レジナレス・ワールド

式村比呂

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3巻

3-3

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 部屋の外から、クリステルとカトヤを中心に、華やいだ女性たちの歓声がかすかに聞こえてくる。
 おそらく女性陣に囲まれ、ザフィアはさぞ困惑していることだろう。その雰囲気を察し、シュウがふっと笑うと、グイードも嬉しそうに目元を緩ませた。

「ところでシュウ殿。今回お呼び立てしたのは、実は別の用があったからでな」
「あ、はい」
「翼竜族を従わせたとか?」
「従わせた……んですかねえ?」

 シュウにはどうもその実感がない。彼らが何となく自分になついてくれているような気はするが、意思の疎通そつうが出来ない以上、何となく、でしかないのだ。

「意思疎通できない状況で彼らの信を得たのは、すばらしいことじゃ」
「いえ……」

 実際は、シュネに従っているだけのような気もするので、シュウはそのあたりの気持ちを包み隠さずグイードに話した。

「たいしたお方じゃて」
「僕がですか?」
「シュウ殿はすでに、世界樹の守護者として、望めばこの世界を支配することさえ夢ではない力を持っておる。なのに、少しもおごらず自然体のまま」

 エルフたちにとって、そのような『人間』がいるなど信じられなかった。人間というのは、野心と欲ですべてを欲しがるのが常だ。
 だが、シュウにしてみたら、地球世界の知識こそが常識であった。
 日本には政治家や資産家といったある種の権力者はいたが、人の意思をねじ曲げてまで君臨する絶対者は、少なくとも実体験として遭遇したことなどなかった。
 そうしたシュウのバックボーンが、今グイードが感じている驚きの根源なのだろう。
 ――そのようなことをシュウはおぼろげに考えていた。

「ところで、その翼竜族じゃがな」
「はい」
「シュウ殿に、いくつか、世界樹の守護者のみが持つ能力をお伝えしなければならん」

 とんっとグイードがシュウの肩に手を置く。
 その瞬間、さっとシュウの目の前の景色が変わった。


「――シュウ、良く来たな」

 穏やかな緑の光に目が慣れると、シュウの前には、かつてユーガをたくされた、あの穏やかな老人が立っていた。

「はあ、どうも」

 はにかみながらシュウは頭をぺこっと下げた。
 その様子がおかしいのか、後ろのグイードがクスッと笑う。

「そなたに来てもらったのは他でもない。まだあの娘ユーガは幼いゆえに、そなたに守護者の力を多く与えておらぬであろうから、少しだけでも役立ててもらおうと思ってな」

 グイードが守護している世界樹の化身けしんはそう言った。

「具体的には、まず二つほど力を授けよう」

 その言葉を継いだグイードが続ける。

「一つは、翼竜族と会話……念話ねんわとでも言うかな? 心を通わせる術だ」
「昔は、みんな持ってたりしたんですか?」

 シュウの問いに、グイードは首を横に振った。

「そうではない。わしの前代の守護者は人間だった。それは知っておるな?」
「ええ」
「その時、翼竜を兵力とした。翼竜たちを鍛えて念話を覚えさせたのだ」
「馬のように?」
「まさにそうだ。だが、儂は兵力としての彼らを必要としなかった」

 過去を懐かしむようにグイードは少し間を置いた。

「――だが、そなたはあの力を欲しているようだ」
「ああ、はい」

 シュウも別に軍事力が欲しいわけではない。先のインズルピペの盗賊の一件でもわかったが、彼らを戦力にすると、他の権力者を必要以上に刺激してしまう。
 無用な争いの原因はいらない。しかし――。

「僕たちにはシュネがいるんで、自由に世界を飛び回れます。でも、商会の人間の多くは、馬車で何ヶ月もかけて動いてるんで……」
「翼竜を移動手段に使いたいということか?」
「ええ」

 シュウの答えに、さも愉快ゆかいそうになるグイード。

「面白い。そなたに授けるからにはそなたの力だ。自由に使えばよい」

 世界樹の化身の老人がグイードに代わってそう言うと、シュウの額に手をさっとかざした。
 チリッ。
 頭部に実体のない圧力が加わったと思った瞬間、シュウは「なにか」を理解した。

「……あの?」
「感じたであろう?」

 老人はそう告げると、すっと後ろに下がった。

「これで終わりですか?」
「そうだ。そもそもそなたは、動物たちとの親和性しんわせいが高いからな」

 老人は興味深そうにシュウの瞳をのぞき込んで笑う。

「さて次だ」

 グイードが話の切れ間を待って続けた。

「先ほど、儂の部屋からここに飛んだ『術』だが……」

 ゲームの世界ではよく「テレポーテーション」として扱われている、瞬間移動や転移といった術だろう、とシュウは思った。
 だがシュウの知る限り、こちらの世界には、そうした術が存在しなかった。

「この術は、世界樹がべる『木々』の意識のつながりに乗って移動するのだ。だから、木々の意識が影響する範囲でしか使えない」

 シュウの肩を、再びそっとグイードは掴んだ。
 ふわ、と二人は《テレポート》した。
 気付くと、そこは美しい森の陽だまりだった。
 グイードは一本の木の幹を指さす。

「あの紋章が見えるであろう?」
「はい」

 さほど複雑な紋ではない。誰かが落書きしたような『記号』という印象だった。

として力を貸してくれる木の意思が届くところに、あの紋を刻む。そして……」

 再びシュウとグイードの姿がかき消える。

「……ここにも紋があるからの」

 二人はグイードの居室に戻っていた。
 確かに、壁にうっすらと紋が浮かび上がっているのがシュウにも見えた。


 三度の《テレポート》で、シュウたちは再び世界樹の老人のところに戻った。

「このようにな、刻んだ紋と紋の間のみを移動できる『術』なのだ。繰り返すが、よりしろとなる木がなければこの術は使えぬ。それに、その木々が持つ『つながり』が途絶えたところまでは飛べぬ」

 なるほど。ネットワークみたいなものがあって、その範囲までしかいけないんだな。
 シュウはそのようにイメージして、グイードの話を理解した。

「まずはとりあえずやってみるが良い」

 グイードから紋の書き方を教わる。
 渦巻きを書き、その真ん中に線を引く。線の先に矢印を付ける。シュウは何となく、昔テレビで見た、ネイティブアメリカンが精霊との対話に使ったというペインティングに似てるな、と思いながら真似をしてみた。
 すると、シュウの描いた紋がうっすら輝いた。

「では次だ」

 グイードの手助けで、彼の居室に《テレポート》する。
 シュウは同じようにここにも自分の紋を刻んでみた。

「一緒に飛べるのは、シュウ殿の周囲にいて、しっかり意識できる者だけになる。試しに儂と一緒に、世界樹に戻ってみてくれぬか」
「ええと……どうやるんでしょう?」
「今描いた紋に意識を集めてみよ」

 言われた通りにすると、目の前の紋が、シュウが最初に描いた紋の位置を何となく把握している意識を感じた。

「見えたか?」
「はい」
「では、そこに行きたい、と念じてみよ」

 ふわっ。
 今度の《テレポート》は、シュウの意思で行われた。木々の持つネットワークに乗っている――シュウにはそれがはっきりわかった。

「お見事」

 満足そうな世界樹の化身の前で、グイードはシュウをたたえた。


    ◇◆◇


 日が暮れる頃になると、大樹を使った家々が立ち並ぶエルフの里は、幻想的な美しさを見せる。
 そんな里の中心の広場に、巨大な白竜、シュネが降り立った。
 レオナレルからやって来たサラたちが背から降りると、シュネも人の姿に変わる。

「呼び立ててすまなんだのう」

 カトヤが両手を広げて招くと、代表してサラが「お久しぶり、カトヤ。ザフィアの件、本当におめでとうございます」と、カトヤを抱きしめた。

「ありがとう。ゆっくりしていっておくれ」

 カトヤもサラの背中をとんとん叩いて返した。

「紹介するわ。彼女はアリシア、獣人族の族長の妹さん」

 サラがアリシアを招いて紹介する。
 エルフ族の里を訪れたのが初めてのアリシアは、他種族との確執の経験からか、おずおずと前に進み出た。

「おお、よくおいでになった。そなたの祖先と我らとは、かつて共に戦った間柄あいだがら。たいしたことは出来んが、くつろいでいってくれ」

 屈託くったくなく歓迎の意を示すカトヤにほっとしたアリシアは、差し出された右手を握り返し、「よ……よろしく」と、はにかみながら返礼した。

「アリシアは獣人族の秘薬に詳しいのよ?」

 サラがカトヤに告げる。

「おお! それはそれは。もしよろしければ、この森の様子も見て、よい材料があればお教え願いたい」

 カトヤは、ひどく緊張しているアリシアに優しく語りかけた。

「あ、ありがとう」

 アリシアの顔がぱっと輝く。シュネの背の上から広大なネクアーエルツの森を見て、実はずっと薬草を探したくてうずうずしていたのだった。


 翌朝、ザフィアの提案で、アリシアも精霊との契約が出来ないものかと、ザフィアとアリシアは連れ立って世界樹の前までやって来ていた。

「……だめなの?」

 アリシアが心配そうにザフィアをあおると、「……そのようだな」とせない顔でザフィアも答えた。
 ザフィアと、彼の守護精霊である地属性の最高位精霊ノームの見立てでは、アリシアの素養は非常に高い。
 四大精霊王はすでにサラ、ジルベル、クリステル、ザフィアと契約した相手がいるために、アリシアが加護を授かるのは難しい。ただ、火・水・風・土の各属性に存在する上位精霊には、それぞれまだパートナーが決まっていない存在があるはずだった。
 ザフィアとノームの希望としては、シュウを護るために、アリシアには土属性の力を持って欲しかったのだが、残念ながら彼女を選ぶ存在が現れなかった。
 アリシアよりよほど悔しがるザフィアに、アリシアは珍しく素直に感謝の表情を浮かべた。

「ありがとう、ザフィア。もういいよ」
「そうか……まあ機会はまたある。気を落とすなよ」

 そう言いながら自分がしょんぼりと肩を落として立ち去るザフィアに、後ろからそっと頭を下げ、アリシアも仲間の元に戻ろうときびすを返した時――。

「アリシア、ひま?」

 見ると、いつの間にかシュウがすぐそばに立っていた。

「にゃ!?」

 ザフィア以外に人気ひとけを感じていなかったはずなのに、忽然こつぜんとシュウが現れたのでアリシアは混乱した。

「ああごめん、おどかしちゃったか。今ね、《テレポート》の魔法を練習中なんだよ」
「て……れ?」
「聞いたことない?」

 シュウの問いに、アリシアはこくりと頷く。

「うーん、瞬間移動みたいな感じかな?」

 これでもわからなさそうだな、とアリシアの反応で察したシュウ。

「まあいいや。とにかく今、時間ある?」
「う、うん」
「じゃあちょっと行ってみよう」

 シュウはアリシアの肩に、トンッと手を置いた。
 不思議な浮遊感をほんの一瞬感じた後、周囲の風景が一変したのにアリシアは気がついた。

「世界樹の前から西にちょっと飛んだんだよ」
「こ、これが《テレポート》?」
「うん。木々が持つ『つながり』をたどって移動する技だって。世界樹の守護者になると貸してもらえる力みたい」

 シュウにとっては、自分の能力だと思えないので、こういう表現になってしまう。

「精霊魔法や一般の魔法に、こういった種類はないの?」
「聞いたことない」
「やっぱそうか」

 アリシアの即答に、シュウもうなずく。ゲーム時代になかったのだから、ある意味当然かもしれない。やはり、この力はあまり人目にれさせない方が良さそうだ。
 シュウがアリシアを連れてきたのは、グイードと《テレポート》していた時に、その美しさに心を奪われた陽だまりの森の中だった。
 上空を覆う巨木たちの緑の屋根が、一部だけぽっかり口を開け、そこから穏やかな光のシャワーが降り注いでいた。そんな空間には、小動物や小鳥が、他の場所よりも多くんでいるようだ。
 自然の生命力がすさまじく強い。
 木々の大きさもすばらしいが、木漏れ日を精一杯集めてえる足下の野草の緑も濃い。豊かなネクアーエルツ大森林の中でも一際ひときわ自然を感じさせる場所だった。

「シュウ! ここ、すごい!」

 アリシアが目をきらきらさせながら周囲を見回している。

「いいところだよね~」

 シュウも、アリシアに気に入ってもらえて嬉しく、ニコニコしながら答えた。

「そうじゃない! ここにある薬草……ピペの山でも滅多に手に入らないものがたくさん!」

「ラダルの草、ハンクルの実……」と、シュウにはわからないが、一つ一つ指折っては楽しそうにアリシアが報告する。

「ねえ、ちょっと採ってもいい?」

 言ってから、アリシアは自分が収穫したものを入れる袋を持っていないことに気付いた。

「いいよ……はい」

 それを察したシュウは、アイテムガジェットから革袋を取り出し、アリシアに渡した。


 しばらくアリシアの様子をのんびり見ていたシュウだったが、いつまでっても終わらないので苦笑してしまう。木漏れ日の中、草の絨毯じゅうたんにごろりと横になって、そのうち居眠りまで始めてしまった。
 アリシアは、そんなシュウに気を回す暇もないほど、夢中になって良質な薬草を選んではんでいた。

「ねえ、あなただあれ?」

 とその時、アリシアはまたも突然声をかけられ、驚いて木の上を仰ぎ見た。
 一際大きな木の枝に、一人の女性が腰掛けて、足をぶらぶら揺すりながら興味深そうにアリシアを眺めていたのだ。
 その仕草しぐさはまるで童女のように無邪気だが、外見はずいぶん妖艶ようえんな、成熟した女性だった。
 アリシアはなぜか、ぞくりとかすかな危機感を覚え、身を硬くする。

「あら、ごめんなさい。おどかす気はなかったのよ」

 まるで重力などないかのように、地面から五メートルはある枝からその女性はふわっと飛び下りた。

「私はメリエレーヌ。あなたは?」
「ア、アリシア……」

 無警戒に近付いてくる女性に気圧けおされ、口ごもりながらアリシアは答える。
 よくわからないが、この相手は人間ではないだろう。もちろん、エルフでもない。

「そう。ね、どうしてそっちの草は摘まないの?」
「あれは、すごく貴重な草だから。多分、何年かしたらもっと増えるし」
「ふうん、あれは?」
「もうじき実を付けるから、今採ったらかわいそう」

 獣人族は、こういう考え方をする。無軌道むきどうに自然から搾取さくしゅせず、もっともうまく共存できるすべを常に探しているのだ。
 以前シュウたちがインズルピペの山に入る時に、ゼクが監視として付いてきたのも、人間はそうした考え方をしないと警戒されてのことだった。
 アリシアの答えがメリエレーヌを満足させたかどうかはわからない。彼女は、視線を少し先で寝ている少年に移してアリシアに聞いた。

「あの子は、だあれ?」
「シュウだよ」
「ふうん。あの子、人間?」

 こくりと頷くアリシアに、メリエレーヌは続けて質問をした。

「ねえ……あなたたち、ここにどうやって来たの? 私の結界の中なのに」

 言いようのない恐怖がアリシアを襲った。激しい緊張で全身の毛が逆立さかだつ。
 やっとの思いで首を回しシュウを窺い見るが、陽だまりで相変わらず昼寝をしているようだった。
 アリシアは何となく、どうやってもこのメリエレーヌという女性に、自分は勝てないのだと悟っていた。
 どうしたらいいのだろう? びて許しをうべきなのか?
 アリシアが迷っていたのはほんの短い時間だったが、主観的にはだいぶ長く感じられた。

「すいません。もしかして、僕たちご迷惑でしたか?」

 その時、草むらで昼寝をしていたはずのシュウが、アリシアとメリエレーヌに声をかけた。
 そのまま肘を突き上半身を起こして、ふわぁ、とあくびをして立ち上がる。
 きょとんとした表情になったメリエレーヌは、しばらくじっとシュウを見ていたが、急に何かに落ちたように微笑んだ。

「いいの、またいらっしゃい」

 そう言い残して、彼女はすっと姿を消した。


「シュウ、今の人は?」

 メリエレーヌが去ると、アリシアは束縛から逃れたように自由を取り戻した体を震わせた。今さらながら、全身に冷や汗がにじんでいる。

「うーん、妖精とか? そういう感じだったなあ。でも、多分大丈夫だと思うよ」

 そう言いながら、シュウはアリシアの持っている革袋を見た。

「いい薬草、採れた?」

 だがアリシアはそれに答えなかった。とても返事をする余裕がなかったのである。
 シュウはなぐさめるように、トントンッとアリシアの肩を叩く。

「さ、次のところに行こう」

 そう一声かけ、シュウはアリシアと《テレポート》していった。


 その後、シュウとネクアーエルツをあちこち回ったアリシアは、この森にも、故郷の島インズルピペと同じか、それ以上に豊富な薬草が自生していることを知った。
 エルフの里に戻り、そのことをカトヤに話すと、カトヤはさっそく各部族を代表する若者たちを集め、アリシアに薬草の解説をしてもらった。
 皆、一生懸命アリシアの説明に聞き入り、採取法を広めることとなった。
 くれぐれも採りすぎないよう、森を荒らさないようにと念を押したアリシア。しかし、あとから思えば、そんなことを『森の人々』エルフに言う必要もないだろうと苦笑したのだった。


「獣人のお嬢さん……アリシア?」

 空に大きな満月が上る頃、寝静まったエルフの里をメリエレーヌが訪れた。
 眠っていたアリシアの顔をのぞき込んでささやくメリエレーヌの体は、月光を浴びてうっすら輝いていた。
 はっと覚醒したアリシアは、慌てて体を起こした。

「ほう、これは珍しい」

 老齢の男の声が、また別のところから響いた。
 それを合図に、メリエレーヌとアリシアは揃って、別の空間に移動させられていた。

「――ご無沙汰してます」

 メリエレーヌが動じることなく、目の前の老人に頭を下げる。

「……あの?」

 目は覚めたものの、まだ何が何だかわからないアリシア。

「起こしてすまなんだな、アリシア。この姿で会うのは初めてか?」

 老人が優しく告げた。
 間違いない。世界樹の化身だろう、とアリシアは思った。

「お会いできて光栄です」

 アリシアは片膝を突き、胸に手を当てて敬礼の意を表す。

「シュウ殿も呼んだほうがよいか?」

 老人の問いにアリシアは首をかしげた。

「? それはご用件次第かと……」
「それもそうか。まずはメリエレーヌ」

 老人はメリエレーヌに向き直り、彼女の訪問の意図を尋ねる。

「そなたのことだ。よもや荒事に及ぶとは思わないが、アリシアは我が娘ユーガを守護するシュウ殿の大事なお客人だ。深夜に気配を殺し忍び込むのは、いささか穏やかではないな」
「あら、おじさま。忍び込むなんて人聞きが悪い。それを言うなら、私の庭に入ってきたかわいい泥棒どろぼうさんは、彼女のほうなのに」
「ご……ごめんなさい」

 やっぱり怒っていたのか。アリシアは耳までうなだれて頭を下げた。

「ううん、怒ってるわけじゃないの」

 メリエレーヌは、穏やかな顔でふるふると首を横に振った。


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