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番外編
体調の悪い時は
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翔視点
ある時期、柚は嘔吐を繰り返すことがあった。
どれだけ食事を変えても、環境を変えても、全て吐き出してしまう。
「柚…辛いならもう食べなくていいぞ?」
「…ごめんなさい…おなか…すいたのにたべれない…」
「柚のせいじゃないから」
病院に行っても心因性のものと言われるだけ。
「…翔、直人。2人は柚と夏を連れて避暑地にある別荘に行ってきて。しばらくそこで療養してて」
「父さん…」
「柚。父さん達がきっとなんとかしてあげるから。…お腹いっぱい食べられるようになろうね」
「うん…」
ここ最近で柚の体重はかなり減ってしまった。
眠っていることも多くなってきた。
「…柚の食べられるもの…」
「最初は何も入っていないスープだよね。水なら少しは取れるようだし」
「そこから重湯とかに変えてくか…」
栄養面は…まぁ料理人たちが何とかしてくれるさ。
「なつたちここですごすの?」
「気に入った?」
「うん!!すずしいしひろいしあそべるとこたくさんある!!」
「夏、俺達が呼ぶまで遊んでいていいぞ」
「ほんと!?」
夏はすぐに庭に置かれた遊具に駆けて行った。
さて…問題は柚だな。
「柚はしばらくは室内かな…」
「日当たりのいいところにベッドを置いてやろうか」
「寝る時は寝室の方へ移動させないとね」
「すぅ…すぅ…」
…車で移動してたから疲れて眠ったか。
「僕、上からベッド下ろしてくるね」
「あぁ。確か子供用の小さいのがあったはずだ」
「分かった」
それまではとりあえずソファーだな。
背もたれを倒し、少し範囲を広げてから柚を寝かした。
ここには使用人もいない。
何が原因か分からないからしばらくは俺達兄弟だけだ。
「…スープ、作り置きしておくか」
夏の食事も作らないと。
夏はたくさん食べるし好き嫌いもないけど柚は嫌いなものの方が多いからな…。
料理人に渡されたレシピを広げ、冷蔵庫から食材を取り出して料理を始める。
コーンポタージュ。
コンソメスープ。
野菜スープ。
かぼちゃスープ。
…なんでフカヒレスープまで入ってんだ。
「…ん…」
「柚、起きた?」
ちょうどベッドの設置を終えた直人は柚を抱き上げた。
「いいにおい…」
「翔兄さんが柚のために色々作ってくれてるからね」
「少しだけ味見するか?」
最初に作ったからいくらか冷めたコーンポタージュをスプーンにすくい、柚の口へ入れてみた。
「どうだ?」
「…おいしい」
「吐き気はない?大丈夫?」
「だいじょうぶ…」
それを聞いて俺達は嬉しくなった。
使用人がいなかったから。
料理人ではなく俺の手で、目の前で作ったから。
家と違うことはいくらでもあった。
それでも…柚がやっと食事を取れるようになったんだ。
嬉しくならないはずがない。
「これからちょっとずつ慣らしていこうね」
「ん…」
ある時期、柚は嘔吐を繰り返すことがあった。
どれだけ食事を変えても、環境を変えても、全て吐き出してしまう。
「柚…辛いならもう食べなくていいぞ?」
「…ごめんなさい…おなか…すいたのにたべれない…」
「柚のせいじゃないから」
病院に行っても心因性のものと言われるだけ。
「…翔、直人。2人は柚と夏を連れて避暑地にある別荘に行ってきて。しばらくそこで療養してて」
「父さん…」
「柚。父さん達がきっとなんとかしてあげるから。…お腹いっぱい食べられるようになろうね」
「うん…」
ここ最近で柚の体重はかなり減ってしまった。
眠っていることも多くなってきた。
「…柚の食べられるもの…」
「最初は何も入っていないスープだよね。水なら少しは取れるようだし」
「そこから重湯とかに変えてくか…」
栄養面は…まぁ料理人たちが何とかしてくれるさ。
「なつたちここですごすの?」
「気に入った?」
「うん!!すずしいしひろいしあそべるとこたくさんある!!」
「夏、俺達が呼ぶまで遊んでいていいぞ」
「ほんと!?」
夏はすぐに庭に置かれた遊具に駆けて行った。
さて…問題は柚だな。
「柚はしばらくは室内かな…」
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「寝る時は寝室の方へ移動させないとね」
「すぅ…すぅ…」
…車で移動してたから疲れて眠ったか。
「僕、上からベッド下ろしてくるね」
「あぁ。確か子供用の小さいのがあったはずだ」
「分かった」
それまではとりあえずソファーだな。
背もたれを倒し、少し範囲を広げてから柚を寝かした。
ここには使用人もいない。
何が原因か分からないからしばらくは俺達兄弟だけだ。
「…スープ、作り置きしておくか」
夏の食事も作らないと。
夏はたくさん食べるし好き嫌いもないけど柚は嫌いなものの方が多いからな…。
料理人に渡されたレシピを広げ、冷蔵庫から食材を取り出して料理を始める。
コーンポタージュ。
コンソメスープ。
野菜スープ。
かぼちゃスープ。
…なんでフカヒレスープまで入ってんだ。
「…ん…」
「柚、起きた?」
ちょうどベッドの設置を終えた直人は柚を抱き上げた。
「いいにおい…」
「翔兄さんが柚のために色々作ってくれてるからね」
「少しだけ味見するか?」
最初に作ったからいくらか冷めたコーンポタージュをスプーンにすくい、柚の口へ入れてみた。
「どうだ?」
「…おいしい」
「吐き気はない?大丈夫?」
「だいじょうぶ…」
それを聞いて俺達は嬉しくなった。
使用人がいなかったから。
料理人ではなく俺の手で、目の前で作ったから。
家と違うことはいくらでもあった。
それでも…柚がやっと食事を取れるようになったんだ。
嬉しくならないはずがない。
「これからちょっとずつ慣らしていこうね」
「ん…」
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