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第六部 魔法使い、双子の悪魔との別れ
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「──っ.....!」
勢いよく体を起こし、僕は「セルっ、ヨルっ!」と無意識に声を上げていた。二人に手を引かれる夢を見ていた気がする.....そもそも長い事、僕は意識が曖昧だった様な──
「.....あれ?此処は.....、っ!」
頭が、痛い。
ズキズキする。
何だか長い、長い夢を見ていた様な.....ヨルに「愛している」って言われた気がする。
.....取り敢えず状況確認だ。
キョロキョロと辺りを見渡す。見た事が無い部屋だ.....でも、造りからして王宮の一室だろうか。それに壁に掛かってあるローブ.....あれは宮廷魔法使い専用の物だ。という事は此処は誰かの部屋.....
「目が覚めたみたいだな」
「.....!」
懐かしい声が聞こえてきて顔を上げると、少し離れた箇所にある椅子に座ったベッセルが虚ろな眼差しで此方を観察する様に見つめていた。いつからいたのだろうか、気配を全く感じなかった。意味不明のこの状況に「ベッセル.....」と名前を呼ぶしか出来ない。
「三年で帰って来るって言ったのに帰って来なかったから無理矢理連れ戻しに来たんだ。本当に困ったよ、結界の管理はリュシーにしか出来ない仕事なのに。カミラ様ったらもうリュシーは帰って来ないのだろうって簡単に諦めるから」
「.....」
ベッセルがこんなにお喋りな所は初めて見た気がする。
僕に唯一昔から話し掛けてくれた気さくで優しい同期の魔法使い。いつも笑顔で、周りから一歩引かれた所にいる僕にも声を掛ける変わった人間.....その筈なのに、何故だか目の前の彼は以前とは違う存在の様に思えた。
驚いた事に、此処に連れて来られる迄の記憶が全く無い。僕は国に帰らずあの家で三人でずっと過ごしていた筈.....なんだけど、今このタイミングでセルとヨルの存在について触れるのはやめておいた方がいい気がした。
ギュッと目を閉じて二人の生存反応を確認する。
.....うん。
生きている。
二人に内緒で掛けていた保護魔法がちゃんと作動している。偶然双子と接触せずに僕は連れて来られたのだろうか。二人は悪魔族だし、もし対面していたら此処に僕はいないだろうし、もっと大事になっている.....いや、接触しなかったなんて.....そんな事、本当にあり得るのだろうか。
「.....あの、」
なんだか変な胸騒ぎがする。
「ん?」と会話を遮られて顔を顰めたベッセルが僕を見る。彼の様子に違和感を覚えながらも「カミラ様の所に行ってもいいかな」と何とか告げてベッド脇に近付く。
「帰って来たんだし挨拶しないと.....」
「その必要はない」
──背筋が一気に凍る。
ベッセルの冷たい無表情にビクッと肩を震わせる。相手は人間だ.....僕の方が確実に強いし怯む必要は無い、のに。どうして僕はこの人間を強く警戒しているのか。
椅子から立ち上がり、此方に向かって歩みを進めてくるベッセル。慌ててその場から離れようと全身に力を入れた途端、足がふらつき体が後方に倒れてしまう。そんな僕の上に、ベッドに乗ってきた彼が四つん這いの状態で見下ろしてくる。
勢いよく体を起こし、僕は「セルっ、ヨルっ!」と無意識に声を上げていた。二人に手を引かれる夢を見ていた気がする.....そもそも長い事、僕は意識が曖昧だった様な──
「.....あれ?此処は.....、っ!」
頭が、痛い。
ズキズキする。
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「.....」
ベッセルがこんなにお喋りな所は初めて見た気がする。
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ギュッと目を閉じて二人の生存反応を確認する。
.....うん。
生きている。
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