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アイリットの過去

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~数百年前のカルカラ村~
「アイリットお姉ちゃん!遊んで!」
小さい子供がアイリットにそう強請る。
「いいよ!何して遊ぼうか?」
そう答えるアイリットはとても表情豊かであった。
長い白髪に片目隠れ、カミサマとそっくりな容姿であった。
「今日はねー、かくれんぼしよ!」
「はいはい。ルコットはせっかちなんだね」
ルコットと呼ばれた少女はアイリットに強請る。
構わないよ、と付け足すとかくれんぼが始まった。
10数え終えると村中を探してまわる。
「ルコット見つけた」
ルコットは自分の家の裏手に隠れていたらしい。
「お姉ちゃんもうちょっと手加減してよー!」
「手加減したら文句言うのは誰?」
「うっ…」
そう言われるとしょぼんとするルコット。
「ごめんね、ちょっと言い過ぎたね」
そう言ってルコットの頭を撫でるアイリット。
この頃の村は栄えていたらしく、多種多様な種族が住んでいた。
アイリットもその1人に過ぎなかった。
カミサマの『悪戯』が来るまでは。

ある日、アイリットが散歩をしているとカミサマに遭遇した。
アイリットは傅き、カミサマの話を聞いていた。
「ところで君を僕の巫女にしようと思ってるんだけど構わないよね」
そう言うとカミサマは自身の魔力をアイリットに大量に与える。
「アッ…ガッ…!」
抑えられない魔力の量に苦しむアイリット。
そんな様子を見てニヤリと笑うカミサマ。
アイリットからはどんどん表情が消え、虫の息になっていた。
「次に君が目を覚ます頃には僕の魔力が馴染んでいるはずだよ。」
そう言って姿を消すカミサマ。
「アッ…ハァッ…ハッ…」
自身の魔力とカミサマから与えられた魔力が混ざり合い、その生を終えた。

数百年後、アイリットは今の姿となり蘇っていた。
カミサマに一矢報いる為にただひたすら魔法の練習を繰り返す。
そうして数十年が経ったあと、カミサマが再び姿を現した。
「やあ、アイリット。調子はどうだい?」
「…おかげさまで…お返し…してあげる…!」
アイリットはとある魔法を習得していた。
「術式展開…!乖離…!」
「っ…!?」
カミサマの赤い左目から熱が出てくる。
「一体…何をしたんだい…!」
「あなたの…神格を…半分にする…!」
徐々にカミサマの瞳の色が灰色に変わっていく。
「残った魔力は…こっちに…!術式展開…!解放…!」
黒髪短髪の少女に移す。
この少女はアイリットが創り出した器だった。
器の片目が黄色く変わっていく。
「この…っ…うっ…」
えずきながらアイリットを睨むカミサマ。
この瞬間、カミサマは唯一神では無くなり、ただの創造神になってしまった。
一方黒髪短髪の少女は破壊神となり、カミサマのことを嫌悪する様になった。
「ハァッ…これでよし…!」
「よくもやってくれたね…!」
カミサマがアイリットを睨みつけると、虫の息のアイリットの姿があった。
自身も相当の魔力を使ったらしく、息も絶え絶えだ。
「この仕返しはいつか必ずするからね…!」
片目が無くなり、灰色の目に変わったカミサマはそつ言い残して姿を消した。

創造神と破壊神。
二柱がひとつになった時、必ず止めようと決めるアイリットなのであった。

そんな魔女の昔話は終わり。
続きは刹那達が紡いでいく未来だ。
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