかった。
「もう食べよう、リュシー。待っていたら冷めてしまう」
「あぁ.....うん」
セルにそう急かされ仕方なくフォークを手にして口に運んでいく。いつもは埋まっている椅子が一つだけポツンと空いている。一緒にいただきます出来なかったな。パクッと頬張り牛乳を飲みながら空いた席をぼんやりと眺めた。
「.....!ヨル」
自分達の分だけを片付けている最中、階段を降りる音が聞こえて確認すると表情の暗いヨルがいた。ボサボサでセットしていない長い前髪の下の黒い瞳がジッと僕を捉える。
「.....おはよう。寝坊した」
「珍しいね。ごめんね、先に食べちゃって。今温め直すから」
ぶっきらぼうに言い放って食卓にのろのろと着くヨルの横を通り過ぎてご飯に手を翳す。魔法を発動しようとした次の瞬間、気が付いたら僕の手首をヨルが目を見開いて掴んでいた。突然の事で魔法は消滅し「ヨル?」と混乱してしまう。
「──ごめん。.....何でもない」
ハッとしたヨルが申し訳無さそうに手を離した後落ち着かない様子で俯き、腕をゆっくり摩りながら聞こえないくらいの小さな溜息を吐く。本当にどうしたのだろうか。こんなヨルは初めてかもしれない。
(.....いや、初めてじゃないか。ヨルはこうやって言いたい事を全部呑み込むタイプだ。話してくれるのを待つしかなさそう)
ほかほかになったご飯を見兼ねて「.....頂きます」と手を合わせるヨル。彼の鋭い視線は眠たそうにキッチンで欠伸をするセルに向けられていた。
***
リュシーからセルの匂いがする。
べったりと纏わりついた濃い匂いだ。
スクランブルエッグをスプーンで掬い、もぐもぐと口内で動かしながらセルを見据える。あんな涼しい顔をしているが昨夜リュシーに仕掛けた事を俺は知っている。
グッと力を込めたせいでスプーンが曲がりそうになり自制する。.....駄目だ。アイツの顔を見ているとイライラする。ただでさえ全然眠れていないのに。
『セ、ル.....っ!』
聞いた事がないリュシーのあられもない声を扉越しに耳にした時の絶望感。誰も知らない彼のあんな声を引き出したセルが許せなかった。
ドロドロと黒い感情が溢れてくる。
脳裏で自分に笑い掛けてくるリュシーが少しずつ黒い何かに侵食されていくのを感じた。今思えば、この時の自分はとうに理性が切れていたんだと思う。
***
202
あなたにおすすめの小説
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
俺の好きな人は誰にでも優しい。
u
BL
「好きなタイプは?」と聞かれて世界で一番多く答えられているのは間違いなく「優しい人」だろう。
相手の優しいところに惹かれ、気づいた時には引き返せないところまで恋に落ちている。
でも次第に気付くのだ。誰だってみんな「優しい人」ではなく「"自分だけに"優しい人」が好きなのだと。
ロランは、"誰にでも優しい男"、フィリオンに恋をしてしまい、地獄のような日々に身を焼かれていた。
そんなとある日「この恋、捨てたいな…」と溢したら「それ、捨てようとすんの、やめてくんね?オレ、あんたがアイツを見る視線に興奮すっからさ」と遊び人で有名な男、ヒューゴに言われる。
彼は、自分を好きな人間には興味がなく、別の誰かに恋い焦がれている人間の目が好きな変態らしい。
そんな身勝手な遊び人とちょくちょく話すようになってからというもの、フィリオンの様子はどんどんおかしくなっていく。
恋を捨てたい男と、恋を捨てるなと言う男と、優しさが狂い始めていく男の話。
※作者の意思ではなくキャラの意思で結末が決まります。ご要望は受け付けられませんのでどちらとくっついても美味しいと思う方のみお読みください。
※中世ヨーロッパ風学園ものです。
※短編(10万文字以内)予定ですが長くなる可能性もあります。
※完結までノンストップで毎日2話ずつ更新。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる