魔法使い、双子の悪魔を飼う

yondo

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第三部 魔法使い、双子の悪魔の変化

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「そ、それよりヨルはまだ二階?珍しく降りてくるのが遅いね」

いただきますと手を合わせる僕に「知らないな」と素っ気なく返すセル。基本どんな時でもきっちり行動するあのヨルが何の理由もなく朝が遅いなんて珍しい。ヨルとは昨日の話以降一度も口を利いていない。

「さぁ.....そんなにヨルとは話さないからな。アイツが何してるとかいちいち知らないよ」
「そう.....」

昔はどんな時でも一緒に行動していたのに、やはり最近の二人はそれぞれが勝手に行動しているらしい。ヨルも他人事みたいにセルが人間と会っている事を話していたし.....セルとヨル、互いを大切にして守り合ってきたのを沢山見てきたからこそ、この未来は想像していなかった。

「もう食べよう、リュシー。待っていたら冷めてしまう」
「あぁ.....うん」

セルにそう急かされ仕方なくフォークを手にして口に運んでいく。いつもは埋まっている椅子が一つだけポツンと空いている。一緒にいただきます出来なかったな。パクッと頬張り牛乳を飲みながら空いた席をぼんやりと眺めた。













「.....!ヨル」

自分達の分だけを片付けている最中、階段を降りる音が聞こえて確認すると表情の暗いヨルがいた。ボサボサでセットしていない長い前髪の下の黒い瞳がジッと僕を捉える。

「.....おはよう。寝坊した」
「珍しいね。ごめんね、先に食べちゃって。今温め直すから」

ぶっきらぼうに言い放って食卓にのろのろと着くヨルの横を通り過ぎてご飯に手を翳す。魔法を発動しようとした次の瞬間、気が付いたら僕の手首をヨルが目を見開いて掴んでいた。突然の事で魔法は消滅し「ヨル?」と混乱してしまう。

「──ごめん。.....何でもない」

ハッとしたヨルが申し訳無さそうに手を離した後落ち着かない様子で俯き、腕をゆっくり摩りながら聞こえないくらいの小さな溜息を吐く。本当にどうしたのだろうか。こんなヨルは初めてかもしれない。

(.....いや、初めてじゃないか。ヨルはこうやって言いたい事を全部呑み込むタイプだ。話してくれるのを待つしかなさそう)

ほかほかになったご飯を見兼ねて「.....頂きます」と手を合わせるヨル。彼の鋭い視線は眠たそうにキッチンで欠伸をするセルに向けられていた。









*** 

リュシーからセルの匂いがする。
べったりと纏わりついた濃い匂いだ。

スクランブルエッグをスプーンで掬い、もぐもぐと口内で動かしながらセルを見据える。あんな涼しい顔をしているが昨夜リュシーに仕掛けた事を俺は知っている。
グッと力を込めたせいでスプーンが曲がりそうになり自制する。.....駄目だ。アイツの顔を見ているとイライラする。ただでさえ全然眠れていないのに。

『セ、ル.....っ!』

聞いた事がないリュシーのあられもない声を扉越しに耳にした時の絶望感。誰も知らない彼のあんな声を引き出したセルが許せなかった。

ドロドロと黒い感情が溢れてくる。
脳裏で自分に笑い掛けてくるリュシーが少しずつ黒い何かに侵食されていくのを感じた。今思えば、この時の自分はとうに理性が切れていたんだと思う。


*** 
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