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4章 八丁味噌の豆乳味噌スープ 〜挽肉とブロッコリーと香るごま油〜
⑬
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「生きていた時の記憶なんか……体の奥底に眠ってしまっている。思い出すことは難しいんだが……何だろう、この懐かしさは」
羽根田は箸を置いて、頭を押さえ始めた。偏頭痛にチクチクやられている人のように、こめかみの辺りをぎゅうぎゅうと指で押している。
果たして頭が痛いのか、思い出そうとしているのかわからなくなる。
ネトは探るように質問した。
「羽根田さん……あんた、もしかして名古屋出身だったんじゃないのか?」
「……名古屋?」
羽根田が質問してきたネトの方をパッと見る。鋭い眼光は、記憶の引き出しを乱暴に開けたみたいに思わせた。
アキも、その羽根田の表情を見ただけでわかった。
この八丁味噌を使ったみそ汁と、羽根田は関わりがあるのだろうと。
「……この味噌の匂い……いや、豆乳を入れたみそ汁……そうだ、こんなみそ汁を、飲んだことがある」
機械みたく途切れ途切れで話し出す羽根田。明らかに違和感が生まれた。
アキはその空気の中に入るのをやめて、黙って聞いておくことにした。あとは、神様たちのやり取りに任せる。
「羽根田さん、それは……生きていた時にか?」
「……きっとそうだ。私の生まれはきっと、愛知県名古屋市、そして、このようなみそ汁を、生きていた時に食べたことがある」
そんな偶然、あるのだろうか。ネトはわかっていて出したのか。
いや、ネトは天性の才能がある。偶然作った八丁味噌を使ったみそ汁が、たまたま羽根田の生前の記憶を呼び出したに違いない。
「どうするんだ? これを最後まで飲んじまったら、きっと羽根田さんの生きていた時の記憶を、思い出してしまうかもしれないぞ」
羽根田がその言葉で、また頭を抱えた。
神様にとって、悩ましいことなのかもしれない。
生きていた時の記憶を思い出すと、成仏してしまう。でも、まだこの世に留まって役目を果たしたい者もいる。
疲れたと言っているけど、羽根田もプライドがあるだろう。神様として、もっと困っている人間を救いたいという。
「……私はもう、疲れたんだ」
そう言って、ちょびちょびとまたみそ汁を飲み進める。
ネトは「そうか」と言って、腕を組んだ。黙って、飲み進めていくのを見届ける。
羽根田は箸を置いて、頭を押さえ始めた。偏頭痛にチクチクやられている人のように、こめかみの辺りをぎゅうぎゅうと指で押している。
果たして頭が痛いのか、思い出そうとしているのかわからなくなる。
ネトは探るように質問した。
「羽根田さん……あんた、もしかして名古屋出身だったんじゃないのか?」
「……名古屋?」
羽根田が質問してきたネトの方をパッと見る。鋭い眼光は、記憶の引き出しを乱暴に開けたみたいに思わせた。
アキも、その羽根田の表情を見ただけでわかった。
この八丁味噌を使ったみそ汁と、羽根田は関わりがあるのだろうと。
「……この味噌の匂い……いや、豆乳を入れたみそ汁……そうだ、こんなみそ汁を、飲んだことがある」
機械みたく途切れ途切れで話し出す羽根田。明らかに違和感が生まれた。
アキはその空気の中に入るのをやめて、黙って聞いておくことにした。あとは、神様たちのやり取りに任せる。
「羽根田さん、それは……生きていた時にか?」
「……きっとそうだ。私の生まれはきっと、愛知県名古屋市、そして、このようなみそ汁を、生きていた時に食べたことがある」
そんな偶然、あるのだろうか。ネトはわかっていて出したのか。
いや、ネトは天性の才能がある。偶然作った八丁味噌を使ったみそ汁が、たまたま羽根田の生前の記憶を呼び出したに違いない。
「どうするんだ? これを最後まで飲んじまったら、きっと羽根田さんの生きていた時の記憶を、思い出してしまうかもしれないぞ」
羽根田がその言葉で、また頭を抱えた。
神様にとって、悩ましいことなのかもしれない。
生きていた時の記憶を思い出すと、成仏してしまう。でも、まだこの世に留まって役目を果たしたい者もいる。
疲れたと言っているけど、羽根田もプライドがあるだろう。神様として、もっと困っている人間を救いたいという。
「……私はもう、疲れたんだ」
そう言って、ちょびちょびとまたみそ汁を飲み進める。
ネトは「そうか」と言って、腕を組んだ。黙って、飲み進めていくのを見届ける。
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