神様たちのみそ汁 ～女神と死神と白猫が迎え入れます～

5章 慣れ親しんだ味 ～家庭で食べるワカメと豆腐のみそ汁～

④

「今おつまみ作るから、それでやっててくれ」

　枝豆を一粒ずつ口に入れて、斎藤は頷く。アキも塩味が絶妙な枝豆を口にして、ビールで流し込んだ。
　ネトはフライパンに火をつけて、油をひく。
　アキと斎藤がビールを飲み進めていたこの短時間で、エノキを豚肉で巻いたものが準備されていた。

「まず一品目、速攻できるからな」

　ネトは話しながら、温まったフライパンにエノキの豚肉巻きを八本ほど入れた。生だった豚肉に火が通っていく。
　全体的に香ばしさが見えた段階で、蓋をした。

「弱火で三分くらい、このままで」

　蒸している間に、タレ作りだ。
　ボウルの中に、目分量ではあるが、酒、醤油、みりん、砂糖とおろし生姜を入れて混ぜ合わせた。
　蓋を開けてそれを流し込む。食欲をそそる音と香りが一気に広がってくる。

「はーい、お待ち。エノキの豚肉巻きな」

　今日はいつもよりもスピーディーだ。神様のお客様が来ているということで、張り切っているように見える。
　そう指摘したらまた倍になって言い返されると思ったアキは、言うのをやめておいた。
　ネトは「二人共ハイペースだな」と笑いながら、二杯目のビールを出してくる。

「あー、エノキがシャキシャキで美味しい。豚肉もジューシーねぇ」

　アキも続けて食べた。斎藤の言葉に付け足すとしたら、味付けのバランスが完璧だということくらいだ。
　甘じょっぱい醤油ダレは、噛めば噛むほど味が染みてくる。白ご飯が欲しくなるほどだった。

「今日はどんどん行くぞ。次はどうしようかなっと」

　冷蔵庫の中に顔を入れて、何を作るか計算する。
　中からラップがかかった深皿を取り出した。中にはぶつ切りにされたマグロが入っている。

「これを使おう。あとは長芋だな」

　野菜室から長芋も取り出す。長芋は素早くかつらむきしていった。
　そのままサイコロ状に切っていく。マグロと同じ大きさにしたら、中に白だしと醤油を混ぜ合わせたタレをかける。
　上からネギを振りかけて、あっという間に二品目が完成した。

「はい、マグロと長芋の和え物」

　お通しの枝豆も合わせて、もう三品もテーブルに並んでいる。
　緑に赤白、そして茶色と色とりどりだ
　マグロのさっぱりさと長芋の粘り気が気持ちまでリフレッシュさせてくれる。