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最終章 おふくろの味 ~北海道味噌の石狩風みそ汁~
⑪
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「ミサ……俺が小さい時から一緒にいた、幼馴染の名前だ」
ちょっとずつ記憶が戻っているのか、現実が戻ってきたように、顔色が良くなっていく。
春風は沈んでいた人間だった頃の記憶を、引き上げるように口にしながら確認していった。
サリも知っている情報を春風に与えていく。
「ミサさんも、斎藤カオルさんも、このお店に来たわ」
「ミサ、俺のせいで死んでしまったんですね……」
「……仕方ないわ。あなたのことが忘れられなくて、死を選んだの。自ら選んだ道よ」
「まあ、今この仕事をしている以上、死への特別感は薄れています。ただ残念です」
無理に強がっているように、アキの目からは見えた。
春風はどうにもならない運命になっていることを、恨んでいるようにも見える。
その表情を見るに、きっと春風もミサのことが好きだったのだと思えた。順也だった時の気持ちを鮮明に覚えているわけではないと思うけど、アキの目にはそう映ってしまった。
春風はミサの話から、母の話に切り替える。
「母は、元気でしたか? この店に来たってことは……」
「そう、カオルさんも、神様になっていた。神様として来店したの」
「そうでしたか……俺が死んだ後、亡くなってしまったんですね。一度会いたかったな」
神様になったら、人間だった時の記憶はなくなる。
神様同士になった状態で、人間だった記憶を語り合うのは、不可能な話だ。
春風はわかっていた上で、無念を口にした。
「でもね、あなたが亡くなってから、カオルさんが亡くなるまでの間に、大切な人ができていたわ」
「大切な人? それって……」
「実の息子さんに言うのも何だけど……事実婚状態だった男の人がいたの。倉持さんっていう人」
「倉持さん……母にそんな人ができたとは。それは……すごく、嬉しいですね」
緊張していた春風の顔が、その情報で緩みをもたらした。
死に対する価値観が薄れているとはいえ、人間だった時の情は思い出せるみたいだった。
それを知ったサリは、具材がたくさん入っているみそ汁を指差して、「もう一度食べてみて」と促す。
ちょっとずつ記憶が戻っているのか、現実が戻ってきたように、顔色が良くなっていく。
春風は沈んでいた人間だった頃の記憶を、引き上げるように口にしながら確認していった。
サリも知っている情報を春風に与えていく。
「ミサさんも、斎藤カオルさんも、このお店に来たわ」
「ミサ、俺のせいで死んでしまったんですね……」
「……仕方ないわ。あなたのことが忘れられなくて、死を選んだの。自ら選んだ道よ」
「まあ、今この仕事をしている以上、死への特別感は薄れています。ただ残念です」
無理に強がっているように、アキの目からは見えた。
春風はどうにもならない運命になっていることを、恨んでいるようにも見える。
その表情を見るに、きっと春風もミサのことが好きだったのだと思えた。順也だった時の気持ちを鮮明に覚えているわけではないと思うけど、アキの目にはそう映ってしまった。
春風はミサの話から、母の話に切り替える。
「母は、元気でしたか? この店に来たってことは……」
「そう、カオルさんも、神様になっていた。神様として来店したの」
「そうでしたか……俺が死んだ後、亡くなってしまったんですね。一度会いたかったな」
神様になったら、人間だった時の記憶はなくなる。
神様同士になった状態で、人間だった記憶を語り合うのは、不可能な話だ。
春風はわかっていた上で、無念を口にした。
「でもね、あなたが亡くなってから、カオルさんが亡くなるまでの間に、大切な人ができていたわ」
「大切な人? それって……」
「実の息子さんに言うのも何だけど……事実婚状態だった男の人がいたの。倉持さんっていう人」
「倉持さん……母にそんな人ができたとは。それは……すごく、嬉しいですね」
緊張していた春風の顔が、その情報で緩みをもたらした。
死に対する価値観が薄れているとはいえ、人間だった時の情は思い出せるみたいだった。
それを知ったサリは、具材がたくさん入っているみそ汁を指差して、「もう一度食べてみて」と促す。
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