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5章 慣れ親しんだ味 ~家庭で食べるワカメと豆腐のみそ汁~
⑦
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「今日はいたって簡単なみそ汁にしよう。シンプルイズベストだ」
沸騰してきたら、乾燥ワカメを入れる。その後に手のひらの上で豆腐をさいの目切りし、水が跳ねないように優しく入れた。
家庭でもよく出されるような、本当にシンプルなみそ汁だった。
今までサリもネトも、シンプルではないアレンジが加わったみそ汁だったので、原点回帰で食べてみたいと思えるようなみそ汁だ。
アキは米と一緒に食べたいなぁと心で思うが、それを口にはしなかった。
「えーっと……卵かけご飯と一緒に出すか」
思っていた矢先に、ネトが心躍る言葉をこぼした。
思いが繋がったと考えていたのはアキだけじゃなかったのか、斎藤も「それ最高」と言って笑った。
熱々ご飯を炊飯器から茶碗に盛って、米の中心に穴を開けて丁寧に卵を落とす。
ネトは冷蔵庫から市販の瓶を取り出した。近くで見てみると「卵かけご飯のタレ」と大きな字体で書かれていて、アキは吹くように笑ってしまった。
「何がおかしいんだ? 俺が市販のタレを使ったらダメなのか?」
「い、いや! いつも手の込んだメニューを作ってくれるから……」
「普段はタレまで作るんだけどな、卵かけご飯に関してはこのタレが最高だ。これを三周ほど回しかけて……」
熱気が米から立ち上がっている、その湯気の中心には卵の黄色がある。醤油ダレが色合いを際立たせ、美しい。
早く食べたい気持ちを抑えて、次に出てくるみそ汁を待つ。
「よし、あとは味噌を溶くだけ。今日は……御膳味噌にするか。これは確か出汁入りだったはずだ」
御膳味噌……? 聞いたことがない味噌が、棚の中の味噌たちから選ばれた。
しかも出汁入りってことは……これも市販で売っているものと近いということだ。
ネトの手を止めたくないアキは、勝手に解釈してその工程を黙って見ていた。大体合っているという自信もある。
「御膳味噌はな、徳島の名産品なんだ。赤系の甘口味噌で、飲みごたえ抜群だぞ」
シンプルな具材のみそ汁がすぐに完成した。ネトが言うように、少し赤っぽいみそ汁だ。
卵かけご飯と一緒に出されたこのセット。日本人に生まれて良かったと心から思えるような締めだろう。
沸騰してきたら、乾燥ワカメを入れる。その後に手のひらの上で豆腐をさいの目切りし、水が跳ねないように優しく入れた。
家庭でもよく出されるような、本当にシンプルなみそ汁だった。
今までサリもネトも、シンプルではないアレンジが加わったみそ汁だったので、原点回帰で食べてみたいと思えるようなみそ汁だ。
アキは米と一緒に食べたいなぁと心で思うが、それを口にはしなかった。
「えーっと……卵かけご飯と一緒に出すか」
思っていた矢先に、ネトが心躍る言葉をこぼした。
思いが繋がったと考えていたのはアキだけじゃなかったのか、斎藤も「それ最高」と言って笑った。
熱々ご飯を炊飯器から茶碗に盛って、米の中心に穴を開けて丁寧に卵を落とす。
ネトは冷蔵庫から市販の瓶を取り出した。近くで見てみると「卵かけご飯のタレ」と大きな字体で書かれていて、アキは吹くように笑ってしまった。
「何がおかしいんだ? 俺が市販のタレを使ったらダメなのか?」
「い、いや! いつも手の込んだメニューを作ってくれるから……」
「普段はタレまで作るんだけどな、卵かけご飯に関してはこのタレが最高だ。これを三周ほど回しかけて……」
熱気が米から立ち上がっている、その湯気の中心には卵の黄色がある。醤油ダレが色合いを際立たせ、美しい。
早く食べたい気持ちを抑えて、次に出てくるみそ汁を待つ。
「よし、あとは味噌を溶くだけ。今日は……御膳味噌にするか。これは確か出汁入りだったはずだ」
御膳味噌……? 聞いたことがない味噌が、棚の中の味噌たちから選ばれた。
しかも出汁入りってことは……これも市販で売っているものと近いということだ。
ネトの手を止めたくないアキは、勝手に解釈してその工程を黙って見ていた。大体合っているという自信もある。
「御膳味噌はな、徳島の名産品なんだ。赤系の甘口味噌で、飲みごたえ抜群だぞ」
シンプルな具材のみそ汁がすぐに完成した。ネトが言うように、少し赤っぽいみそ汁だ。
卵かけご飯と一緒に出されたこのセット。日本人に生まれて良かったと心から思えるような締めだろう。
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